小説をはじめとする物語創作において推敲作業の重要性はよく知られています。しかし、「具体的にどのように推敲すればよいのか」を教えてくれる本(やメディア)は、これまでありませんでした。
本書『物語を書く人のための推敲入門』は、推敲に特化した唯一無二の本として、刊行後大きな話題となっています。
今回は、プロの作家として活躍中の浅海ユウさん、櫻いいよさん、八谷紬さん、望月麻衣さんの4名に「プロから見た本書の使えるポイント」について語っていただきました。また4名それぞれの推敲方法についてもお話しいただいています。推敲のスキルを身につけたものだけが、欠点を長所に、及第点から傑作へ、没原稿を受賞作へと変えることができます。プロが実際にどのような推敲のプロセスを経て作品を磨き上げているのか、普段はなかなか語られることのない「推敲」の世界をぜひのぞいてみてください。
自分の物語の欠点を把握する
本書『物語を書く人のための推敲入門』(以下、本書)では、推敲は「自覚することが必ず最初の第一歩」(本書54頁)であるとし、物語の欠点を自分で把握することの重要性を述べています。そして以下の12項目について自己採点をすることで、自作の欠点が浮き彫りになるといいます。プロの作家から見たこれらのチェック項目の妥当性についてお伺いしたいと思います。
ストーリーの要素問題は十二の採点対象があって、それが相互に絡み合うところに必ずその欠陥が潜んでいる。その欠陥をどこで探せばよいのか、見つけたあとどうやって原因を結果に結びつけてそれに応じた改善ができるのか、成功はそのことを知っているかどうかにかかっている。(本書57頁)
ストーリーの要素または力点
1 コンセプト(コンセプトになるものがあるかどうか)
2 ドラマの前提(プレミス)/起伏(アーク)(主人公の探求と目的)
3 ドラマの緊張感(テンション)(対立要素による衝突・葛藤)
4 読者の疑似体験
5 求引力ある人物像
6 読者の感情移入(読者が気になるもの)
7 テーマの重み・妥当性・共鳴
8 効果的なストーリーの組み立て(構成)
9 最適なペース配分
10 シーンの完成度
11 文体
12 語りの戦略
みなさんの中でコンテストデビューをなさった方がいれば、その方からまずお話をお聞きできますか?
浅海ユウ(以下:浅海):わたしは別名義で22期(2015年)電撃大賞銀賞を受賞してデビューしました。電撃大賞では、審査を通過すると評価シートが送られてききます。一次と二次では審査員ふたり分の評価、三次では編集部員五名分、四次以上で担当編集がつくというシステムになっています。そして、その選評には「ストーリー」「キャラクター」「設定」「オリジナリティー」「文章力」という項目があり、それぞれの項目に対して5段階の評価が下され、自分の作品のレベルが把握できるようになっています。
本書で紹介されている12項目は、電撃大賞の選評の項目よりも、より詳細で具体的な表現になっています。しかし、内容的には電撃大賞の評価項目と重なっていると思いますので、そういう意味では日本の商業出版を目指す場合でも十分通用するチェックリストだと思います。
ちなみに、この選評は受賞者には送られて来ないので、わたしは自分の作品の選評は見たことがないのですけど。
望月麻衣(以下、望月):わたしは、電撃大賞に応募したことがあるので、選評が送られてきました。評点はもちろんですが、編集者さんのコメントも丁寧で、とても参考になりました。自分の弱点がわかるという意味でも、とてもありがたかったです。自分のレベルがどれくらいのところにあるのかを知るために、採点目的で応募する人もいるようです。この12項目のチェックリストがあれば、自己採点という形ではありますが、どこをチェックすべきかというのが明らかになるので、とても役に立つのではないでしょうか。
望月さんは、その後電撃大賞には応募しなかったのですか?
