ためし読み

『北欧式インテリア・スタイリングの法則』

世界各国語版が刊行されているインテリアの新たなバイブル『北欧式インテリア・スタイリングの法則』。本書では、スウェーデンの人気インテリアデザイナーが、インテリア・スタイリングの秘訣を、図解とともにわかりやすくアドバイス。インテリアにまつわる基本メソッドをこれ1冊で学ぶことができます。家で過ごす時間が増えている今だからこそ、自分の部屋をくつろげる雰囲気で暮らしやすいインテリアにしたいあなたへ、活用できるヒントに満ちた1冊です。
今回のためし読みでは、著者フリーダ・ラムステッドによる序文「心地よい家をつくるために」を公開いたします。

心地よい家をつくるために

あなたがいま手にしたこの本は、わたし自身が長年探しつづけてきたものです。何百冊もインテリアの本を読み、図書館にも行き、蚤の市では古い文献を、ネットでは外国の本を取り寄せてきました。でもどれも、豪華な邸宅やインテリアの写真ばかり。普通の住まいのための具体的なアドバイスはほとんど見つかりませんでした。

わたしがずっと探し求めてきたのは、インテリアの基礎知識の本でした。家具やスタイルの好みに関係なく、誰でも活用できる経験則やヒントを詰めこんだ本。あれこれ新しく購入したり、壁を壊してまでリノベーションしたりしなくても、家全体の印象をがらりと変えてくれるような小さなコツ──それを教えてくれるような本です。

プロのインテリアデザイナーやコーディネーター向けの本には、家づくりの指針や人間工学エルゴノミーに基づいた寸法をまとめたものがあります。でも、一般向けの本は見つかりませんでした。自分の家を「マイホーム」にするときに頼りたい本。他人の家の写真を見てインスピレーションをもらうのではなく、わたし独自のアイデアを生み出すのに役立つ本がほしかったのです。

数年前、古いアパートメントから新築のタウンハウスに引っ越しました。そこは機能的ではあるけれど、直線が多くて個性に欠ける家でした。そこで「普通の家」ならではのインテリアの課題に直面するようになったのです。天井が高いわけでもないし、古い家屋のような情緒もない。どうすればいいのか──わたしは行きづまりました。憧れていたような温かでくつろげる雰囲気を出すことができなくて。プロのインテリアスタイリストとして数々の有名企業と仕事をしてきたのに、自分の家をスタイリングするとなると予想以上に難しく、いらいらすることもたびたびでした。苦労しましたが、プロとしても個人としても、インテリアを新しい目で見つめなおすきっかけになりました。全体の調和がとれていて、くつろげる雰囲気で、暮らしやすいインテリア。どうすればそれができあがるのでしょうか。

感じたことをメモに書きとめながら、自分にどんな基礎知識が欠けていたかがわかってきました。それをまとめたものが、本書『北欧式インテリア・スタイリングの法則』(原題:インテリアとスタイリングのハンドブック)。インテリア業界のプロや建築の専門家向けではなく、あくまで一般向けの内容です。業界のプロにはたくさん質問をして、さまざまな問題に直面したときに、「どのように考えればいいのか」がわかってきました。専門教育を受けたインテリアデザイナーやスタイリストがもつ「直感」を言語化し、実際に使えるアドバイスに生まれ変わらせたのです。

もちろん、インテリアには正解も不正解もありませんし、科学的根拠などめったにありません。結局は好みによるところが大きいのですから。でも、経験則や暗黙の了解のようなルールがたくさん見つかりました。行きづまったらそれを参考にすればいいのです。ただし、知らなければ参考にはできません。

わたしがつくろうとしたのは、そういったアドバイスやテクニックをすべて一冊にまとめた本です。プロが「直感」と呼ぶものを、もっと具体的で実用的なルールやテクニックに翻訳すること。あなたやわたしが、自信をもって決断できるように。この本を読んだあと、あなたがインテリアを新鮮な目で見られるようになったら、これほど嬉しいことはありません。そのアプローチをあなただけの空間に取り入れ、「家を快適にするには何が必要なのか」に簡単に気づけるように。

絶対音感がなくても、楽譜どおりに弾ければいい!

わたしはよく、インテリアデザインを音楽にたとえます。誰もが絶対音感をもっているわけではないけれど、楽譜を見れば演奏できる人は大勢いますよね。色や形やインテリアもそれと同じ。イメージどおりのインテリアを完成させられる直感を生まれもった人は少ないけれど、基礎を学んでスキルを身につければ、誰でもすごく上手になれるんです。

いまの時代、インテリア好きな人たちはインテリアやデザインの知識をふんだんにもっています。有名アイテムや家具、トレンドなどを熟知していると言えばいいでしょうか。寝起きでも、ブランドや有名なインテリアプロダクト、今期のトレンドカラーをそらで言えるくらい。一方で、インテリアデザインやスタイリングのごく基本的な部分についてはあまり知られていないような気がします。バランスのとり方やカギになる寸法、実用性を考えると必要なものは? 日々アイテムを購入したり取り替えたりしていますが、どうすれば機能的かつ調和のとれた家がつくれるのか。これだけお金をかけてものを買ったり改装したりしているのに、全体をうまくまとめられたと思える人は驚くほど少ないのです。

この本は、スタイリングされた部屋の写真が光沢紙に印刷されているわけではありません。こういう本は、一冊あれば十分。あなたが自分で、「わたしだけの家」のアイデアを思いつけるように、説明とイラスト入りの教科書に仕上げました。

何をスタイリングするかだけでなく、どのように・・・・・スタイリングするのか。これからはそれにシフトしましょう。わたしが提供するのは、あなたが自分で考えるためのツールボックスです。スタイリストのようにニーズを把握し、現状に満足できないなら何が欠けているのか、間違っているのかに気づくことができるように。この本は研究レポートでも解答集でもありません。調和のとれた心地よい家をつくるために、あなたが好みどおりに組み合わせられるメロディーと和音をつめこんだ楽譜なのです。

(ぜひ本編も併せてお楽しみ下さい)
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北欧式インテリア・スタイリングの法則

フリーダ・ラムステッド=著
久山葉子/机宏典=訳
発売日 : 2020年12月10日
2,400円+税
B5変形・並製 | 240頁 | 978-4-8459-2008-2
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