ファッションと哲学

16人の思想家から学ぶファッション論入門

アニェス・ロカモラ/アネケ・スメリク=編
蘆田裕史=監訳
安齋詩歩子/大久保美紀/小林嶺/西條玲奈/関根麻里恵/原山都和丹/平芳裕子/藤嶋陽子/山内朋樹=共訳
発売日
2018年12月15日
本体価格
3,000円+税
判型
四六判・並製
頁数
512頁
ISBN
978-4-8459-1716-7
Cコード
C0010
刷数
3刷

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ファッションを、思考する。

マルクスからベンヤミン、バルト、ドゥルーズ、そしてラトゥール、バトラーまで……
哲学から読み解く、まったく新しいファッション理論入門!!

マルクスからフロイト、ベンヤミン、メルロ゠ポンティ、ドゥルーズ、フーコー、ルーマン、さらには現在進行形で世界的注目を集めるラトゥールやバトラーまで、厳選された主要な現代の理論家16名の鍵となる概念やアイディアをわかりやすく紹介。それらの理論が今日のファッション、衣服、文化にどのように関係しているかを考察する、これまでになかったまったく新しいファッション理論入門書が待望の刊行!

「あらゆる文化的なプロセスや体験を通して考えることと同様に、ファッションを通して考えることは、刺激的で挑戦的な訓練である」(序章「ファッションを通して考える」)

アイデンティティ、ジェンダー、美学、モダニティ、創造性、グローバルな流通、経済、生産と消費……現代社会の最重要テーマをファッションを通して考えることでファッションの理論化とそのアップデートを目指し、同時にファッション(デザイン)批評の実践をもおこなう、ファッションの理解と分析を深めるための、基本的かつ決定的一冊。

現代を代表する思想家の理論が、
ファッションを考える鍵になる!

イベント情報

◆「アネケ・スメリク氏来日記念講演 Think of Fashion 059 イリス・ヴァン・ヘルペン(Iris van Herpen)とポストヒューマン・ファッションデザイン」
日時:2019年6月4日(火)19:30~
会場:公益財団法人日本服飾文化振興財団
詳細はこちら

◆アネケ・スメリク氏公開講演「Thinking through Fashion: Philosophy and Technology」
日時:2019年6月7日(金)18:00~20:00
会場:京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab 2F Hall
6月7日(金) 京都工芸繊維大学
詳細はこちら

◆「Posthumanities in Asia: Theories and Practices」
日時:2019年6月8日(土)~9日(日)
会場:関西大学梅田キャンパス
※アネケ・スメリクのレクチャーは6月9日(日)の13:00~13:40になります
詳細はこちら

メディア掲載

目次

序章 ファッションを通して考える
(アニェス・ロカモラ&アネケ・スメリク|蘆田裕史訳)
1 ファッションを理論化する
束になって展開する理論/言語論的転回/ポスト構造主義のポリティクス/古い唯物論と新しい唯物論
2 主要理論家たちの概要

第1章 カール・マルクス|ファッションと資本主義
(アンソニー・サリヴァン|原山都和丹訳)
はじめに/マルクスの人生を垣間見て、装いの持つ象徴的な力を学ぶ/ヘーゲル、フォイエルバッハとマルクス──史的唯物論への道/資本主義、装いからファッションへ/「万人のためのファッション」を生産し、消費する?/労働、「類的存在」、そして装飾品の二重性/剰余価値、労働の搾取、競争/商品の物神崇拝とファッション/おわりに──マルクスが未来を形づくる

第2章 ジークムント・フロイト│フェティシズムでは終わらない──ファッションと精神分析
(ジャニス・ミラー│西條玲奈訳)
はじめに/フロイトと性的欲望─過去と現在/無意識/フロイトのファッション論/去勢理論/ファッションとフェティシズム/まなざし/ジェンダーと仮装/精神分析とファッション/精神分析の限界/おわりに

第3章 ゲオルク・ジンメル│哲学的モネ
(ピーター・マックニール│蘆田裕史訳)
はじめに/ジンメルの社会学/ジンメルの美学化された実存/ジンメルと後の社会学/ジンメルはファッションについてなにを語ったか/トリクルダウン/おわりに──ジンメルの死後

第4章 ヴァルター・ベンヤミン│ファッション、モダニティ、街路
(アダム・ゲッツィ&ヴィッキ・カラミナス│藤嶋陽子訳)
はじめに/ヴァルター・ベンヤミンの著作へのシャルル・ボードレールの影響/歴史、記憶、時間/プルースト的な記憶と襞/資本のファンタスマゴリア的な機械/生産、再生産、そして表象/おわりに/あとがき

