「書き出し」で釣りあげろ

1ページ目から読者の心を掴み、決して逃さない小説の書き方

レス・エジャートン=著
倉科顕司/佐藤弥生/茂木靖枝=訳
発売日
2021年11月26日
本体価格
2,000+税
判型
四六判・並製
頁数
304頁
ISBN
978-4-8459-2105-8
Cコード
C0090

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はじまりよければ全てよし!

小説の「書き出し」に特化した唯一無二の物語執筆術、ここに登場。

トルーマン・カポーティ、レイモンド・カーヴァー、ガブリエル・ガルシア゠マルケス、ロバート・A・ハインライン……
一流の作家から小説のはじめかたを学べば、もう躓かない!

名作に共通する揺るぎない事実。それは「書き出し」がすぐれている点です。

やっとの思いで書き上げた作品なのに、文学賞に応募しても審査を通過しない、小説投稿サイトでアクセスが伸びない、同人誌を作ったものの手にとってもらえない……もしかしたら大多数の読者や編集者は、最初の数行で読むことを止めてしまっているのかもしれません。

本書では、オープニングシーンを構成する10の要素を細かく分析するだけでなく、レイモンド・カーヴァーやガブリエル・ガルシア゠マルケスといった一流の作家たちによる多種多彩な作品を例に、その書き出しのどこがどのようにすぐれ、なぜ読者を惹きつけるのかを具体的に解説していきます。また、きっかけとなる出来事を作りあげるための詳細な手順や、バックストーリーを詰めこみすぎるといったよくある失敗を避けるコツ、オープニングシーンの適切な長さや場面転換の方法、登場人物の紹介や伏線の張り方に加え、多数の出版エージェントや編集者からのアドバイスも聞くことができます。

名作の書き出しのみを集めた書籍や特集などはあるものの、具体的に何をどう書けば良い作品になるのか、オープニングがどれほど重要な意味を持つのかを詳細に説いた書籍はこれまでありませんでした。本書では、読者が思わず唸る物語の書き出し方について指南する、唯一無二にして絶対的な一冊と言えるでしょう。

書き出しの一文から読者を引き込み、思わず最後まで読んでしまう物語の書き方を伝授した、ありそうでなかった「はじまり」の書き方指南書です。

【読者の心を掴む「書き出し」実例】

「最初の弾丸が胸に当たった瞬間、わたしは娘のことを考えた」
(ハーラン・コーベン『ノー・セカンドチャンス』上巻、山本やよい訳、ランダムハウス講談社、2005年)

「行ってみたら、またしても連中はライオンを裏庭に埋めていた」
(リチャード・ブローティガン「庭はなぜ要るのか」、『芝生の復讐』所収、藤本和子訳、晶文社、1976年)

「『脳死状態です』と医師は言った」
(リチャード・セルツァー「Whither Thou Goest(未)」)

「昨日の夕方、六時のバスがミス・ボビットを轢いた」
(トルーマン・カポーティ「誕生日の子どもたち」、『誕生日の子どもたち』所収、村上春樹訳、文藝春秋、2002年)

「シーツは汚れていた。六〇年代後半のインディアン公共医療病院」
(シャーマン・アレクシー『インディアン・キラー』、金原瑞人訳、東京創元社、1999年)

「その日の朝、彼女はティーチャーズを私のおなかにこぼして、それをべろべろ嘗める」
(レイモンド・カーヴァー「ガゼボ」、『愛について語るときに我々の語ること』所収、村上春樹訳、中央公論新社、2006年)

 

後半から面白い作品は、そこまで誰も読み進めてはくれません。数ヶ月、数年かかった力作、大切な作品だからこそ書き出しで読者に見限られたくない。そんな不安を払拭させてくれる必読書です。
肥前文俊 (ライトノベル作家/「書き出し祭り」主催)

のんびりとした書き出しは、最近の読者には受け入れられません。どんなものを書いてもファンが買ってくれるような有名作家や、シリーズ物の続編であれば、待ち望んでいた人がいて、スピード感がない書き出しでも辛抱強く読んでくれるかもしれませんが、それ以外の本では、読者にそのような我慢強さを期待することは難しいでしょう。また、長編小説であれば、ゆっくりとしたテンポの書き出しが受け入れられることもありますが、短編小説では、まずありえません。(本文より)

