誰も教えてくれなかった「推敲ってどうやるの?」という大事な問いに対する答えがここに!
「推敲」は決しておざなりの作業ではなく、それ自体がひとつの創作法なのだ。
推敲のスキルを身につけたものだけが、欠点を長所に、及第点から傑作へ、没原稿を受賞作へと変えることができる。
一歩差をつける推敲の方法を、この一冊で完全解説!
自分の書いたストーリー(小説や脚本)について、正直に自己評価できる人は多くありません。
没になった作品に対して、「タイミングが悪かった」「運が悪かった」「正当に評価してもらえなかった」といいわけをしていないでしょうか。しかし、ほとんどの場合、もっと深刻な理由であなたの作品は没になっているのです。
まず、失敗の原因や理由を知ること。
そして創作の基礎として使える知識を身につけ活用すること。
「作品のコンセプトは何か? プレミス(前提)は何か? テーマは何か? 作劇上の緊張はどこにあるのか?」
本書では、ストーリーに必要な要素とポイントを12項目提示して、そのアイデアの理解度とうまく活用できたかというストーリーの成功度をくりかえしチェックすることが大事であると説きます。
チェックすべきストーリーの12の要素
1 コンセプト(コンセプトになるものがあるかどうか)
2 ドラマの前提(プレミス)/起伏(アーク)(主人公の探求と目的)
3 ドラマの緊張感(テンション)(対立要素による衝突・葛藤)
4 読者の疑似体験
5 求引力ある人物像
6 読者の感情移入(読者が気になるもの)
7 テーマの重み・妥当性・共鳴
8 効果的なストーリーの組み立て(構成)
9 最適なペース配分
10 シーンの完成度
11 文体
12 語りの戦略
まずチェック項目に沿って自己採点をし、その後本書内で提示されたスキルやツールを使ってストーリーの欠点を修正します。そのプロセスを経ることであなたの作品は確実にワンランク上のものへと変身します。
また、実際に著者が相談を受けた実例をもとに、どのように推敲をするべきかというプロセスがわかるように、ケーススタディも収録されています。
あと一歩で悩んでいる人が本当に必要としている推敲のノウハウをこの一冊で完全網羅。
著者は「あなたのストーリーは物語る価値があるのか?」という問いに真摯に向き合ってほしいと述べています。
うわべだけの「夢は叶う」といったような言説から距離を置き、プロの作家とはどのようなものか、プロになるためにどれだけの努力が必要なのかという現実を知ることで、プロの作家として「売れる」小説を書く力を身につけることができるのです。
推敲というプロセスを経ることで、作品はもちろん作家としての自分自身をも作り直すことができるのです。
唯一無二のストーリー推敲の教科書がついに刊行!
つまりこの本は、作品を「推敲」する際に元々の出来をうまく捉え直して、それまでの労力を再利用しながらそいつをうまく黄金に換えようという話だ。ただ文章そのものを技術レベルで改善するんじゃなくて、何かもっと深いものや力強いものを生み出してやろうという考えで推敲に取り組めば、本当にすばらしいものができあがってくる。
逆に、失敗から何も学ばなかったり、失敗の本質やどうしてそうなったかをしっかり理解していなかったりすると、自己創作のパラドックスに陥ってしまう。このパラドックスの部屋には、まずもって失敗の原因や理由がわかっていない没原稿の書き手たちがうようよいる。
こういう書き手はえてして、タイミングが悪かったとか、運が悪かったとか、正しく評価してもらえなかったとか言って、失敗を見ないふりする。でもほとんどの場合、もっと深刻な理由で没になっているんだ。
自分の作品がどう受け取られるかは完全にコントロールできないけれど、創作の基礎として使える知識を自分がどう身につけて活用するかはいくらでもコントロールできる。うまく推敲するためには、高度な知識を学んで実践しながら、上達のきっかけになる具体的なフィードバックをストーリーに取り入れつつ、技わざと相関する学習曲線を伸ばしていくことが必要だ。時には個別のフィードバックもないままに、ふんわりした反応や、再三つっかえていた自分の疑念をもとに推敲しなければいけないこともある。
ストーリーがうまくいくときはたいていの場合、知識が何か形になって解釈できていること、つまりストーリーを「機能」させる全要素が自分で意識してわかっている点に負うところが大きい。ストーリーがうまくいかないのは、おおよそ書き手がそうした要素を知らないからだ。いやもっとひどいのは、無知よりも無視だ。たまたま立て続けに成功しているが実はほとんど何も「知らない」、というケースにもこれは当てはまる。
(本書「イントロダクション」より抜粋)
目次
まえがき―マイケル・ホージ
イントロダクション
第1章 まだストーリー修正には手をつけずに
1 推敲前にストーリー修正について知っておきたいこと
2 ストーリー修正の心構え
3 やらかしたミスは何だったか
第2章 さあ修復しよう
4 自分のコンセプトを補強する
5 前提(プレミス)の強化
6 何でも開けられる鍵
7 語りの筋力づくり その1
8 語りの筋力づくり その2
第3章 復活
9 失敗へようこそ
10 あなたのストーリーは救うだけの価値があるのか?
11 没から希望を紡ぐには
12 成功を選んでいく
第4章 罪滅ぼし
13 もうすぐ先生が診察に来ます
14 ケーススタディ1 コンセプトが消えてしまった場合
15 ケーススタディ2 脳が死ぬと他の部分もダメになる
16 ケーススタディ3 おおむねOKでも検査を受けよう
訳者あとがき
著者・訳者略歴
プロフィール
[著]
ラリー・ブルックス(Larry Brooks)
ベストセラーを含む六作品の心理スリラー小説をヒットさせたあと、物語創作のアドバイザーとしても活躍し、ウェブサイトStoryfix.comにて作家志望者へ役立つ情報を提供しながら、独自の観点から創作の秘訣を教える指南書も立て続けに刊行して好評を博している。本書は既刊『工学的ストーリー創作入門 Story Engineering』『物理学的ストーリー創作入門 Story Physics』に続く三作目。2019年には待望の新刊指南書『Great Stories Don’t Write Themselves: Criteria-Driven Strategies for More Effective Fiction』も登場して、作家を目指す人々
の期待に応え続けている。
[訳]
大久保ゆう(おおくぼ・ゆう)
フリーランス翻訳家。幻想・怪奇・探偵ジャンルのオーディオブックや書籍のほか、絵画技法書や映画・アートなど文化史関連書の翻訳も手がける。既刊訳書に、画集『コンプリート ワークス オブ ドゥルー・ストゥルーザン』『アート オブ ロバート・マッギニス』、テリル・ウィットラッチ『幻獣と動物を描く』『幻獣デザインのための動物解剖学』『幻獣キャラクターを創る』(マール社)、『H・P・ラヴクラフト 朗読集1〜3』(パンローリング社)などがある。