望月:しませんでした。その時は、エジプトのクフ王のピラミッド建造秘話みたいなものをテーマにした、歴史ファンタジー要素の強い作品を投稿したのですが、いただいた選評で、「このテーマでは今の時代、読者を獲得するのは難しい」という趣旨のコメントをいただきました。
その当時は、自分の好きなテーマを自由気ままに書いていたので、マーケットや読者のことを考えていなかったんです。なので、選評を見て「確かにそうだな」という反省をしました。そこではじめてマーケットのことを意識するようになりました。
電撃大賞にはその後作品を投稿することはありませんでしたが、その後の作家活動においてとても勉強になりました。
いつ推敲するのか
推敲は、一度作品を書き終えた「後」のチェックあるいは修正作業として一般的に認識されているかと思います。みなさんが、自分のストーリーを推敲するタイミングはいつ頃でしょうか。
八谷紬(以下:八谷):わたしは完全に書き出す前ですね。わたしの場合、第一稿を書き始める前に、構成はもちろんシーンまですべてが決まっていないと書けないんです。作品のコンセプトやテーマ設定はこれでよいか、物語の構成はこれでよいか、などすべてをチェックし、シーンをすべて書き出して、それが終わってから第一稿を書き出します。
(八谷さんの執筆方法についてはこちらの記事を参照)
浅海:わたしにとっての推敲は、この本の中でいわれているものとは少し違って、もっと表現的なものを意味していました。例えば「切実に思った」という表現がものすごくたくさん出てきたとします。すると間違いなく、編集さんに表現を変更してくださいと言われます。それは多分、同じ表現を多用すると、文章が稚拙に感じられるからだと思います。そうならないよう、別の類語表現に置き換えたり、その場面により相応しい表現に換えるというような作業だけを「推敲」ととらえていました。そして、そのような作業は、第一稿を書き終えて、一度全体を把握したうえでないとできないことなので、その意味では、わたしも書き終えてから推敲をするタイプだといえると思います。
ただ、書き出す前にはプロットをしっかりと固めます。その時点で時間をかけて練り、書き出してからはそれをいじることはありません。そういう意味では、八谷さんと同様、書き始める前段階での推敲作業をしていたことになりますね。
八谷:二回ある感じですね。書き始める前と書き終わった後と。
望月:わたしの場合、事前に用意したプロットに基づいて、一気に第一稿を書き上げてしまいます。一気に書き上げないと熱が冷めてしまうような気がするので、第一稿の段階では、なかば陶酔状態で書き上げてしまいます。そして、一度その原稿から離れ、しばらく経ってから第三者として冷静な頭で作品を読み返します。そこからいろいろと手を加えるという感じですね。
たとえば、A→B→C→Dという展開になっているけど、それが機能していなかったり効果的ではなかったりした場合、シーンの順序を入れ替えるということもしますし、あまりにご都合主義的な部分や説明不足な部分に加筆修正をするという作業もします。なので、推敲のタイミングという点では、わたしは書き終わった後というほうが圧倒的に多いですね。
櫻いいよ(以下、櫻):わたしの場合は、プロットは最初の段階で決めておくのですが、「ここで切っておいたほうがおもしろいな」とか、「ここで伏線を張っておこう」というようなことは書きながら調整することが多いです。大きな構成上の入替はない、という程度にプロットはつくっておいて、もう少し細かい展開や話の切れ目は、書きながら決めていきます。その結果、最初のプロットから変わることもあります。書き上がってから、一度冷まして手を加えるというのは、みなさんと同じですね。
浅海:誰でもそうだと思うのですが、書き上がったときは「オレって天才」と思うはずなんですよ。すごい情熱と労力を費やして書き上げていると思うので。でも一度その熱を冷まして客観的に作品に向き合うというのはとても大事ですね。
冷ます期間はどれくらいですか?
望月:わたしは3日くらいですね。その間は見たくもないです(笑)。
櫻:わたしは、その時点で一度担当編集者さんに送っちゃいますね。
望月:わかります。返事がくるまでは何もできないという状態にしておくということですね。
櫻:書き上げた時点ではすごく興奮している状態なので、物理的に原稿から離れることによって冷静に作品に向き合えるようにします。
望月:プロットをあまり事前に固めすぎずに決めずに書き始めるほうが、本文を書くときの楽しみを満喫できるので、わたしはそっちのほうが向いてますね。事前にプロットを細かく書きすぎるとそこで満足してしまうんです。
櫻:わたしも細かいところは書きながらつくっていくところがあります。主人公のラストシーンの気持ちとか、書き終わってみないとわからないんですよ。
望月:そうそう。例えば書き始める前のプロット段階では、「このシーンで主人公に年上の人が何か良いことをいう」ということだけ決まっていて、でもその時点ではそれ以上、具体的なことは何も決まっていないんですよ。で、書き進めていってそのシーンになったら誰かが何か良いことをいってるという(笑)。キャラクターに任せる感じですね。
