マスターズ・オブ・ライト[完全版]

アメリカン・シネマの撮影監督たち

デニス・シェファー/ラリー・サルヴァート=編
髙間賢治/宮本高晴=訳
発売日
2023年1月26日
本体価格
3,500円+税
判型
A5判・並製
頁数
560頁
ISBN
978-4-8459-2108-9
Cコード
C0074
刷数
2刷
デザイン
戸塚泰雄(nu)
原題
Masters of Light: Conversations with Contemporary Cinematographers

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フィルム撮影の黄金期を駆け抜けた撮影監督たちによる貴重な証言集
世界中で愛読される伝説的名著、完全版で待望の復刊!

1988年に刊行された『マスターズ・オブ・ライト アメリカン・シネマの撮影監督たち』(原著『Masters of Light』[1983年刊、2013年新版刊])は、撮影技術を学ぶ世界中の学生、キャメラマン志望者、プロの撮影監督たちのバイブルとして今日まで読み継がれています。

最初の邦訳以来、約35年の時を経て、旧版では未収録だったビル・バトラー(『ジョーズ/JAWS』)、コンラッド・ホール(『明日に向かって撃て!』)、マリオ・トッシ(『キャリー』)、ビリー・ウイリアムズ(『ガンジー』)の章に加え、新たにジョン・ベイリーによるまえがき「新版によせて」を収録した「完全版」として復刊。アメリカン・ニューシネマ以後の”映画撮影術の黄金時代”を彩る総勢15名の撮影監督たちの証言は、フィルム撮影の真価が見直されつつあるデジタル全盛の今日においてこそ、新たに読まれ直されるべき知見に溢れています。

本書で語られるのは、キャメラという装置の技術的な問題ばかりではありません。60〜80年代のハリウッド映画の制作現場におけるシナリオの問題、俳優の演技、監督による演出・演技指導に対し、撮影を統括する撮影監督はいかに向き合ってきたのか。本書は「撮影」に焦点を当てた、超一流カメラマンたちの実体験に基づくハリウッドの映画制作をめぐる貴重な証言集でもあります。

1900年代後半における撮影技術の進化と変化、制作現場での様々な出来事、そこに眠る秘密を読み進めることは、映画史を学ぶ学生や若きキャメラマン志望者ばかりでなく、すべての映画ファンにとってのめくるめく冒険となるでしょう。

翻訳を手がけるのは初邦訳時と同じく、同時代のアメリカにわたり本書にも登場する撮影監督たちの現場に立ち会った髙間賢治氏、『サイレント映画の黄金時代』(国書刊行会)など多くの映画書を手掛ける宮本高晴氏。

【収録されている撮影監督と主な作品】 ◇は初収録
◆ネストール・アルメンドロス 『アデルの恋の物語』『天国の日々』『クレイマー、クレイマー』
◆ジョン・アロンゾ 『バニシング・ポイント』『チャイナタウン』『スカーフェイス』
◆ジョン・ベイリー 『アメリカン・ジゴロ』『キャット・ピープル』『再会の時』
◇ビル・バトラー 『ジョーズ/JAWS』『ロッキー2』『ジョン・カサヴェテスのビッグ・トラブル』
◆マイケル・チャップマン 『タクシー・ドライバー』『ラスト・ワルツ』『レイジング・ブル』
◆ウィリアム・フレイカー 『ローズマリーの赤ちゃん』『エクソシスト2』『透明人間』
◇コンラッド・ホール 『明日に向かって撃て!』『マラソンマン』『ボビー・フィッシャーを探して』
◆ラズロ・コヴァックス 『イージー・ライダー』『ペーパー・ムーン』『ゴーストバスターズ』
◆オーウェン・ロイズマン 『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』『トッツィー』
◆ヴィットリオ・ストラーロ 『暗殺のオペラ』『地獄の黙示録』『ラストエンペラー』
◇マリオ・トッシ 『キャリー』『ベッツィー』『マッカーサー』
◆ハスケル・ウェクスラー 『アメリカン・グラフィティ』『カッコーの巣の上で』『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』
◇ビリー・ウイリアムズ 『風とライオン』『黄昏』『ガンジー』
◆ゴードン・ウイリス 『ゴッドファーザー』『アニー・ホール』『スターダスト・メモリー』
◆ヴィルモス・スィグモンド 『ギャンブラー』『未知との遭遇』『天国の門』

