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まなざしのエクササイズ

ポートレイト写真を撮るための批評と実践

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「人間を撮る」とはどういうことか?

ポートレイト写真は、写真史の中でも古くから人々の関心を集めてきたジャンルの一つである。本書では、ポートレイトの特徴である「対象を見る」という行為にスポットを当て、それぞれの写真家が被写体へ向けた視線を分析していく。また、多くの思想家や哲学者の言葉を交えた解説が展開され、読者は豊富な作品例を身近に感じながら、技術的知識に加え、批評的・歴史的視点を吸収することができる。

■ 横溝静による解説付
■ 120点におよぶ歴史的ポートレイトを掲載!

──
アンリ・カルティエ=ブレッソン、アウグスト・ザンダー、ロバート・フランク、ウィリアム・クライン、ゲルハルト・リヒター、ウタ・バース、ボリス・ミハイロフ、シンディ・シャーマン、ジェフ・ウォール、リー・フリードランダー、ナン・ゴールディン、ゲイリー・ウィノグランド、リチャード・アヴェドン、トーマス・ルフ、森村泰昌、横溝静……

この本に掲載されている写真の数々は当然、被写体の存在、つまりレンズの向こう側にいる人物に注意を向けているという点で一致している。しかし実は、同じくらい重要な要素として、もう一つ別の何かがそこには存在している。それは写真のわかりやすい主題とは距離を置くものでありながら、最終的にはその写真に命を吹き込む役割を果たすものだ。
この何か、写真のなかに息づいている特性とは「誰かが見ている」という行為の感覚であり、写真のなかに埋め込まれた写真家自身の存在そのものなのだ。
──序文より

