少女はやがて女神になる。
水と大地を感じさせる叡智と洞察の物語へ──
世界の神話・民話から「英雄(ヒーロー)目線ではないヒロイン(女性性)の旅」を読み解く、女神神話の物語分析、決定版。
○キャラクター、ストーリー、世界観を作る、すべての物語創作者必携の1冊
○昔話の類型「アールネ・トンプソンのタイプ・インデックス(抜粋)」付き
昔話はイマジネーションや希望、人間らしさにあふれています。人間に共通の「集合的無意識」を表すものもたくさんで、願望実現や問題解決、気づきのヒントを与えてくれます。おとぎ話と神話は手ほどきをするイニシエーターであり、若い世代を導く賢者です 。
───本文(イントロダクション)より古代の女神は大地や海であり、生命の母でした。優美で残酷、絶対的な支配者で、「イシュタル、アスタルテ、キュベレは、残忍で、気まぐれで、淫乱だった。彼女たちには力があったのだ。死と生の源泉である彼女たちは、男たちを産んで、奴隷にした」と、シモーヌ・ド・ボーヴォワールも『第二の性』で記しています。(中略)「ヒロインの旅」も、英雄の旅と同じように普遍的で尊く、力強いものです。
───本文より世界地図を用意して、本書で取り上げる物語の地域に色を塗って確認したところ、南極大陸以外はほぼ埋まりました。(中略)欧米の話に偏らないよう、西アフリカやペルー、アメリカのズニ族、オーストラリアの物語も調べました。伝説、記録、心理学、歴史、社会学の本にも手を伸ばし、(中略)人類学や歴史の本、神話についての記述に注目して読みました。
「英雄の旅」の根底には愛や不安、若者の悩みや心の闇があるため、ユングやフロイトの心理学や、ユング派のマリア・タタールやトニ・ヴォルフらによる神話分析も調べました。「ヒロインの旅」の普遍性を知れば知るほど、ジャンルや形態を問わず、様々な創作に応用できそうです。
───本文より
ジョゼフ・キャンベルの『英雄の旅』や『千の顔を持つ英雄』では、「英雄(ヒーロー)」は失ったものを取り戻し、命を救う霊薬を探して魔法の剣で悪と戦い、やがて叡智を得て村に帰還します。スターウォーズもアーサー王の伝説も、数多くの物語が悪を倒し、恐怖を乗り越え、大人になります。
では、「ヒロイン」は?
英雄(ヒーロー)が冒険の中で論理や勇気、力を表す一方、ヒロインは創造力や慈愛、鋭い直感を表します。決して、ヒーローに助けられるのを待つばかりではありません。
「ヒロインの旅」は献身と勇気を携え、常に前を向いて歩く強さがあります。月のサイクルに従って生き、剣はなくとも知恵と鋭い直感で戦い抜き、苦しみに耐えながらやさしい世界を求め続けます。そうして、少女はやがて女神へと成長していくのです。そこには、現代の女性の生き方へと続く系譜があります。
本書では、世界各地の神話、伝説、民話や民間伝承を楽しみながら、「ヒロインの旅」をステップごとに追う、「女神たちのストーリーテリング」を凝縮しています。
アニメ、マンガ、ゲーム、映画や小説など、各ジャンルの物語創作のヒントとなるのはもちろん、心理学、神話学やジェンダーの研究にも必携の1冊となります。
【取り上げる世界の物語の一覧】
『野の白鳥』(デンマーク)/『ニーベルングの指環』(ドイツ)/『タムとカム』(ベトナム)/『ケリドウェンの大釜』(ウェールズ)/『ヒナの航海』(サモア)/『イシュ・チェル』(マヤ)/『タム・リン』(スコットランド)/『千匹皮』(ドイツ)/『手なし娘』(南アフリカ、コーサ)/『シェヘラザードとドニアザード』(中東)/『イナンナの冥界下り』(シュメール)/『コアトリクエ』(アステカ)/『メドゥーサ』(アメリカ)/『ライオンのひげ』(スーダン)/『バーバ・ヤーガ』(ロシア)/『変わる女』(ナバホ)/『デメテルとペルセポネ』(ギリシャ)/『金蓮』(中国)/『デアドラの物語』(アイルランド)/『ウサギ狩りの少女』(ズニ族)/『アナトとバアル』(ウガリット)/『熊皮の女と熊女』(ブラックフット族)/『アフロディテの結婚』(ギリシャ)/『賢いクリスタル』(チリ)/ 『イシスとオシリス』(エジプト)/『シャーマンの女』(シベリア)/『ペレとヒイアカ』(ハワイ)/『イザナギとイザナミ』(日本)/『泣き女』(メキシコ)/『カーリーの誕生』(インド)/『老女と悪魔』(パレスチナ)/『度胸がある女』(ペルシャ)/『石の舟に乗った魔女』(アイスランド)/『銅色の女の娘たち』(バンクーバー島)