なぜ、「怖い」のに「見たい」のか?
なぜ、存在しないものを怖がるのか?
ここから、ホラーの哲学は始まった。
ホラーの哲学を初めて理論化した革新的著作が、待望の邦訳!
分析美学の第一人者であり、映画・大衆芸術(マス・アート)研究の分野でも活躍するノエル・キャロルによる、ホラーの哲学の初めての体系的著作。
『フランケンシュタイン』『ジキル博士とハイド氏』『ドラキュラ』『エクソシスト』『オーメン』『エイリアン』、さらにはH・P・ラヴクラフト、スティーヴン・キング、クライヴ・バーカー、シャーリイ・ジャクスンなど……
本書では、古典的名作から現代のヒット作品、さらには無名のB級作品まで、膨大な作品群を縦横無尽に取り上げながら、ホラーとは何か、その本質や定義、物語構造とプロット分析、ホラーの魅力、さらにはホラーモンスターの作り方についてなどを論じる。
そして、哲学的な観点から、存在しないとわかっているものをなぜ怖がってしまうのか(フィクションのパラドックス)、また、恐怖を与えるホラー作品をなぜわざわざ求めるのか(ホラーのパラドックス)について考察する。
吸血鬼、ゾンビ、人狼、悪魔憑きの子ども、人造人間、スペースモンスター、幽霊、その他の名もなき怪物たちが、なぜわたしたちの心を摑んで離さないのか。
フィクションの哲学、感情の哲学、ポピュラーカルチャー批評を駆使して、その不思議と魅力の解明に挑む!
メディア掲載
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『怪と幽』vol.012 評者:中島晶也さん
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『本の雑誌』2023年1月号 評者:すずきたけしさん
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『幻想と怪奇』 評者:牧原勝志さん
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『週刊読書人』2022年11月18日号 評者:森口大地さん
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『フィルカル』vol.7 no.3
目次
謝辞
序
本書が置かれた文脈/ホラージャンル摘要/ホラーの哲学とは?
第1章 ホラーの本質
ホラーの定義
まえおき
感情の構造について
アートホラーを定義する
アートホラーの定義に対するさらなる反論と反例
幻想の生物学とホラーイメージの構造
要約と結論
第2章 形而上学とホラー、あるいはフィクションとの関わり
フィクションを怖がる──そのパラドックスとその解決
フィクション錯覚説
フィクション反応のフリ説
フィクションへの感情反応の思考説
要約
キャラクター同一化は必要か
第3章 ホラーのプロット
ホラープロットのいくつかの特徴
複合的発見型プロット
バリエーション
越境者型プロットおよびその他の組み合わせ
典型的ホラー物語が与えるもの
ホラーとサスペンス
疑問による物語法/サスペンスの構造
幻想
第4章 なぜホラーを求めるのか?
ホラーのパラドックス
宇宙的畏怖、宗教的経験、ホラー
ホラーの精神分析
ホラーの魅力の一般理論と普遍理論
ホラーとイデオロギー
ホラーの現在
訳者解説
プロフィール
[著]
ノエル・キャロル(Noël Carroll)
アメリカ合衆国の哲学者・美学者。1947年生まれ。ニューヨーク市立大学大学院卓越教授。元アメリカ美学会会長。著書は本書のほか、Mystifying Movies (1988), Theorizing The Moving Image (1996), Philosophy of Art: A Contemporary Introduction (1999), A Philosophy of Mass Art (1998)など多数。
[訳]
高田 敦史(たかだ・あつし)
1982年生まれ。2008年東京大学総合文化研究科修士課程卒業。専門は、美学、特にフィクションの哲学。論文に「図像的フィクショナルキャラクターの問題」(『Contemporary and Applied Philosophy』6号、2014–2015年)、「ストーリーはどのような存在者か」(『科学基礎論研究』44巻1–2号、2017年)、「スキャンロンの価値の反目的論」(『Contemporary and Applied Philosophy』13号、2022年)など。