八谷:物語の展開を楽しみながら書く、という感じですね。わたしの場合は「楽しむ」のポイントが少し違っていて、単純に「文章を書く」ことを楽しんでいる感じです。このシーンをどうやって表現しようか、という方に注力するので、先に全部決めてしまいます。
みなさんは、第一稿を書き上げた時点で一度担当の編集者の方に原稿を送るという話でした。原稿と距離をとりつつ、編集者からのフィードバックをもらい作品を磨き上げていくということですね。プロの作家はそのようなことが可能ですが、担当編集者のいないアマチュア作家の方はどのようにすればよいでしょうか。第三者からのフィードバックがない中で、どのように作品を磨いていくのでしょうか。
八谷:だからこそ、推敲という作業が必要不可欠になってくるのだと思います。第三者の視線に立つのはとても大変だと思いますが、すこし作品から離れてみて自分の好きな漫画や映画など他の物語に触れてから、作品をチェックしていく。この本の中にはそのためのチェックリストや作品をより良いものにして行くためのツールが紹介されていますので、そういうものを使って作品を磨いていくのも方法だと思います。
望月:デビュー前はエブリスタというウェブのプラットフォームで作品を発表していました。そこでは、作品を投稿すると、比較的早いタイミングで読者からのコメントをいただくことができるので、それはすごく助かりました。
作品上の矛盾があったらすぐ指摘されたりするんです。例えば、主人公の女性が悪者に襲われたところをヒーローが助けて、傷の手当のためにその男性の部屋に行くという王道の展開がありますよね。そういうものを書いたら、「襲われた直後に知らない男性の部屋に行くなんて考えられない」というコメントをいただきました。確かに普通の世界ではそんなことを起こらないな、と思って主人公の女性に「どうしてこの部屋に来てしまったんだろう、錯乱していたんだわ」というような一言を加えました。彼女が普通じゃない状態であったことを表現したんです。作品に不自然なところや矛盾があると読者は感情移入しにくくなってしまいますよね。
ウェブで小説を発表するというのは良くも悪くも読者の声をストレートに聞くことができるという意味でひとつの手段だと思います。
八谷:ウェブで公開して意見を聞くのも大事ですよね。ただその作品を公開できない応募式のコンテストに出したいという場合の人は、自分もしくは友人などに頼んで推敲作業をすることが重要になってくるんだと思います。
ウェブで公開する場合も、まずは読んでもらう必要がある。日々膨大な作品が発表されていくので、そのための工夫が必要になってきますよね。
望月:そうですね。読者に興味を惹いてもらって、読んでもらうために、しっかりとしたコンセプトのある作品であるということが必要だと思います
コンセプトの重要性
この本でも、コンセプトの重要性が繰り返し説かれています。
ストーリー修正を進めるにあたって、コンセプトは最も弱点になりやすいところでもあるから、ストーリー強化にとっては自然な出発点となる。ただ残念なことに、膨大な没原稿のなかで見逃されることのいちばん多かった失敗の原因もコンセプトなのである。(本書72頁)
ほとんどの場合、ストーリー内に弱点や機能不全があるのは、コンセプトそのものの性質が原因になっている。つまり、コンセプト内に「求引力のある」ものが足りない、もしくはまったく欠けているのだ。(本書74頁)
浅海:やはり、人を惹きつけられるコンセプトがその作品にあるのかどうか、というのは商業出版に限らず、自費出版やウェブで作品を発表する場合でも重要なことだと思います。
発表するスタイルはどうであれ、クリアしなければならない基準やハードルは商業と同じでしょう。本書にもあるように、たとえば、ウェブサイトで数多ある作品の中で自作の固定読者を獲得したいと思う時、或いは業界の大物たちがライバルとなる自費出版をする時でも、読者さんに選んでもらうためには、ストーリーがコンセプト面でも、前提面でもずば抜けて強いものでなければいけないという点には強く共感します。
自費出版する作家だからといって、自分には別のストーリーの基準があって、自分にはそのハードルをちょっとくらい下げてもいいんだなどと間違っても考えないでほしい。成功して固定読者を獲得したいのなら、その正反対こそ正解だ。自費出版でもやはり業界の大物たちがライバルなのであって、率直に言えば自費出版を選んだ時点で不利な立場にあるのだから、むしろあなたのストーリーはコンセプト面でも前提面でもずば抜けて強いものでなければいけないのだ。(本書86頁)
八谷:ウェブ小説の世界では、作品をPRするために、自分で簡単な内容紹介やあらすじを書くことができます。膨大な作品の中から自分の作品を読んでもらうためには、そこで自分の作品のコンセプトを明確に打ち出すことがとても重要です。コンセプトや前提(プレミス)をまずしっかりとしたものにしなさいという本書の主張は非常に的を射ていると思いました。
浅海:ある編集さんが言っておられたのですが、「流行りや定番のコンセプト、前提(プレミス)を採用することで、読者を安心させることができる。けれど、やはりその中でも何か独自のフックがないと似たような作品に埋もれてしまい、読んでもらうことは難しい」と。裏を返せば、しっかりした「プレミス」と「コンセプト」があるのは当たり前で、そこから更に差別化を図るための「フック」が必要ということなんでしょうね。