第5章 ミハイル・バフチン│グロテスクな身体の形成
(フランチェスカ・グラナータ│安齋詩歩子訳)
はじめに/バフチンの位置づけ/バフチンとファッション・スタディーズ/バフチン、ファッション、越境的身体/ファッション、カーニヴァル、転倒/おわりに──さらなる提案

第6章 モーリス・メルロ゠ポンティ│ファッションの身体的経験
(ルウェリン・ネグリン│小林嶺訳)
はじめに/メルロ゠ポンティの受肉した実存についての理論/メルロ゠ポンティと新しい唯物論(ニュー・マテリアリズム)/受肉した実践としてのファッション理論へ向けて/近年のファッションデザインにおける現象学的アプローチ/おわりに

第7章 ロラン・バルト│記号学とファッションの修辞的コード
(ポール・ジョブリング│平芳裕子訳)
はじめに/モードの体系と記号学/ファッション、広告、神話/ファッション、悦楽のテクスト/おわりに

第8章 アーヴィング・ゴフマン│文化観察の技法としての社会科学
(エフラト・ツェーロン│関根麻里恵訳)
はじめに/ゴフマンの相互行為秩序/パフォーマンスにおけるドラマツルギー・モデル/ワードローブ・アプローチ/本物かみせかけか?/不気味なものという方法/おわりに

第9章 ジル・ドゥルーズ│ファッションの襞に包まれた器官なき身体
(アネケ・スメリク│西條玲奈訳)
はじめに/生成変化/多様な生成変化/いかにして器官なき身体は衣服をまとうか/ファッションの襞/ヴィクター&ロルフ──うずまくリボンと蝶ネクタイ/おわりに

第10章 ミシェル・フーコー│身体政治の形成
(ジェイン・ティナン│安齋詩歩子訳)
はじめに/フーコーの概念的枠組み/フーコーの方法をファッション研究に応用する/おわりに

第11章 ニクラス・ルーマン│流行と時代遅れのあいだのファッション
(オレリー・ファン・ドゥ・ペール│大久保美紀訳)
はじめに/すべては社会的なもの/ルーマン理論のコンテクスト/三つの段階/ファッションのパラドックス/ファッションは近代社会の機能的サブシステムであるか?/おわりに──ファッション・スタディーズにおけるニクラス・ルーマン

第12章 ジャン・ボードリヤール│意味の終焉としてのポストモダンファッション
(エフラト・ツェーロン│大久保美紀訳)
はじめに/意味作用からシミュレーションへ/衣服表象の三段階/コミュニケーションから誘惑へ/ボードリヤールとファッション理論/ファッションと意味作用の終焉/おわりに

第13章 ピエール・ブルデュー│ファッションの場
(アニェス・ロカモラ│藤嶋陽子訳)
はじめに/場の理論/ファッションの場/卓越性/ブロガーとファッションメディアの場/おわりに

第14章 ジャック・デリダ│抹消記号下のファッション
(アリソン・ジル│小林嶺訳)
はじめに/哲学における脱構築/破壊/テクストを撹乱する──意味の織物とファッションの痕跡/ファッションにおける脱構築──抹消記号下のファッション/メゾン・マルジェラ──ある構造=構築分析/オーサーシップ──作者が誰であるかということ/イノベーション/時間とファッション史/おわりに

第15章 ブリュノ・ラトゥール│アクターネットワークセオリーとファッション
(ジョアン・エントウィスル│山内朋樹訳)
はじめに/ラトゥール──科学技術論とその先/科学技術論/アクターネットワークセオリーの適用/ファッションを通して考える──ラトゥールを拡張する/未来のファッション研究への影響/おわりに

第16章 ジュディス・バトラー│ファッションとパフォーマティヴィティ
(エリザベス・ウィッシンガー│関根麻里恵訳)
はじめに/パフォーマティヴィティ──ジェンダー・パフォーマンスか規定か?/パフォーマティヴィティとドラァグ/ファッション・スタディーズにおけるバトラーの影響/身体がすでに着衣の状態であることを暴く──ド・ボーヴォワール、バトラー、ビッグ・ボトムズ/現在進行形のバトラー理論/おわりに

監訳者あとがき(蘆田裕史)

プロフィール

[編著]
アニェス・ロカモラ(Agnès Rocamora)
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション准教授。著書にFashioning the City: Paris, Fashion and the Media, 2009。編著にThe Handbook of Fashion Studies, 2013、Fashion Media: Past and Present, 2013など。

アネケ・スメリク(Anneke Smelik)
ラトバウト大学(ナイメーヘン、オランダ)教授。著書にMirror Cracked: Feminist Cinema and Film Theory, 1998、編著にDelft Blue to Denim Blue. Contemporary Dutch Fashion, 2016、Performing Memory in Art and Popular Culture, 2013など。

