ためし読み

『感情類語辞典[増補改訂版]』

『感情類語辞典[増補改訂版]』の刊行にあたって

『感情類語辞典』の初版が出たのは約7年前、不安に包まれての刊行だった。これは私たちにとって初のノンフィクション企画で、当初は自費出版について自分たちが知らないことを調べて書き、一冊の本にするはずだった。ところが、ストーリーを書くとき、読者の関心を引きつける書き方でキャラクターの感情を伝えるのは難しく、私たちも苦労していた。これは大きな問題なのだ。キャラクターの気持ちがはっきり伝わらないと、読者を面白がらせることなどできないからだ。キャラクターの感情が引き金となって、読者は自分の記憶を蘇らせ、キャラクターに共感を寄せる。そういう書き方をしてこそ、読者をぐっとストーリーに引き込めるのだ。そこで、ふと直感が働いて、きっとほかの書き手たちも同じ苦労をしているのではないか、ならば、その解決の糸口になるような本を作ろう――こうして『感情類語辞典』が生まれた。このときの直感が正しかったとわかったのは、初版が刊行され、その反響を知ってからだが、今もなおその反響には驚かされ、謙虚な気持ちにさせられている。

書き手は皆共通の悩みを持っていることがわかると、私たちはさらに研究を進めた。知識を深めると、読者と共有したいこともますます増えていく。そこで、『感情類語辞典』の増補改訂版を出そうと決意したわけだ。

本書冒頭では感情の書き方を紹介している。感情は読者に説明するのではなく言葉で再現しなければならないが、そのヒントをさらに加筆している。特に、会話を使ったキャラクターの感情の伝え方について、セクションが新たに加わった。自然な会話では言外に意味を込めることが多く、重要な役割を果たしている。この増補改訂版では、それがどういう役割なのか、心の奥に隠れた感情をどう表現するのかについても掘り下げている。また、キャラクターのパーソナリティは過去の出来事から大きな影響を受けて形成されている。彼らは過去にどんな心の傷を負ったのか、そのせいでどういう感情を抱いているのか――背景を決める上で、何を調べるべきなのかについても情報を加筆した。書き手は、こういう下準備をしておけば、キャラクターの感情に現実味や一貫性を持たせて書くことができる。

この増補改訂版では、さまざまな感情が130項目に分けられている。各項目に、身体的シグナル、思考、内的な感覚などの具体例が挙げられているので、それらをうまく組み合わせ、キャラクターにしっくりくる感情的な反応を作れるようになっている。さらに今回は、各感情に結びついた行動を描写しやすくする目的で、その感情を強く想起させる動詞のリストを新たに加えた。また、キャラクターの感情が今後どう移り変わっていくのかをわかりやすくするため、各感情が発展あるいは後退すると、どの感情に至るのかが参照できるようになっている。

初版同様、この増補改訂版でも、感情的な場面を新鮮で示唆に富んだ表現方法で書くヒントや、ブレインストーミングの道具を数多く提供している。さらに充実した『感情類語辞典[増補改訂版]』が皆さんの執筆のお役に立てることを願う。

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感情類語辞典[増補改訂版]

アンジェラ・アッカーマン/ベッカ・パグリッシ=著
滝本杏奈/新田享子=訳
発売日 : 2020年4月14日
2,000円+税
A5判・並製 | 324頁 | 978-4-8459-1922-2
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