櫻:逆のコンセプトを狙うというパターンもありますね。わたしがウェブに投稿していた時代は、「女子高生×俺様男子」というような作品が主流だったのですが、あえてそこを避けた作品を書いたところ、たくさんに人に読んでもらうことができました。
望月:ウェブで自分の作品を読んでもらうために、設定とかテーマとかあらすじとか、いろいろと考えた上で書いてアピールしますよね。その訓練がプロの作家になってからすごく役立ちました。
浅海:そうそう。結局そこで考えていることが、コンセプトそのものだったりしますからね。
望月:ウェブ小説は無料で読めるとはいえ、読者の方も時間をかけて作品を読むわけで、ありきたりな作品では読んでもらうのは難しいです。そうなるといかに強力なコンセプトを打ち出すことができるのか、というのが勝負になってくると思います。
八谷:コンセプトに関して、本書に書かれていた例がわかりやすくてよかったですね。
生き生きとしたコンセプトのない話が売り込んだときどんなふうに聞こえるのか検討するのも、ある意味では役に立つ。たとえば「離婚したあとの二人が恋に落ちる」。うまく盛り上げれば悪いストーリーではない。ただ離婚はあまりに身近でそれそのものが強力なコンセプトになるわけではない。エージェントもすぐに草稿を送ってくれとは言わないだろう。おそらくコンセプトについてもっと知りたい、つまりコンセプトの力を引き出すような前提につながっていくのかどうかが気になるはずだ。たとえば「元配偶者を殺したい二人が恋に落ちる」など、何か背景として斬新なものを持ち込むことができれば、コンセプトからうかがえる可能性もあってストーリーがその時点で補強できる。(本書86頁)
櫻:ウェブで書いている人は、コンセプトと真剣に向き合わざるを得ないんじゃないかと思いますね。
八谷:ウェブで公開してみたものの、あまり読者がつかなかった作品というのは、コンセプトがニーズと合致してなかった可能性があると思います。投稿サイト先の雰囲気や流行もあるので一概には言えませんが、その作品をブラッシュアップするのか、新しい作品に挑戦するのかは、コンセプトを見直して考えてみるといいんじゃないかと思います。
浅海:とある出版社さんのケースをお話ししますと、どんな作品を書くのかを決める際に、編集者さんに簡易プロットを提出するというフローがあります。A4サイズの既定の書式があり、そこで必ず書かなければいけないのが「1:タイトル」「2:コンセプト」なんです。あとはちょっとしたあらすじを記入する欄があります。
その書式の項目をみても、出版社がいかにいいコンセプトのある作品を求めているのかということがわかります。コンセプトは編集者がもっとも重視しているポイントだと思いますね。
簡易プロットを提出したあと、詳細プロットといってA4で2枚くらいのボリュームにプロットを展開していくのですが、そこで最初のコンセプトとズレが生じていたりすると問答無用でボツになったりもします。コンセプトをしっかりと定めるというのも大事ですが、物語がそのコンセプトに沿ったものになっているか、というのもすごく大事だということをその時に学びました。
望月:でもそれは編集者さんとの相性や好みもありますよね。
浅海:そうですね。そのときボツになったアイデアが、他社から本になったものもありますし。でも2年間くらいそのコンセプト出しのノックをやり続けたことでずいぶんと鍛えられました。
八谷:プロになってからのほうが、実際に書くまでに至らなかった、つまり編集者さんとのやり取りでボツになったコンセプトやアイデアの数は多いですね。そういう意味では、アマチュア時代のほうが「書きたい作品を書く」ということができていました。
浅海:そうかもしれません。簡易プロットというA4の紙1枚で、編集さんにその作品の魅力を伝えることができなければボツになります。いわゆるプレゼンですね。それくらいコンセプトは重要なファクターということだと思います。ゆくゆくは本の帯になるようなキャッチーなものが理想的なコンセプトともいわれるぐらい重要なものですから、コンセプト決めの作業は、書き始める前の段階に片づけておかなければならないでしょうね。
望月:わたしは、こういうものが書きたい、と編集者さんに提案してOKをいただいた作品でも、改めてマーケットの様子を見てちょっと合わないなと思ったら、やはり今は違うようなのでやめます、と引っ込めることもありますね。
書きたいものを書くということと、そこに読者がいるということはやはり別の問題ですから。
櫻:わたしも別の出版社で、同じような書式をつかったアイデアノックをやったことがあります。そこでも「タイトル」「コンセプト」と「5行くらいのあらすじ」、を書くというのが基本になっていました。なので、書く前の段階でしっかりとしたコンセプトを定めておくというのは小説にとって大事なことだと思います。
望月:プロになると、作家だけでつくっていくというよりは、編集者さんと一緒につくりあげていくという要素も出てきます。アマチュア時代は自分の好きな作品を自分で好きなように書くことができるという喜びもあるのですが、果たして自分の好みが市場とマッチしているのか、というのはなかなかわからないですよね。
