現代写真アート原論

「コンテンポラリーアートとしての写真」の進化形へ

後藤繁雄/港千尋/深川雅文=編
発売日
2019年3月26日
本体価格
2,000+税
判型
四六判変形・並製
頁数
240頁
ISBN
978-4-8459-1815-7
Cコード
C0072
刷数
2刷

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インスタグラムの時代の現代写真アートとは何か?

デジタル化以降、「真」を写す=写真という従来の概念が大きな変化を見せるいま、現代アートとしての写真の新しい「原論」を提示する。

銀板を用いた撮影法により写真が誕生してから180年──いまや誰もがスマートフォンで日常的に簡単に「撮影」でき、それを加工し、インスタグラムをはじめとするSNSで世界中に発信でき、インターネット上には無数の写真データが存在する時代となった。デジタル化し遍在化した「写真」には大きなパラダイムシフトが起こっている。

グローバル資本主義のなかで流動化するコンテンポラリーアートの世界でも、「写真アート」は存在感を増し、一点数億円で落札されるプリントからインスタレーションやプロジェクション、ポストメディウムの作家まで、新しく多様な才能が活躍している。コンピュータ・サイエンスやネット・テクノロジーの大きな変化に晒される社会で、いかに一枚の写真がアートとしての価値を生成するのか──本書は「現代写真アート」の世界をめぐる羅針盤となるだろう。

写真そのもののメディアとしての起源を問い、写真の概念の再定義を試みるとともに、現代アートとしての写真の可能性を問う、待望の一冊。

《本書で言及される主なアーティスト》
トーマス・ルフ、シンディ・シャーマン、ジェフ・ウォール、ヴォルフガング・ティルマンス、ソフィ・カル、ロバート・フランク、ベッヒャー夫妻、ゲルハルト・リヒター、アウグスト・ザンダー、アンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトゥルート、ジグマー・ポルケ、森村泰昌、カンディダ・へーファー、スティーブン・ショア、ロバート・メイプルソープ、アンセル・アダムズ、杉本博司、ホンマタカシ…etc

メディア掲載

目次

Introduction 現代写真アートは、どこに向かっているのだろう? 後藤繁雄

Article    タイムマシン2019 港千尋

Discussion 1 現代写真アートのストラテジー 深川雅文+後藤繁雄+港千尋
現代アートとしての写真
タイポロジー──ベッヒャー夫妻
ニュードキュメントとニュートポグラフィックス
ジェフ・ウォール
ドイツのマテリアリズム
シンディ・シャーマンとアメリカ
1989年──転換点

Discussion 2 90年代の写真 後藤繁雄+深川雅文+港千尋
モダニズム批判と「風景」
凡庸さへの移行
ポストモダンとヴィジュアル・カルチャー
90年代の日本とヨーロッパ
ポストモダンの確信犯・ティルマンス

Discussion 3 ポストヒューマンとアントロポセンの写真アート 港千尋+後藤繁雄+深川雅文
テクノロジーで汚された新世界
ソフィ・カルという特異点
追跡、盗撮、そして群衆
ドキュメンタリー写真の現在形
新しいプラットフォーム
ポストメディウムの未来
新しいプレイヤーたち
アジアとリンクする時代

Article    テクノ・イマジネーション宣言 深川雅文

Keywords  シャーロット・コットンと『写真は魔術』 深井佐和子
実験から生成へ──センサー時代の実験写真 小山泰介
現代写真の加工術 川島崇志
ワークショップ/フォトセラピー 多和田有希
ヴィレム・フルッサーとは何者か? 深川雅文
フォトブックフェア/アートブックフェア 中島佑介
可視化せよ──ドキュメントからフォトグラフィック・リサーチへ 小山泰介
G/P galleryという「ニューモデル」 後藤繁雄

Add     現代フォトアートをさらに学ぶための必須ブックリスト 後藤繁雄

History    現代写真アート年表1964–2018

プロフィール

[編]
後藤繁雄(ごとう・しげお)

編集者・クリエイティブディレクター、アートプロデューサー、京都造形芸術大学教授。1954年大阪府生まれ。坂本龍一、細野晴臣、篠山紀信、荒木経惟、蜷川実花、名和晃平らのアーティストブック、写真集を編集。展覧会のキュレイション、若手アーティストの発掘・育成・サポート、アートスタッフの育成などにも力を入れ、幅広く活躍している。

港千尋(みなと・ちひろ)
写真家、映像人類学者。多摩美術大学教授。1960年神奈川県生まれ。南米滞在後、パリを拠点に写真家として活躍。1995年より多摩美術大学美術学部で教鞭をとり、現在は同大学情報デザイン学科教授。2006年〈市民の色〉で伊奈信男賞受賞。2007年第52回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展における日本館の展示企画コミッショナーをつとめる。

深川雅文(ふかがわ・まさふみ)
キュレーター/クリティック。1958年佐賀県生まれ。川崎市市民ミュージアム学芸員として、写真、デザイン、現代美術に関する展覧会の企画に携わる。代表的展覧会「バウハウス 芸術教育の革命と実験」(1994)、「遠近 ベッヒャーの地平」(1997)「生きるアート 折元立身」展(2016)など。現在、フリーのキュレーター/クリティックとして活動。