メディア掲載


目次

序文 書き出しはきわめて重要

イントロダクション なぜ「書き出し」の本なのか
書き出しの定義

第1章 ストーリー構成とシーン
ストーリー構成の進化
現代のストーリー構成
シーンの基礎――初級編
オープニングシーン対それ以外のシーン
プロローグ

第2章 書き出し――そのあらまし
書き出しを構成する要素
書き出しの目的
よくなると思えた書き出しがうまくいかなくなるのはなぜか

第3章 きっかけとなる出来事、最初の表層の問題、核心の問題
きっかけとなる出来事
引き金としてのきっかけとなる出来事
核心の問題と表層の問題
ストーリーの問題と目的を作る
小説はいくつの問題を含むべきか
登場人物が核心の問題に気づく
内なる悪魔:核心の問題を探し出す

第4章 設定とバックストーリー
設定
バックストーリー
書き出しの設定とバックストーリーのバランス

第5章 構成要素を結びつけていく
重要な要素をつなぎ合わせる
すぐれた書き出しを解体してみる
自分の作品にまとめる

第6章 登場人物を紹介する
まず登場人物を確立させる
風変わりな登場人物による書き出し
登場人物の心の声ではじめる

第7章 伏線、ことばづかい、舞台背景
書き出しを伏線として使用する
書き出しでのことばの節約
書き出しで舞台背景を紹介する

第8章 はじまりの文章で心をとらえる

第9章 避けるべき書き出し
注意信号その一 夢ではじまる
注意信号その二 目覚まし時計が鳴っている
注意信号その三 意図していない笑いを呼ぶ
注意信号その四 会話が少なすぎる
注意信号その五 会話ではじまる

第10章 書き出しの長さと場面転換の方法
書き出しの長さを決める
書き出しに求められること
場面を切り替えてオープニングシーンを確立する

第11章 出版エージェントと編集者からのアドバイス
ブックスキャンの威力
進化する出版業界
出版エージェントと編集者からのアドバイス

エピローグ ゲームを進めよう

プロフィール

[著]
レス・エジャートン(Les Edgerton)
アメリカ、テキサス州生まれ。作家。短編小説や長編小説だけでなく、エッセイや脚本なども執筆し、これまでに『The Death of Tarpons』『Monday’s Meal』『The Rapist』といった小説を刊行している。小説家として、プッシュカート賞、オー・ヘンリー賞、エドガー・アラン・ポー賞(短編部門)などにノミネートされた実績を持つ。また、作家志望の人に向けた本も執筆しており、小説の指南書として本書『「書き出し」で釣りあげろ』のほかに『Finding Your Voice』も発表している。加えて、野球に関する著書も持つ。

[訳]
倉科顕司(くらしな・けんじ)
大阪府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。国内メーカーで宣伝担当として勤務後、映画配給の手伝いなどをおこなう。その後、翻訳家の越前敏弥に師事し、翻訳の仕事にたずさわる。協力した書籍に『世界物語大事典』(三省堂)などがある。本書では、第3章、第6章、第11章の翻訳を担当。

佐藤弥生(さとう・やよい)
東京都生まれ。幼少期を返還前の香港で暮らす。商社などの勤務を経て、国内メーカー、在日米海軍などで20年以上技術翻訳に携わる。訳書に『スター・ウォーズ スーパーグラフィック』『アメコミ・ヒーロー スーパーグラフィック』『映像編集の技法』(フィルムアート社/共訳)など。本書では、第2章、第5章、第8章、第9章、第10章の翻訳を担当。

茂木靖枝(もぎ・やすえ)
東京都生まれ。ロンドンで英語とコンピューターを学ぶ。金融系システム会社などの勤務を経て、現在は翻訳業と会社員を兼務。訳書に『アテンション』(飛鳥新社/共訳)、『スター・ウォーズ スーパーグラフィック』『アメコミ・ヒーロー スーパーグラフィック』『映像編集の技法』(フィルムアート社/共訳)など。本書では序文、イントロダクション、第1章、第4章、第7章、エピローグ、謝辞の翻訳を担当。