「映画を作るというのは、混沌を整頓しようとしながら、同時に新しい混沌を生み出してしまうことなのです」
ポップかつシニカル、そして大胆な脚本。キャッチーな色彩とディテールで構築されたセットや小道具の数々。精巧な構図とカメラ移動で生み出されるマジカルな空間演出。そしてひとクセもふたクセもありながら誰もが愛さずにはいられない登場人物たち……。
日本国内のみならず世界中に熱狂的な信者を持つウェス・アンダーソン。
この一人の芸術家をめぐり、最新作『フレンチ・ディスパッチ』を含むその全てを総括する評伝がついに刊行!
長編デビュー作『アンソニーのハッピー・モーテル』から『フレンチ・ディスパッチ』まで、素晴らしくも困惑に満ち、個性的かつ一点の汚れもないような10本の映画たちを監督したウェス・アンダーソン 。監督作品のその優れた作家性のみならず、ファッション、音楽、美術、など彼の作品をとりまくディテールは多くの人を魅了する。
本書では、長編監督作はもちろん、『ホテル・シュヴァリエ』『カステロ・カヴァルカンティ』といった短編全作をカバーし、さらには監督が影響を受けた人物や映画作品、プライベートな交友関係についても紹介。あますことなくウェス・アンダーソンの「人生」を詰め込んだ1 冊となっている。
ウェス・アンダーソンの作品に絶妙な親しみやすさを与えているのは、他の誰の映画とも違うという事実に他ならない。 コーデュロイのスーツから、ABC順に整頓された本棚から、アート映画への参照から、アナグマに扮したビル・マーレイに至るまで、彼の映画は彼自身の人生の、そして人格の延長なのだ。
各作品の原点をたどり、インスピレーションの源を探り、どのような過程を経て作品が生まれているのか。多くの美しい場面写真やオフショットとともに、その知られざる神秘を紐解いていく。
メディア掲載
目次
イントロダクション
1. 『アンソニーのハッピー・モーテル』(1996)
2. 『天才マックスの世界』(1998)
3. 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)
4. 『ライフ・アクアティック』(2004)
5. 『ダージリン急行』(2007)
6. 『ファンタスティック Mr.FOX』(2009)
7. 『ムーンライズ・キングダム』(2012)
8. 『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)
9. 『犬ヶ島』(2018)
10. 『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2021)
プロフィール
[著]
イアン・ネイサン(Ian Nathan)
映画ライター。著書に『クエンティン・タランティーノ 映画に魂を売った男』(フィルムアート社)『エイリアン・コンプリートブック』『スティーヴン・キング 映画&テレビ コンプリートガイド』(以上、竹書房)『ティム・バートン 鬼才と呼ばれる映画監督の名作と奇妙な物語』(玄光社)などがある。映画雑誌『エンパイア』の編集者およびエグゼクティブ・エディターを務めた後、現在は『エンパイア』誌のほか、『タイムズ』紙、『インディペンデント』紙、『メイル・オン・サンデー』紙、『カイエ・デュ・シネマ』誌などに寄稿を行っている。
[訳]
島内哲朗(しまうち・てつろう)
映像翻訳者。字幕翻訳を手がけた主な劇映画には「朝が来る」「大怪獣のあとしまつ」「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」「海辺の映画館―キネマの玉手箱」「AI崩壊」「護られなかった者たちへ」「さがす」「キングダム」「スマホを落としただけなのに」「愛のむきだし」「チワワちゃん」「野火」「サウダーヂ」「GANTZ」「忍たま乱太郎」等がある。翻訳した書籍には、フランク・ローズ『のめりこませる技術 誰が物語を操るのか』、カール・イグレシアス『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』『脚本を書くための101の習慣 創作の神様との付き合い方』、シーラ・カーラン・バーナード『ドキュメンタリー・ストーリーテリング[増補改訂版]』、ジェシカ・ブロディ『Save the Catの法則で売れる小説を書く』(以上、フィルムアート社)等がある。