マンガの現在地!

生態系から考える「新しい」マンガの形

島田一志/フィルムアート社編集部=編
浅野智哉/天野昌直/粟岳高弘/飯田一史/太田克史/樹崎聖/木村仁/桐木憲一/さそうあきら/さやわか/スタンザーニ・ピーニ 詩文奈/高狩高志/中野晴行/仲俣暁生/西島大介/ばるぼら/三上信一/吉田アミ=著
押切蓮介=カバーイラストレーション
発売日
2015年10月9日
本体価格
1,700円+税
判型
四六判・並製
頁数
192頁
ISBN
978-4-8459-1578-1
Cコード
C0095

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マンガが変わっていく時代に、マンガを支える人たちが伝えたいこと。
いまマンガが起こっている生態系と、そこで生まれつつある新しいマンガの形に迫る。

<カバーイラストは押切蓮介(『ハイスコアガール』)描き下ろし!>

<太田克史(星海社副社長、『最前線』『ファウスト』編集長)×島田一志(漫画編集者、本書編者) 特別巻頭対談『変わるマンガの未来とは?』収録!>

いま、マンガに何が起きているのでしょうか?
出版業界の危機と、ウェブや電子書籍の躍進。マンガ家も出版社も書店も、これまでの方法が通用しない、激しい変化にさらされています。

しかし、この変化は、単なる業界危機に収まるものではありません。
いまや私たちは、あらゆる場所でマンガを見かけるようになりました。たとえば、Twitterのタイムライン、ネットの動画配信、市区町村のポスター、美術館の展示室、高層ビルの巨大広告、ラッピング電車、大学の講義、全国各地の(あるいは世界の)マンガフェスティバル……。

かつて石ノ森章太郎が「萬画(まんが)は無限大の可能性を持つメディアである」と宣言したことを裏付けるかのように、マンガの想像力は私たちの文化の中心を築き、過去には考えられなかったような領域で、生き生きと根を張りはじめています。
これは別の見方をすれば、マンガ家を志す人にとっては「上京して、雑誌で連載して、単行本を売る」という従来的なスタイルでなくても、マンガを描いて生きていけるかもしれない、多様な方法論が生まれ得る時代だとも考えられないでしょうか。

大きな時代の変化のなかで、マンガという表現がどのような形をとりつつあるか。
業界で、そして新しい分野でマンガを支える人たちは、いま、何を考えているか。
本書は、歴史/テクノロジー/ビジネス/コミュニティという視点からマンガの「現在地」を収集し、今日のマンガの生態系の「見取り図」をつくる一冊です。

現役マンガ家、マンガ編集者、研究者、評論家、マンガミュージアムやマンガのコンセプトスペースの運営者、マンガイベントの企画者、マンガの翻訳者などなど……
それぞれの立場で奮闘する実践者たちの言葉は、近い未来に<世界にまだないマンガ>を生み出す誰かに向けた、全身全霊の“エール”でもあるといえるでしょう。

太田――さて、まず、いきなりですが、僕も島田さんも含めて、いま現役の編集者は、新しい時代の編集者には残念ながらなれないと思います。全員失格なんです。なぜなら、いまある日本のマンガのかたちは、近い将来大きな変化を迎えざるを得ない……もっと端的に言えば、滅びざるを得ないと思うからです。(後略)

島田――じゃあ合格なのは?

太田――いまマンガ業界にいない人たちでしょうね。彼ら彼女ら新しい世代の人が次のマンガを作っていくんですよ。変革期は、過去の作品作りの方法論にとらわれない、まっさらな状態で登場してきた作り手が、新しい時代を築いていくんです。

<本書巻頭対談より抜粋>

メディア掲載

目次

Introduction マンガの現在地(島田一志)

Discussion 変わるマンガの未来とは? 雑誌を知らない才能が、新しい時代の『新宝島』を作る
太田克史(星海社副社長、『最前線』『ファウスト』編集長)×島田一志(漫画編集者、本書編者)

Basic Work マンガに何が起きているか ―誕生から一〇年代の環境まで
マンガは変わる(さやわか)
ゼロ年代―雑誌、作品、読者の変化(さやわか)
一〇年代―ウェブマンガの浸透と新しいスタイル(さやわか)
媒体の変化から見る近現代マンガ史(浅野智哉)
マンガにとって「雑誌」とはなにか(仲俣暁生)

Expanded Work 1:マンガと表現 ―テクノロジーが作品を変えた
ネットから生まれる新しい才能たち(ばるぼら)
デジタル表現の現在地(天野昌直)
マンガの見せ方が変わる時代(島田一志)
CGM―ネット時代のプラットフォーム(飯田一史)

Expanded Work 2:マンガとビジネス ―デジタル化のもたらした産業構造の変化
マンガは紙からデジタルへ?(中野晴行)
マンガとメディアミックス(中野晴行)
マンガは地方を再建できるのか!?(中野晴行)
マンガの世界戦略(中野晴行)

Expanded Work 3:マンガとコミュニティ ―リアルな場が生み出す新しいつながり
マンガミュージアムが伝えるもの(木村仁)
大学でマンガを学ぶということ(さそうあきら)
紙の本を売る現場から(高狩高志)
マンガが生活の場になる(島田一志)

Style:マンガの起こっている場所たち
漫画元気発動計画(樹崎聖)
トキワ荘通り協働プロジェクト(桐木憲一)
マンガサロン『トリガー』(編集部)
comico(飯田一史)
上野の森美術館(編集部)
同人誌即売会(島田一志)
マンガの翻訳・出版(スタンザーニ・ピーニ 詩文奈)

Q&A
・出版社への持ち込みは有効ですか?(島田一志)
・メジャーの流通を通さず、同人誌などを売ることで「食って」いけますか?(粟岳高弘)
・地方でマンガを描くということについて教えてください(西島大介)
・日本のマンガは海外でどう見られていますか?(スタンザーニ・ピーニ 詩文奈)
・マンガビジネスが巨大化した八〇年代、マンガ家と編集者の関係とは?(三上信一)
・デジタル作画が主流の今だからこそ、手描きの絵の魅力を教えてください(吉田アミ)
・少女マンガの現在、そして未来はどうなりますか?(吉田アミ)
・マンガをテーマにしたトークイベントの楽しさを教えてください(吉田アミ)
・タブーとされているものを描いてはいけませんか?(島田一志)

プロフィール

[著]
島田一志(しまだ・かずし)
1969年10月13日生まれ。漫画編集者、ライター。「週刊ヤングサンデー」編集部を経て、「九龍」元編集長。編集した作品に、『ショートカッツ』(古屋兎丸)、『ねこぢるまんじゅう』(ねこぢる)、『はなしっぱなし 新装版』(五十嵐大介)、『世界の終わりの魔法使い』(西島大介)、『薔薇のかたちのシ』(鈴木志保)、『屋根の上の魔女』(武富健治)、『山田のこと』(上條淳士)、『パラダイスバード』(佐藤明機)など約100作。また、編著書に『漫画家、映画を語る。』『COMIC IS DEAD』『ワルの漫画術』『ROCK COMIC』『新・漫画論』がある。