人類は石油を掘りスマホは化石になる──
物質という視点や長大な時間から現代のメディア状況を捉え直す、気鋭の研究者によるハードでドライなメディア文化論。
ポストヒューマンや新しい唯物論にも接続する
パースペクティヴから”傍若無人な人新世(Anthrobscene)”を看破する──
気候変動に直面し、電子廃棄物の山が築かれ、マイクロプラスチックが地球規模で循環する時代、複雑な環境に取り巻かれた現代のメディア文化を十分に理解するために必要なこととはなんだろうか? それは発展的で単線的な歴史観や人間という尺度に則ってきた従来のメディア論ではなく、メディアをそれに先行する物質的現実(地球の歴史、地層、鉱物、そしてエネルギーなど)から捉える視点である。
本書では人間的なスケールから逸脱する巨視的・微視的な時空間からメディアテクノロジーの物質性を読み解くことで、メディア文化・地球・人間を貫く奇妙な関係を浮かび上がらせる。化石や元素といった地球由来の要素を利用したテクノロジーは、陳腐化してごみとなり、やがて地球へと回帰し、新たな「地球」を形づくっていく……その途上にある「今」をどのように考えられるのか──。本書はメディアテクノロジーを条件として「現在」に圧縮される過去と未来、そして迫り来る新たな「人間」と「自然」を探究する。
メディア研究の若き旗手の一人である著者による、人新世のためのメディア論に必須の一冊。
【キーワード】
人新世/傍若無人新世/ポストヒューマン/新しい唯物論/思弁的実在論/メディア考古学/深い時間/心理地球物理学/ごみ/資源/電子廃棄物/金属/鉱物/地層/化石/メディアテクノロジー化石/塵埃/労働/気候変動/環境/非人間/分解/DIY/サーキットベンディング/メディアアート……
本書は──メディアテクノロジー文化の議論が置かれてしかるべきエコロジーの文脈に関連するという意味で──環境について(グリーン)の本であるのと同時に、汚物(ダート)と土壌にまみれている。この本では動物・テクノロジー・エコシステムについての彩ゆたかなメタファではなく、メディアと地球物理学的環境との関係の特定の面を強調する。[第1章より]
メディア掲載
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図書新聞2023年5月27日号で書評が掲載されました! (評者:大久保遼さん)
人新世のメディア論へ向けて メディアと自然環境の新たな地図 -
朝日新聞 2023年4月1日号 朝刊で書評が掲載されました! (評者:福嶋亮大さん)
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週刊読書人2023年3月17日号で書評が掲載されました! (評者:山口裕之さん)
メディアの〈物質主義〉 人間的時間・空間の視点を超越したメディア論
目次
日本語版への序文
序文
第1章 物質性──メディアと文化の土台
第2章 オルタナティヴなメディアの深い時間
第3章 テクノロジーと心理地球物理学
第4章 塵埃と消耗する生
第5章 未来の化石
おわりに いわゆる自然
補遺 ゾンビメディア──メディア考古学をサーキットベンディングしてアートの手法にする
謝辞
日本語版への追加資料
訳者解説
索引
プロフィール
[著]
ユッシ・パリッカ(Jussi Parikka)
1976年生まれ。オーフス大学教授(デンマーク)。サウサンプトン大学ウィンチェスター美術学校およびプラハ芸術アカデミー映像学部(FAMU)客員教授。編集者、キュレーターとしても活動。専門はメディア理論、メディア文化。著作としてInsect Media (2010), Digital Contagions (2007/2016)など。共編著書としてThe Lab Book: Situated Practices in Media Studies (2022)。論文や著作は11ヶ国語に翻訳されている。http://jussiparikka.net.
[訳]
太田純貴(おおた・よしたか)
1980年生まれ。鹿児島大学准教授。専門は美学芸術学・メディア文化論。執筆・翻訳・編集に、エルキ・フータモ『メディア考古学』(編訳、NTT出版、2015年)、『理論で読むメディア文化』(分担執筆、新曜社、2016年)、『美学の事典』(分担(項目)執筆、丸善出版、2020年)など。
お詫びと訂正
『メディア地質学』の初版におきまして、以下のような誤りがございました。
謹んでお詫びさせていただくとともに、下記の通り訂正させていただきます。
p.350著者略歴
誤)アールス大学
↓
正)オーフス大学
読者の皆さま、関係者の皆さまにご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。
株式会社 フィルムアート社