ピックアップ

3ステップで解説! 『場面設定類語辞典』の使い方

シリーズ累計発行部数 25万部(電子売上含めると35万部)突破の大ヒット類語辞典シリーズから、『場面設定類語辞典』の使い方をご紹介します! これから購読を検討されている方から、すでに手元にあるけど使い切れていないと感じる方まで、参考となれば幸いです。

【目次】
『場面設定類語辞典』とは
なぜ「場面設定」が重要なのか
3ステップで解説! 『場面設定類語辞典』の使い方
書き始める前の注意点
番外編 その1――実際にその場所に行ってみよう
番外編 その2――「場所」を作ってみよう
『類語辞典』シリーズについて

 

『場面設定類語辞典』とは

『感情類語辞典』や『トラウマ類語辞典』と同じ類語辞典シリーズで、タイトルに「設定」と入っているとおり物語の舞台・世界観をつくりあげるための1冊です。「郊外編」「都市編」合わせて全225場面を通じ、「見えるもの」「聴こえるもの」「味」「匂い」「質感」等の要素から、「物語が転回する状況や出来事」への導線を、例文とともに徹底解説しています。

本書ではあらゆる場面が「郊外編」「都市編」に分けられており、各項目見開き2ページでまとめられています。「郊外編」「都市編」の冒頭には、創作者に向けたアドバイスが合わせて100ページ弱(584頁中)も収録され、「場面設定」が物語にとっていかに重要で、どう書くといいかを解説しています。本シリーズが幅広い読者に支持されている理由のひとつとなっています。


なぜ「場面設定」が重要なのか

物語の舞台をどこにするかという決断は、本全体のトーンに影響をもたらすものであり、多くの場合そのジャンルが物語全体を通して用いる場所の範囲を定めることが多い。(『場面設定類語辞典』「設定で考慮すべき「場所」の重要性」より)

例えば高校生が主人公の作品を書きたいと思った場合、物語全体の設定は「高校」になります。ですが、すべての話を同じ場所だけで済ませるわけではないはずです。教室、職員室、校庭、プール、帰り道、コンビニ、家、お祭り会場、大会の会場……などなど、考えうる場面を挙げるだけでもたくさんでてきます。また、それが1人か、友達と一緒か、デートなのかでも、描写すべき場面の状況は異なります。

活気のみなぎる設定というのは、実によく考えられて選ばれているものだ。そこは登場人物にとって意味がある場所であり、感情が呼び起こされる場所であり、葛藤や個人的な悲劇や成長の機会を与えてくれるところなのだ。(『場面設定類語辞典』「感情的なつながりを生みだす設定の作り方」より)

読者を物語に引き込み、作品の世界に没頭させるためには、場所の「設定」をよく考え、登場人物にあわせた意味のある描写を取り入れていく必要があるのです。

 

3ステップで解説! 『場面設定類語辞典』の使い方

本シリーズは「創作指南書」と「類語辞典」の特徴をあわせ持っています。ですので100ページ弱ある創作ガイド部分から読み始めるのでも、パラパラと気になった項目を眺めるのでも、目的や気分で自由に読むことができます。ここでは主に、創作者の方がよく使っている方法について紹介します。

①お題を決める
②とりあえず書いてみる
③次に展開させる場面を決める

①お題を決める
まずはお題を決めましょう。このお題は、次回作の物語全体の設定の軸となるものでもよいですし、「本日のお題」のように、毎日のトレーニングとして活用するのもおすすめです。お題の決め方については下記を参考にしてみてください。

②とりあえず書いてみる
お題を決めたら、ページ右下記載の【設定の注意点とヒント】や【例文】を見ながら物語を書いてみましょう。長文が書けない、思い浮かばないという方は200文字程度のワンシーンを意識してみてください。

③次に展開させる場面を決める
本書の項目名の横・ページ左上には、「関連しうる設定」という「その場面の前後で展開するとよい別の場面」について記載されています。例えば、「火災現場」(P82)の場面を書こうと思ったとき、その前後に展開するとよい場面は「救急車」「居住禁止のアパート」「荒廃したアパート」「消防署」になります。さらにその前後で描写すべき場面としては、「救急車」だったら「病室」「交通事故現場」「田舎道」「小さな街の大通り」「救命救急室」「繁華街」または「居住禁止のアパート」「火災現場」「消防署」となります。つまり、展開のパターンは多岐にわたりますので、自分の作品の世界観に合わせたものを選択していくとよいでしょう。

【パターン例】
A, 火災現場→救急車→病室(被害者?患者?)
B, 火災現場→居住禁止のアパート→路地(犯人?逃げ遅れ?)
C, 火災現場→荒廃したアパート→台所(現場検証?)
D, 火災現場→消防署→警察署(消防士?刑事?)
……などなど

それぞれの場面の長さは、どれぐらいの文量で書きたいか、それが重要なシーンなのかなどで変わりますが、前後の展開をどうするかを意識しながら書いていくとよいでしょう。

 

書き始める前の注意点

本書は海外の翻訳本になります。「日本が舞台の作品を書きたい」「「見えるもの」や「匂い」がしっくりこない」と思う箇所もあるかもしれません。その点については著者自ら巻末で解説しています。

