脚本、演出、撮影、編集、製作……
時代を揺るがす作品はいかにして生まれるのか?
──第一線の映画人たちから学ぶ。
何かを作る上でわからないことがあるというのは強い動機になる。わかってることを訴えたいっていうより、わからないからこそもっと知りたいっていう姿勢の方が、面白い。
──是枝裕和
多彩な映像制作者たちをゲストに、実作にまつわる様々な事柄、あるいはそのために必要とされる思考が、教員・学生との対話の中で語られる早稲田大学の人気講義「マスターズ・オブ・シネマ」。本書は2018〜2022年度の講義回から構成した一冊となります。制作の準備について、現場での実際について、スタッフと俳優との関係について、フィクションとドキュメンタリーについて、テレビと映画の横断について等々、映画制作におけるさまざまなテーマを通じて、映画がいま、いかに生み出されつづけているかを解き明かします。
より良い作品をつくりあげるために、実作者たちは何を考え、何を実行し、何を選択するのか。
その声に耳を傾けることで、映像をめぐる創作活動の本質についての思考を垣間見ることができます。
映像制作を志す学生に限らず、現役クリエイター、あるいはそれぞれの映画作品のファンにまで、21の対話を通して「いま、映画をつくる」ということの意義と可能性を探るために、必読の一冊です
[対話ゲスト]
青山真治/芦澤明子/大九明子/大友啓史/大林宣彦/奥寺佐渡子/菊地健雄/岸善幸/空族(富田克也+相澤虎之助)/黒沢清/周防正行/諏訪敦彦/関弘美/想田和弘/冨永昌敬/中島貞夫/西谷弘/深田晃司/丸山昇一/三宅唱
メディア掲載
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キネマ旬報 2023年7月上・下旬合併号で書評が掲載されました! (評者:森直人さん)
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産経新聞 2023年4月9日号で短評が掲載されました!
目次
[座談会]映画について教えるということ──講義「マスターズ・オブ・シネマ」について 是枝裕和・土田環・岡室美奈子・谷昌親・藤井仁子゠談
Ⅰ 言葉で描く、言葉を撮る──脚本という息吹
◎非日常を描くためには、どのくらい日常が書けているかが勝負だ 丸山昇一(脚本家)
◎出来事を、同じ空間で見ているという意識で、書く 奥寺佐渡子(脚本家)
Ⅱ 映画撮影という労働──撮影現場で起きていること
◎カメラに記録されたいい瞬間を残したい 三宅唱(映画監督)
◎すべてに答えを用意せずに現場に挑む 菊地健雄(映画監督)
◎自分の生活の何かを映画の中に置いておきたい 青山真治(映画監督)
◎一〇〇年後も色褪せないものを 芦澤明子(撮影監督)
Ⅲ 俳優と作劇──登場人物とは誰か
◎「ダメ」から「バカ」へ──登場人物の変身と映画をはみ出すこと 冨永昌敬(映画監督)
◎映画と現場を開かれたものにする 深田晃司(映画監督)
◎忠実と誠実──原作や登場人物たちにどう向き合うのか 大九明子(映画監督)
◎見知らぬ世界と出会ったときの驚きや喜びを忘れない 周防正行(映画監督)
Ⅳ 現実と虚構、時代と社会──ドキュメンタリー/フィクションの境域
◎観察の先に見える映画のありかた 想田和弘(映画監督)
◎僕らはフィクションに未来を託しているのかもしれない 空族(映像制作集団)
◎作品を撮る中で何かを発見する方向に行きたい 是枝裕和(映画監督)
Ⅴ メディアとしての映像作品──映画とテレビのあいだ
◎テレビドラマと映画の横断から見えるもの 西谷弘(映画監督)
◎組織から個へ──時代と社会とフィクションと 大友啓史(映画監督、テレビディレクター)
◎憧れと共感──オリジナル・アニメーションを手がけるために 関弘美(アニメーション・プロデューサー)
◎ドラマはドキュメンタリーのように、ドキュメンタリーはドラマのように 岸善幸(演出家、テレビディレクター、映画監督)
Ⅵ 映画はどうして映画なのか
◎弱さにおいて表現を生み出すこと 諏訪敦彦(映画監督)
◎映画だけが扉の向こうに何かがあることを撮ることができる 黒沢清(映画監督)
◎衰退の時期にこそ本格的なものをやりたくなる 中島貞夫(映画監督)
◎いつか見た映画の夢 大林宣彦(映画作家)
謝辞
編者略歴