人はまったく新しいものや目にしたことがないものは手に取らないと聞いたことがあります。「誰も読んだことのない作品を書いてやるぜ」というモチベーションはよいのですが、もし本当にそういうものが書けたとしても、誰も読んでくれない可能性が高いですね。なので、すでにあるコンセプトを「ちょっとだけ変えてみる」というのも、コンセプトづくりのポイントのような気がしますね。
八谷:ハリウッドの世界で、脚本家がプロデューサーから「違っているけど同じ脚本をくれ」という要請をされるという逸話がありますね。それと同じような話かもしれません。
わたしはヒット作品をトレースして物語を作るというトレーニングをお勧めしたいんですけれど、その場合でもコンセプトは自分で打ち出す必要があると思います。例えば「身分の違いに阻まれた若い男女の悲恋」だとしても、時代や舞台、どんな身分の違いかで物語は変わります。それをコンセプトに活かすと物語の幅も広がるんじゃないでしょうか。
編集者と相談できないアマチュアの作家にとって、推敲作業は自作を磨き上げる手段として非常に重要だと思うのですが、周囲に作家志望の友人や相談できる知人がいる場合、そのような人に、相談したり作品を読んでもらったりということもできると思います。その場合、どれくらい率直に意見をもらえるものなのでしょうか。みなさんは誰かに相談すること、あるいは相談されることはありますか。
望月:わたしが真剣に意見を求められたら、自分の担当編集者さんだったらこういうだろうな、とかそういう目線でのフィードバックをすると思います。
アマチュアの作家さんでよくあるのが、例えば『名探偵コナン』でいうと、コナンは黒の組織という大きな横軸、そして毎週の事件という縦軸で織りなされています。でも、多くの作品は、その縦横の軸がないので、それを意識した方がいいかもしれない、というアドバイスをしたことがあります。
八谷:自分の担当編集さんだったらという目線はいいですね。友達から的確なフィードバックをもらうことができれば何よりなのですが、自分の作品について他人に話すことで整理できる、とか明確になるということもあるんじゃないかと思います。
浅海:それはありますね。
八谷:話してみることで明らかになったり、モヤモヤしていたものを他人が「これは、こういうことなんじゃないの」と指摘してくれることで再確認できたり。そういう効果があると思います。
望月:プロになってアドバイスを求められ機会もあるのですが、アドバイスを聞いてくれる人と、まったく聞かない人が極端だなという印象ですね。
櫻:本人なりに、なぜこのような作品になったのか、という問いへのきちんとした理由もあるし、作品自体への想い入れもあるので、他人の意見を受け入れるというのは作家にとって勇気のいることだとは思います。でも、それを受け止められるかどうか、もっというと作品を書き直す勇気があるかどうか、というのが大きな分かれ目になるかもしれません。
八谷:文章作法における技術的な部分というのは指摘しやすいのですが、作品のコンセプト自体の良し悪しということになるとちょっと指摘しにくいな、というのは確かにあります。作品の根本にかかわることなので。
浅海:書籍化が決定した段階なら、作家とプロの編集者という立場でコンセプトについても割り切って相談できますよね。編集者さんも、自分の立場から明確にコンセプトへのダメ出しもしてくれますし、それは受け止める必要があります。
ただ、私も経験があることですが、個人的にウェブサイトで発表したり、コンテストに応募する前の段階でコンセプトそのものを他人に相談するのは勇気がいることかもしれません。つまり、デビューする前の方が、自分自身の作品を客観的にストイックに作り上げなくてはならないことになりますね。
本書では推敲という作業が「全部やり直し」を意味することもある、とありますが、みなさんも推敲の結果、全部といわないまでもかなり大きな作品の書き直しになったような経験はありますか。
いつだって程度問題だが、時には「推敲」という言葉が、最初から全部やり直しを意味することもある。(本書30頁)
望月:よくありますね。第一幕のところで、読者を惹きつけなければいけないのに、どうしてもそうなっていないということがあり、最近作品を7度書き直すということをしました。この場合、構成上は問題なかったのですが、実際に書いた部分が効果的に機能していなかったので、そういう場合は何度でも書き直します。
浅海:基本的にはプロット通りに書き上げるのですが、シーンの並び替えのようなことを行うことはあります。単調な場面が続き、中だるみしているな、と思った時には、じゃあこのシーンを入れてみようとか、そういうことはあります。バイパス手術と呼んでますけど。
櫻:賞を取った作品の話になるのですが、刊行に際して24万文字の作品を16万文字まで削るという作業をして、これがなかなかの大手術になりましたね。軸となるコンセプトは変えなかったのですが、どうしても文字量が変ってくると構成を見直す必要ができたので、構成はガラっと変わりました。
八谷:わたしはすべての設計図を最初にきっちり決めてから書くタイプなので、書き上がったものを全部書き直すということはほとんどないですね。変更を加えるとしたら、書き始める前の段階になります。編集者の方からもうちょっと増やしてといわれることがたまにありますが、その場合シーンを増やすわけにもいかないので、文章の言いかえなどをして、文字量を増やすということをします。