一般的な架空の設定におけるもっとも説得力ある表現を収録しようと努めたが、本書は決して完全版ではない。(中略)もし描こうとしている作品が実在する特定の場所を舞台としているなら、項目に挙げられている事柄と異なることは何かについて、じっくり調べてみてほしい。(『場面設定類語辞典』「おわりに」より)

例えば「田舎道」の設定ひとつとっても、海外では牧草地だったり畜牛の様子が描かれていますが、日本では森や田んぼを想像する方もいるのではないでしょうか。また同じ場所であっても、季節や気候によっても様子は大きく変わります。

視点となる登場人物や、語り手の視点から設定を描写することの重要性は忘れずにおくべきだ。各項目に記載された情報を熟読する際にも、そのことを念頭に置いておくといい。物語において、たとえば「競馬場」のジョッキーが馬の匂いについて言及するのは自然だとしても、その様子を遠く離れたスタンドで見ている観客が同じように匂いについて語ることは納得できまい。(中略)扱うディテールについては慎重に選択し、それに触れる人物が正しくかみ合っているかについては、きちんと確認することが必要である。(『場面設定類語辞典』「おわりに」より)

読者が世界観に没入し、登場人物に感情移入できるかどうか、常に確認しながら設定を考えていきましょう。

 

番外編その1――実際にその場所に行ってみよう

本書で取り上げている場面についてもっと良く知りたい場合や、日本独自の場面について書きたい場合などは実際にその場所に行ってみるというのも手です。その項目で書かれている「見えるもの」「聴こえるもの」「匂い」などについて、体験としてよりリアルに実感できるはずです。その場で感じたことをメモしてみたり、登場人物がどう動くかなどをシミュレートしてみるのも面白いです。

もし気軽に行くことのできない場所や、風景だけでも知りたいという方はGoogle Mapのストリートビュー機能を使ってみてもよいかもしれません。

 

番外編その2――「場所」を作ってみよう

異世界ものや宇宙空間、日本独自の場所について書きたい場合などは思い切ってその「場所」を作るというのも手です。一番うまくいく方法は、書きたい場所と似たような項目を探して考えてみる、というものですが、「調べる」「行ってみる」(行ける範囲で)というのも、リアル感を増す方法になるはずです。

本書巻末には、付録として創作者向けのツールが収録されています。”描写の筋トレ”ができる「設定のエクササイズ」など、表現のトレーニングになるものですので、ぜひこちらもご活用ください。『類語辞典』シリーズの特設サイトでは『場面設定類語辞典』だけでなくほかの付録もすべて無料配布していますので、データをダウンロードして多めに印刷してみるのもよいでしょう。

 

おわりに

こちらの記事で紹介した使い方はあくまで一例です。この機会にぜひお手にとり、ご自身の活動や用途に合わせてご活用いただければ幸いです。

 

『類語辞典』シリーズについて

フィルムアート社の『類語辞典』シリーズはSNSを中心に爆発的に広まり、これまでの累計刷部数は25万部を超える大ヒットを記録しています。人間の喜怒哀楽を項目化し、それぞれの感情に由来する行動や反応を集めた『感情類語辞典[増補改訂版]』。あらゆるキャラクターの明るい面、暗い面から人物描写を深めたい方におすすめの『性格類語辞典 ポジティブ編』 『性格類語辞典 ネガティブ編』。255もの「場面」を通して物語の舞台・世界観をつくりあげるための『場面設定類語辞典』。読者の共感を呼ぶ多面性のある豊かなキャラクターや、リアリティのある状況設定を描くための『トラウマ類語辞典』。キャラクターの人生にとって欠かせない要素=職業を適切に設定するための『職業設定類語辞典』。ストーリー全体を通して緊張感が高まっていくような対立や葛藤を適切に組み込むための『対立・葛藤類語辞典 上巻』 『下巻』。 そしてこれらの中に収録されている、創作に役立つ様々なツールをダウンロードできる特設サイトも併せてご活用ください。

 


場面設定類語辞典
アンジェラ・アッカーマン/ベッカ・パグリッシ=著
滝本杏奈=訳

シリーズ累計25万部突破!
amazon「本」総合ランキング1位を獲得しました(17/5/11)

創作者のための虎の巻、類語辞典シリーズ堂々の第4弾!
物語の舞台・世界観をつくりあげる「場面設定」のノウハウを、「郊外編」「都市編」合わせて全225場面を通じ、「見えるもの」「聴こえるもの」「味」「匂い」「質感」等の要素から、「物語が転回する状況や出来事」への導線を、例文とともに徹底解説。

魅力的なキャラクターたちをつくりあげるのはその内面・外見だけではない!
場面設定でキャラクターたちに息吹を吹き込め!

場面設定が苦手な人でも
描写の勘所がつかめるユニークな好著。
「得られる効果」を読むだけでも
得るものが多いだろう。
——有栖川有栖(小説家)

体育館裏でカツアゲ。私たち、飽きてます。
夜の海で愛の告白。私たち、飽きてます。
ぜひ、この本を読んで、別案を。
——武田砂鉄(ライター、『紋切型社会』著者)

ためし読み
ためし読み:感情的なつながりを生みだす設定の作り方

特設サイト
『類語辞典』シリーズ特設サイト