テクノロジーはつねに登場と衰退を間断なく繰り返してきた。撮影現場において撮影者の仕事の根幹としてつねに変わらず必要なのは、創造的ビジョンと、問題解決のための洞察力であり、これが『マスターズ・オブ・ライト』のインタビューを貫く基本精神となっている。

本書所収のインタビューから読み取れる重要なことは、仕事上必須の計画性と規律性を備え持つことで当の作品にどうアプローチするかその方法が見えてくるということである。仕事の流れのなかで絶えず要求される探求、評価、修整を繰り返していくことによってキャメラの力学や撮影スタイルへのより深い考察が導かれていく。(ジョン・ベイリー「新版によせて」より)

メディア掲載


目次

新版 まえがき
新版によせて ジョン・ベイリー
旧版 まえがき

第1章 ネストール・アルメンドロス
リアリズムは想像力を超える

第2章 ジョン・アロンゾ
キャメラマンは監督の生きた道具であるべきだ

第3章 ジョン・ベイリー
映像スタイルを構築する審美家

第4章 ビル・バトラー
キャメラマンは子どものような眼を持つべきだ

第5章 マイケル・チャップマン
映画は神様が作るものだと思っていた

第6章 ウイリアム・フレイカー
ルックの一貫性を求めて

第7章 コンラッド・ホール
義務のごとくに映画の仕事をしたくはない

第8章 ラズロ・コヴァックス
被写体に命を吹き込む魔術師

第9章 オーウェン・ロイズマン
どうしても譲れないのは色の選択、パレットだ

第10章 ヴィットリオ・ストラーロ
色彩設計とキャメラワークの美学

第11章 マリオ・トッシ
最後の芸術形態としての映画撮影

第12章 ハスケル・ウェクスラー
ドキュメンタリーは社会変革の道具だ

第13章 ビリー・ウィリアムズ
すぐれた映画はクリエイティブな要素すべてが高いレベルで渾然とひとつになっている

第14章 ゴードン・ウイリス
映画界屈指の完全主義者

第15章 ヴィルモス・スィグモンド
ハリウッド・スタイルへの抵抗

訳者あとがき
撮影用語集
索引

プロフィール

[訳]
髙間賢治(たかま・けんじ)
1949年、東京都生まれ。1971年、東京都立大学経済学部卒業。在学中より若松プロにて撮影助手を始め、1976年、キャメラマンとして独立。1981年に文化庁芸術家在外研修制度により渡米。主な撮影監督作品に『月山』『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』『1999年の夏休み』『風の又三郎―ガラスのマント』『渋滞』『就職戦線異状なし』『12人の優しい日本人』『高校教師』『シュート!』『白い馬』『ラヂオの時間』『ナビィの恋』『みんなのいえ』『ホテル・ハイビスカス』『アイデン&ティティ』『Life on the Longboard』『デスノートthe Last name』『真木栗の穴』『春との旅』『JAZZ爺MEN』『漫画誕生』『山中静夫氏の尊厳死』『一粒の麦―荻野吟子の生涯』『祈り―幻に長崎を想う刻』『REVOLUTION+1』など。著書に『撮影監督ってなんだ?』『シーナ映画とコーキ映画』(以上、晶文社)『撮影監督髙間賢治の映画撮影記』(玄光社)がある。

宮本高晴(みやもと・たかはる)
1952年福井県生まれ。英米映画関係の翻訳にたずさわる。主な訳書に『ワイルダーならどうする? ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話』(キネマ旬報社)、『スコセッシ オン スコセッシ 私はキャメラの横で死ぬだろう』(フィルムアート社)『王になろうとした男ジョン・ヒューストン』(清流出版)、『ロバート・アルドリッチ大全』『ルビッチ・タッチ』『サイレント映画の黄金時代』(いずれも国書刊行会)など。