浅海:商業出版の場合、文庫なら250頁前後が理想という風にいわれていますね。駅構内の書店で手に取りやすくて、新幹線で東京-大阪間で読み切れるという分量だそうです。文字数でいうと10万字前後でしょうか。
望月:わたしも256頁で書ける話を書いてくださいといわれることがよくあります。
キャラクターをつくるときに大事にしていること
もう少し具体的な点についてもお聞きしたいと思います。本書では、
ここまでの説明してきた論点のほとんど――つまり、求引力あるコンセプトに圧倒的な前提、ドラマ上の緊張感や疑似体験、そして共感できる登場人物――は、たった一つの望ましい結果を目指して用いられるツールとして存在している。読者を気持ちの面で引き込むことだ。(本書173頁)
とあり、物語の最大の使命は、読者を感情的に惹きつけることだと述べています。その重要な要素として、これまでみなさんにお話ししていただいたようなコンセプトの問題などがありますが、他にも「共感できる登場人物」も大事だと述べられています。キャラクター造形に関して気をつけていることなどありますか。
望月:わたしがデビューした時の出版社の担当編集者さんが、文芸以外の部署からやってこられた方で、とても勉強熱心な方だったんです。その方からは「キャラクターの履歴書を全部作れ」と教えられました。もしその作品に会社のことが出てくるなら、その会社の組織票も全部つくれともいわれましたね。一度そういうものをつくっておけば、その後作品が広がってもブレないですよ、といわれました。
わたしの作品で『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)というシリーズがありますが、この作品もまずキャラクターの履歴書を作成しました。「普段は敬語を使うが感情がたかぶったときに京都弁になる」という設定も最初にありました。
最初に定めたキャラクターの設定を、うまく物語と連動させながら、引っ張りすぎるでもなく、一気に出しすぎるでもなく、小出しにしていくことで読者にアピールするように心がけています。
あと、この本でも「主人公を複数にしようとするのは、自らの破滅につながりかねない。」(本書138頁)とありますが、複数主人公モノは失敗する可能性が高いですね。いろんな人物を書きたくなる気持ちはわかるのですが、ホームズ(主人公)とワトソン(相棒)という感じで、やはり明確な主人公を設定するほうが物語としてはうまく機能すると思います。
あと、これはプロになってからより一層実感していますが、主人公がきちんと魅力的に描けている作品というのはヒットもしやすいなと思いました。「魅力がある」というのもこの本でいう「共感できる」と通じる部分がありますよね。
浅海:わたしも望月さんと同じで履歴書やタイムテーブルをつくります。そうしなければ、どこかで破綻してしまうので。
それから、ある編集プロダクションの方と一緒にお仕事をしたときの話ですが、先方から1枚の紙が送られてきまして、それが「キャラクター・シート」だったんです。そこには「外見」という項目があり、髪型や目の色など身体的な特徴が細かく書き込めるようになっていて、他にも「苦手なもの」「口癖」「得意なもの」など性格的な項目まで多岐にわたって記入するようになっていました。それを主要なキャラクター分全部記入してくれ、というオーダーを頂いたことがあります。
履歴書やタイムテーブルはシリーズ物のような長いお話ではない場合でも必要ですか。
浅海:そうです。時系列の年表上に、主要キャラクターの年齢や作中の出来事を記入していくという作業をします。
望月:そういうものを作っておくと、その作品がシリーズに展開した時にはとても役に立ちますね。
浅海:結局、物語の進行に矛盾があると校閲さんのチェックが入ります。たとえば出会いは入学式で、主人公の誕生日はクリスマスだったとします。ところが、物語運びの都合上、彼女の誕生日がどう計算しても夏休みになってしまうとすると、校閲の段階で時系列の大幅変更を余儀なくされることになり、かなり大変な作業になります。あと、夏なのにコートを着ているなんてことを防止するためにも時系列表はあった方がいいと思われます。
櫻:わたしの作品は登場人物をなるべく少なくする方向で考えているので、そこまでのものは用意していません。簡単なメモをつけることはあります。最初に決めるということではなく、書きながら決めていくという感じですね。
物語上重要でない登場人物については、名前もつけないということもあります。いろいろと名前が出てくると「あの子誰だっけ?」となってしまうので。
八谷:わたしは登場人物の髪型や身長など、見た目を細かく決めたことはないです。キャラクターの外見に関しては読者が好きなように想像してほしいなと思っています。なので、あまり限定しないようにします。書き進めていきながら、そのキャラクターの外見に初めて言及するときに、忘れないようにメモをすることはありますけど。
浅海:わたしは想定キャストも決めてます。このキャラは岡田将生さんでいく、とか(笑)。
八谷:編集者さんからのオーダーでもうちょっとキャラクターをつけてくださいといわれたときには、わたしもイメージを共有するためにこの俳優さんがちょっと老けた感じ、とかそういうことを考えることはありましたね。