CONTENTS

はじめに
この本を最大限に活用するために
第1章 見るということ
ポートレイトは写真家の意見である──リチャード・アヴェドン
解釈を求める写真──ジュリア・マーガレット・キャメロン
二つの視線の交差──シンディ・シャーマン
課題1
第2章 セルフ・ポートレイト・・・顔無し
ポートレイトは「仮面」を写していた──ダゲレオタイプ
強い感情を表す──イポリット・バヤール
顔が感情を視覚化する──『人間の表情のメカニズム』
鏡としての写真──リー・フリードランダー
構成とディテールの緊張──ジョン・コプランズ
風景の中のアイデンティティ──ジョー・スペンス
ベールに包まれた被写体──シリン・ネシャット
写真というあいまいなテクスト──ロラン・バルト「作者の死」
写真はつねに被写体と違って見える
課題2
第3章 周縁の人々・・・フレームのエッジ
フレームのエッジを利用しよう
スタイルが内容を伝える──ジェイコブ・リース
「決定的瞬間」──アンリ・カルティエ=ブレッソン
イメージを封じ込めるフレーム──ゲイリー・ウィノグランド
ドキュメンタリー写真についてのノート
ドキュメンタリー写真は事実を写す?
犠牲者の不在──レイフ・クラーソン
過剰なものが示す社会性──ボリス・ミハイロフ
課題3
第4章 瞬間的な振る舞い・・・出来事に満ちた状態を撮る
写真的な出来事はどこにある?
細部によって出来事への見方を変える──ウィージー
確かめられない真実──ロバート・フランク
無防備な一瞬のバランス──ヘレン・レヴィット
社会/視覚の三角形──ジェフ・ウォール
仮構された透明性
課題4
第5章 スパイせよ・・・のぞき見と監視
のぞき見
対象と距離をとり、そして所有する──メリー・アルパーン
男性のヌードをのぞき見る──ダイアン・ベイリス
目利きののぞき屋──ラルフ・ギブソン
あけすけな光景との距離──ダニエラ・ロッセル
監視
空っぽの監視塔──パノプティコンと「作者の死」
客観性によって個性を表す──ウォーカー・エヴァンス
人目につかないための技術──ハリー・キャラハン
プライベートに立ち入るカメラ──ケビン・バーブスキー
距離と親密さを持つ対面──横溝静
遠くからストレートに見る──ベアト・ストロイリ
課題5
第6章 ポートレイト、鏡、仮面
被写体のアイデンティティを記録する──シャルル・ボードレール
「女性のトラブル」──ジュディス・バトラー
構築された「女性」──マネ《オランピア》
アイデンティティの二重化──森村泰昌
鏡の反射による飛躍──ニッキー・リー、森万里子
ナルシシズムによる抵抗──ライル・アシュトン・ハリス
嘘と真実を置き換える──マーク・モリスロー
真実とパフォーマンスの緊張──キャサリン・オピー
マスクの内側──ローナ・シンプソン
課題6
第7章 対峙・・・的の中心を射抜くまなざし
構図を放棄し、被写体の力をひきだす──オイゲン・ヘリゲル『弓と禅』
静かな精神状態で対象をつきつける──山中学
時間を固着させる──アウグスト・ザンダー
見えない仮面をかぶる被写体
「作者性のない」写真──ウォーカー・エヴァンス
まなざしの演劇──ダイアン・アーバス
肖像の冷徹さ──トーマス・ルフ
絵画への疑念と信頼──ゲルハルト・リヒター
不確かな絵画としての写真
被写体がアイデンティティを示す場所──リネケ・ダイクストラ
支配権をめぐる綱引き
背景についてのノート──セイドゥ・ケイタ、フィリップ・クワメ・アパギャ
課題7
第8章 ピンぼけ・・・消えていく被写体
焦点について再考する──ウィリアム・クライン
表面による内面の描写──アルフレッド・スティーグリッツ
ローテクのカメラによるフェミニズム──ナンシー・レクスロス
私たち自身のポートレイト──ウタ・バース
鮮明さを取り払い、感情を撮影する──リチャード・ビリンガム
課題8
第9章 暗闇を捉える
光のない場所で写真を撮るには
誰が誰を見ているのか?──ゲイリー・シュナイダー
制作プロセスの痕跡
まなざしの交換を問い直す──SWP、ステファン・ドミンゲス
純粋に視覚的な写真──マリー・エレン・マーク、ニコラス・ニクソン
存在の条件としての暗闇──ジョエル=ピーター・ウィトキン
カメラの動作についてのノート
テクノロジーが規定する写真の文法
暗室の中での介入
課題9
第10章 フラッシュ!
フラッシュの効果
見知らぬ被写体を浮かび上がらせる──マーク・コーエン
政治的感覚を表現する光──チョーンシー・ヘア
暮らしの質感を転写する──ルシアン・ブラウン
フラッシュと環境光のあいだの技術的問題
オープンフラッシュによって瞬間を重ねあわせる──ブルース・ギルデン
フラッシュをうっかり光らせてしまった?──ビル・バーク
ミステリーの感覚を生み出す強調──グレゴリー・クリュードソン
ドラマチックな照明による演出──フィリップ=ロルカ・ディコルシア
課題10
第11章 風景の中の人物・・・タブロー
過去、現在、未来が合体した瞬間──アウグスト・ザンダー
唐突さを失った出来事──ジョエル・スターンフェルド
風景の周縁部
歴史画としての風景写真──ジェフ・ウォール
家族と友人たち
分解される家族たち──ティナ・バーニー
被写体と写真家のコラボレーション
批評的な距離を保つ──バーバラ・ノーフリート
家族の神話への痛切なステートメント──ラリー・サルタン
イメージの所有権をめぐる戦い
課題11
第12章 デジタルの可能性
写真の物質的効果──ロラン・バルト『明るい部屋』
デジタル・ボディ
自然と人工とのあいだの肉体──アジズ+クッチャー
「人類」は99.97%は同じ──ナンシー・バーソン
イメージの多重化──キース・コッティンガム、トーマス・ルフ
写真の歴史の終わり?
絵画のような戦場写真──ジェフ・ウォール《死んだ兵士たちの語らい》
分裂する瞬間の不協和音
付録
A・・・カメラとカメラのコントロール
B・・・露光と計測
C・・・フラッシュの使用について
謝辞
解説 横溝静
訳者あとがき
さらに理解を深めるための文献紹介

PROFILE

■著者 ロズウェル・アンジェ (Roswell Angier)
1940年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校で比較文学の博士号取得を目指していた60年代に写真に目覚めた。それ以来、写真家として、また教育者として実りの多い人生を過ごしてきた。これまでに手がけたプロジェクトには、かつてコンバットゾーンと呼ばれたボストン繁華街のストリップクラブをテーマにした写真集、そしてアメリカ南西部にあるナバホインディアン保留地の境界付近の町におけるストリート・ライフをテーマにしたシリーズなどがある。彼の写真は多くの個人や公共機関によってコレクションされている。主な収蔵先は、ボストン美術館、スミソニアン美術館、アディソン美術館、フォッグ美術館など。現在は取り扱いギャラリーのGitterman Gallery(NY)で作品を発表しつつ、ボストン美術館芸術大学で教鞭をとっている。

■訳者 大坂直史 (Naofumi Osaka)
1972年広島生まれ、東京在住。都内の現代美術のギャラリー、ワコウ・ワークス・オブ・アート、ディレクター。現代美術の普及活動の一環として、展覧会カタログや評論、インタビューの翻訳や、子供たちへのレクチャーなども行なっている。訳書に『ローラ・オーエンス』(資生堂ギャラリー)、『フィオナ・タン 客人』『ヘンク・フィシュ 自らを救った男』(ワコウ・ワークス・オブ・アート)などがある。

まなざしのエクササイズ
ポートレイト写真を撮るための批評と実践

ロズウェル・アンジェ=著│大坂直史=訳

  • A5判│432頁│定価 3,200円+税│ISBN 978-4-8459-1206-3

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