[訳](50音順)
蘆田裕史(あしだ・ひろし)
京都精華大学ポピュラーカルチャー学部講師。共著に『ファッションは語りはじめた─現代日本のファッション批評』(フィルムアート社、2011年)、『1990年代論』(河出書房新社、2017年)など。論文に「言葉と衣服」(『新潮』113巻6、9、12号、2016年)、訳書にマリオ・ペルニオーラ『無機的なもののセックス・アピール』。ファッションの批評誌『vanitas』の編集や、本と服の店「コトバトフク」の運営にも携わる。

安齋詩歩子(あんさい・しほこ)
横浜国立大学大学院都市イノベーション学府修士課程修了。横浜国立大学非常勤教員(都市イノベーション学府Y-GSCスタジオアシスタント)。論文に「『触れる』ことと『着る』こと─G・G・ド・クレランボーからの一考察」(日本記号学会編『「美少女」の記号論─アンリアルな存在のリアリティ(叢書セミオトポス12)』新曜社、2017年)など。

大久保美紀(おおくぼみき)
1984年、札幌生まれ。パリ第8大学大学院で美学・現代芸術学博士号取得。同大学講師、キュレーター。主著にExposition de soi à l’époque mobile/liquide, 2017、Arts Awareness, 2018、Aesthetic considerations of Body Consciousness, 2018がある。企画展覧会に「ファルマコン-医療とエコロジーのアートによる芸術的感化」(2017、京都・大阪)など。

小林嶺(こばやし・れい)
早稲田大学文学研究科 博士後期課程、日本学術振興会特別研究員。論文に「エロスから発話へ?─レヴィナスにおける初期エロス論の展開1935–1950」(『In-vention』第6号、2018年)、共著に『ファッションは更新できるのか?会議─人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想する』(共編著、フィルムアート社、2015年)。

西條玲奈(さいじょう・れいな)
非常勤研究員・京都造形芸術大学。論文に「第二部 II 芸術・デザイン」(『人工知能・ロボットと労働・雇用をめぐる視点:科学技術に関する調査プロジェクト報告書』江間有沙他著、国立国会図書館、2018年)、「反復可能な芸術作品の存在論におけるまばらなメレオロジー唯名論」(学位論文、北海道大学学術成果コレクション、2014年、https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/57745)、「性愛の対象としてのロボットをめぐる社会状況と倫理的懸念」(『倫理と社会』28号、2013年)。

関根麻里恵(せきね・まりえ)
学習院大学大学院人文科学研究科身体表象文化学専攻博士後期課程。論文に「リアルクローズ化する『マンガファッション』」(『vanitas』Vol.002、2013年)、「ソフィア・コッポラの〈ヴァンダリスト〉性に関する一考察─第三波フェミニズムと「ライオット・ガール」の文脈からコッポラを〈深読み〉する」(『ユリイカ』50巻4号、2018年)、共著に「ラブドールはガラテアの夢を見るか―メディアとしての、メディアのなかのラブドール」(岡本健・松井広志編『ポスト情報メディア論』ナカニシヤ出版、2018年)など。

原山都和丹(はらやま・とわに)
京都精華大学ポピュラーカルチャー学部助手。京都女子短期大学部生活造形学科、上田安子服飾専門学校卒業。アパレルOEM会社で生産管理、製糸会社にて編み物キットの企画・制作などを経て現職。個展に「ハタラキモンのニット展」(gallery 110、2017年)。

平芳裕子(ひらよし・ひろこ)
神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術、神戸大学)。著書に『まなざしの装置 ファッションと近代アメリカ』(青土社、2018年)、共著に『西洋近代の都市と芸術1 ローマ』(竹林舎、2013年)『相対性コムデギャルソン論』(フィルムアート社、2012年)、『人間像の発明』(ドメス出版、2006年)など。

藤嶋陽子(ふじしま・ようこ)
東京大学大学院学際情報学府・博士課程。論文に ‘The Rise of the Historical and Cultural Perspective in Fashion Studies in Japan.’ International Journal of Fashion Studies, 5(1), 2018. 共著に「着こなしの手本を示す─読者モデルからインフルエンサーへ」(岡本健・松井広志編『ポスト情報メディア論』ナカニシヤ出版、2018年)。

山内朋樹(やまうち・ともき)
京都教育大学教員、庭師。フランスの庭師ジル・クレマンの研究を軸に、都市の片隅に息づく生態系に現代の庭の可能性を探っている。現在は庭の石組を身体と相関的な動的構造として分析するプロジェクトを進行中。論考に「なぜ、なにもないのではなく、パンジーがあるのか浪江町における復興の一断面」(『アーギュメンツ』#3、2018年)、訳書にジル・クレマン『動いている庭』(みすず書房、2015年)。