望月:作品がコミカライズされることがあったりした場合には、キャラクターの外見を含め、ものすごくいろんなことを聞かれるので、履歴書やタイムテーブルをつくるのが苦ではない人は一度つくってみてもいいかもしれませんね。
本書では、人物造形の際に陥りやすいミスとして「エピソードだらけのストーリーテリングに頼っている」(本書137頁)とか「裏話を強調しすぎて、ドラマ上の本筋から緊迫感・ドラマ性がなくな」る(本書172頁)などが挙げられています。
浅海:キャラクターがどんな人物なのかを表現したいあまり、本編とは関係のないエピソードや裏話を詰め込みすぎるということですね。人物の背景にあるものとしてそういうことを考えておく、あるいは用意しておくということはあってもよいのかもしれませんが、物語にあまり関係のないエピソードだった場合、それは寄り道にほかならず、読み手がゴールを見失ってしまいかねない。
八谷:ただそのシーンやエピソードが必要なのかどうかのジャッジってすごく難しいですよね。このキャラクターにはこんなバックストーリーがあって、と考えているとどこかに書いておきたいってなりますし。最初にこの物語はどんな主人公で、舞台はここで時代はいつで、背景はこうなっていて、と読者に伝えておきたいところですが、本当にそれが読者を惹きつけるフックなのかどうかは考えなければならないと思います。
望月:書いてると楽しいからわかるんですけどね。キャラクターに厚みやリアリティをもたせたりするためにいろいろと書きたい気持ちもあると思うのですが、そこは匙加減の難しいところですね。
八谷:設定を書き込むのが好きな人は多いですよね。
浅海:本来は最低限の情報を、タイムリーにインプットできれば良いのですが、どうしても全部書きたくなってしまう気持ちはわかります(笑)。
シーンをどのように描くのか
シーンについてお聞きします。「シーンというのは、展開を作っていく一つひとつの独立した構成単位のことだ。」(本書203頁)とあり、「創作する上で最大無二のかなめとなるポイント」として「『どのシーンにも使命・課題が必要』。つまりはストーリーに展開として情報をもたらす具体的な機能と目的」が必要と表現されています。アマチュアの作家の方の中には無駄なシーンを書いてしまうというミスが起こりやすいと思います。
八谷:むかし読んだ大塚英志さんの『キャラクター小説の作り方』(角川文庫)という本に、
読者に伝える情報が何もない場面はないか。例えば「主人公の超能力のすごさを見せる」のが目的のアクション中心の場面がいくつもある、なんていう場合も実は「伝えるべき情報」がそもそもそれでいいのか、自分で疑ってかかる必要があります。(145頁 「第六講 物語はたった一つの終わりに向かっていくわけではないことについて」)
と書いてありました。わたしはこれを参考にこのシーンで伝える情報は何なのか、ということを書き出すようにしています。 そして、伝えるべき情報がないシーンは要らないという判断をします。
たとえば恋愛小説で、ただ二人がなかよくお茶をしているだけというシーンがあったとしますよね。でもそこで読者に何の情報も伝えていないのであれば、削除します。
櫻:物語に関係のないシーンって逆につくるのがすごく難しくないですか?
望月:そうそう。
浅海:でも、誰にも見せずに自分のためだけに書いていた頃の小説は、やっぱり書きたいものを書きたい、という欲望が強かったんですよね。つまり物語というよりも書きたいシーンをまず書きたいわけですよ。
全員:たしかに。
浅海:でも今になって客観的に考えてみると、自己満足の塊で無駄な贅肉シーンばかりだったなということがわかります。
望月:趣味の作品だと、小説でもマンガでも書きたいシーンだけ書いている作品がありますが、それと近いのかもしれませんね。
プロの作家の場合でも、書きたい個別のシーンというのはもちろんありますが、それを物語の中できちんと意味のあるものにするということは必須ですから、やはり物語全体の流れや構成をきちんと考えた上で、そのシーンをどのように配置していくのかということを考えます。
趣味と商業は、そこが大きな差になってくるのではないでしょうか。
櫻:わたしの場合は、書きたいシーンはだいたいラストなんです。なので、そこをいかに効果的なものにするか、ということを物語全体の中で考えていきます。締め切りなどの関係でラストシーンをじっくりと書く時間がとれなくて、焦るときもあるのですが。でも書きたいシーンがあるということは大事なことだと思います。やはり感情が高ぶりますよね。
望月:わたしもようやく書きたいシーンまで辿り着いた時は興奮しすぎて手が震えるようなこともあります(笑)。でも一日置いて自分で読んでみると「なんじゃこりゃ」ということもよくありますね。
八谷:シーンをただ書きたいという人と、書きたいシーンがあったとして、それをうまく物語の中に落とし込める人との違いでしょうか。そういう意味では物語全体の構成についての理解が必須になってきますね。
物語の構成について
構成についての話が出ました。本書では、多くの創作本と同様にストーリー構成について説明があります。本書では、ハリウッドの脚本術の世界でよく使われる三幕構成のメソッドを発展させた「4パート構成」を採用していますが、みなさんが構成を考えるときに採用しているメソッドはありますか?
