映画の誕生を技術と産業の両面から発生史的にとらえて注目を集めた好著。300点近い図版を駆使して、映画が産業として成立するまでの波乱に満ちた草創期を鮮やかに描きあげ、従前の映画史においては影の部分でしかなかった映画の“原点”を浮き彫りにする。
古来の影絵→幻燈ショーの歴史、ソーマトロープをはじめとする“動画”への試み、写真による瞬間連続撮影の探求など、映画が産業として成立するまでの波乱の草創期を活写する、映画に関する最も基本的な文献!
約300点に及ぶ写真図版を加え、映画が〈魔術〉であった時代のファンタスムの魅力と原点の謎に迫る!
目次
第1章 怪しげだがまじめな先駆者たち
さまざまな定義
魔法、ファンタスマゴリア、溶暗画
ベルギーの教授、イエズス会の神父、オーストリアの陸軍士官
“活動画”を使った最初のショー
第2章 小さな暗箱を持った魔術師たち
シュルツェと硝酸銀
ニエプスとダゲール
最初の写真芸術家バヤール
カロタイプ(トールボタイプ)
100分の1秒
写真は画家の敵
盲目のプラトー
マイブリッジの走る馬
電気式シュネルゼーアー
不幸な百万長者イーストマン
第3章 最初の映画フィルム
失踪した発明家
78件もの特許をとった男
知られざるリ=ロイ
興行師スクラダノフスキー
一晩で映画を発明したルイ・リュミエール
最初の喜劇映画
5万フランを拒絶
ロシア人と初期の映画
第4章 最初の映画作品
レイノーのショーを見物した50万人
自分の装置を破壊した発明者
魔術師メリエス
カメラとフィルムを頂戴したポール
トリック撮影と幽霊映画
最初の宣伝映画
ブライトン派
第5章 映画産業
3500万人の労働者が要求する娯楽
大成功した肉屋の息子パテ
3000万の資本
メスターのマルタ十字歯車
カメラとして用いた部屋
ドイツで最初の映画カタログ
結局なにが生まれたか
文献
索引
訳者あとがき
プロフィール
[著]
C・W・ツェーラム (C. W. Ceram)
本名はKurt Wilhelm Marek。筆名のCeramはMarekを逆につづったもの。1915年生まれ、1972年没。ベルリン生まれの評論家・考古学者。18歳の時に出版社に入り、仕事をするかたわら映画の歴史に関する勉強を続け、映画への深い関心と蒐集した膨大な資料を核にし、1965年にこのユニークな映画技術成立史を上梓した。主著に『神・墓・学者』(1949)、『狭い谷 黒い山――ヒッタイト帝国の秘密』(1955)、『最初のアメリカ人 北アメリカ考古学物語』(1972)などがある。