本書190頁より
浅海:そうですね。わたしの場合は、四章か三章で物語を書くことが多いですね。三幕構成の真ん中を二つに割れば四幕になりますね。なので、この本で言及されていることととても似ています。基本的にはここにいるみんなは三幕ないしは四幕という形で構成を考えいていると思います。
櫻:わたしは五章になることが多いですね。三幕を発展させて四幕というのは浅海さんと同じですが、最後の最後にもうひとつ付け加えたくなってしまうんです。なので、四章目で全部おわらせずに、もう一章追加する、いわば四幕+一幕=五幕という感じでしょうか。
一幕目でいろいろと説明しようとして長くなりすぎてしまうようなこともあったりして、「読者がついてきてくれるかな」と心配になることもありますよね。その場合は、後ろのほうの一部を前のほうにもってくるというようなこともあります。
望月:たとえば、わたしの作品のように一冊の中にいくつかエピソードが入っているような連作短篇のようなつくりの作品の場合、構成なんていらないんじゃないかと思われているかもしれないんですが、実は主人公が冒頭で抱えていた悩みが最後には解決するというような、作品全体を串刺しにするような大きな物語が必ずあるようなつくりになっています。
これはさっき話していた『名探偵コナン』の黒の組織という作品全体を貫く大きな謎があり、それが物語の軸となっているところを意識してつくっています。
櫻:『金田一少年の事件簿』はその横軸がないかわりに、ひとつひとつの事件が長編になっているんですよね。
八谷:ラストが決まっていると、物語全体の大きなうねりの中に小さなエビソードを挟み込んでいけるのだと思いますが、ラストが決まっていない状態で連作短編のようなものを書き始めると、単なるエピソードの詰め合わせに近くなるのじゃないかと思います。ブログや日記のような形の作品もありますけれど、それでもやはり全体を通した物語があると思います。
浅海:着地点という言葉で表現されることもあると思うのですが、序盤からすごく大仰で、この物語は一体どこへ導かれるのだろう、というイメージで始まっているのに、結局は何も起こらず、ラストが全然意外じゃなかった場合(下手をすると読者さんの想像よりもこじんまりまとまっている場合)、間違いなく編集者さんからダメ出しされますね。
構成の話でいうと、最近流行りの短編連作(たとえば一話ずつに事件や不思議な出来事があって一話ずつ完結し、一冊に四話あるというようなもの)の場合でも全部の物語に横串を刺すようなエピソード、つまり全話を読み終わって初めて、なるほどそういうことだったのか、とわかるような謎が必要ですね。そういう意味では構成を考えないでいきなり物語を書くというのは、プロでもなかなか難しいのではないでしょうか。
最後に、みなさんが本書を読んで特に参考になったところや役にたったところがあれば教えてください。
八谷:本書の後半に3つのケーススタディが収録されていましたが、そこがすごく役に立ちましたね。ちょっと読んでて胸が痛いというか(笑)。
わたしはこの著者の本を読むのは『工学的ストーリー創作入門』「物理学的ストーリー創作入門」に次いで三冊目になります。わたしは今現在この著者の提案するメソッドで作品を書いていますので、本書で述べられていることも違和感なく受け入れることができましたし、今回もとても役に立ったなという印象です。
この著者の本では、コンセプトと前提(プレミス)の違いは何か、ということや物語の構成についてもとてもわかりやすい説明がされていますので本当にオススメです。
望月:わたしもケーススタディのところが役に立ちました。特に3つ目のケーススタディの歴史小説の部分(「ケーススタディ3 おおむねOKでも検査を受けよう」本書329頁)のところ。こういうふうにやっていくんだということで、とても面白かったです。でも、同じことを自分の作品にされたらどうしよう、という不安もありますが。怒られそうな気がします(笑)。
浅海:わたしは冒頭でもいいましたけど、やはり12項目のチェックシートですね。これからも、この項目はとても役に立つなと思っています。今後、これを見ながら自作をチェックしたいと思います。あとは、やはりコンセプトが大事なんだなということを再認識しました。
櫻:わたしは「あなたのストーリーは救うだけの価値があるのか?」(本書239頁)のところが身に沁みましたね。そのストーリーにどこまで固執するのか、変えることがいかに難しいか、ということだと思います。時には、その作品を諦めて次のステップに進むことも必要なんだなと思いました。これはプロットを練るときに考えておきたいです。
望月:グサっときたところでいうと、「天然の書き手」という部分ですね。
天然の書き手とは、事前にしっかりと「構成をデザイン」するのではなく、「自分のストーリーを思いつくまま自由に展開させる」人や「自分の直感に従って頭のなかからわき出すストーリーをキーボードやペンで書き留めている」人、という意味で使われていますね(本書184頁)。
望月:そうです。わたしは自分をずっと天然の書き手と認識していたのですが、でも天然なだけじゃプロの作家としてやっていけないということを痛感しました。最初の数作は天然でもいけるかもしれませんが、プロとして仕事として依頼を受ける立場になったときにそれでは通用しないんですよね。だから、勉強や努力をしています。この本は、もちろん推敲についての本ではありますが、プロの作家とは何か、ということについても考えさせられる一冊でした。
みなさん本日は長時間にわたりありがとうございました。
全員:ありがとうございました。