2000年以降の「映画」を動かした鬼才。
アジア、いや世界が誇るべき映像の魔術師を、各分野の識者が徹底的に解読!
映画論/アート/人類学を軸に、その全貌に迫る!!
映画ファンや映画研究者のみならず、全世界を注目させ続けているアピチャッポン・ウィーラセタクン。本年(2016年)は、全劇場長編作の特集上映が実施され、3月には新作『光りの墓』公開、さいたまトリエンナーレへの参加、そして12月には東京都写真美術館での個展が開催されるなど、各所から注目を集めている。
本書では、映画論に加え、アートと文化人類学を軸に、英語・タイ語論考の翻訳も交えながら、アジアのみならず世界の映画を代表する作家を多角的に解析。
精霊/幽霊や王室、または固有の民族などのタイ文化に着目する文化人類学の観点や、映画と並行して創作しているヴィデオ・インスタレーションを中心としたアピチャッポン作品のアート的側面を論じつつ、映画作品の特定のシーンを分析することで、彼の作品世界で何を描こうとしているのか、その全貌を明らかにする。
全長編作品を語る本人のインタビューと詳細な作品ガイドも収録!
メディア掲載
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「intoxicate」(vol.126)
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「キネマ旬報」(2017年3月下旬号)
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「美術手帖」(2017年3月号)
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「日本経済新聞」(2月12日・読書欄)
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「CINRA.NET」
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「映画プレス」
目次
まえがき ──金子遊
Interview
アピチャッポン、全長編映画を語る
Art
ヴィジュアル・アート
宙ぶらりんな場所と、透明な糸 ──キュンチョメ
演劇批評
言語化以前の原感覚に支えられた、演劇的な宇宙 ──岩城京子
輪廻
彼の空白 飴屋法水
映画という亡霊を掘り起こす-ヴィデオ・インスタレーション、物語(ナラティブ)、Non-Cinema ──中村紀彦
前世を思い出せる男-アピチャッポン・ウィーラセタクンによるインスタレーション ──カレン・ニューマン (久保豊訳)
転生と精霊の芸術 ──伊藤俊治
夜の森で-遊戯と情動のポリティクス ──港千尋
蔡明亮、バルト、アピチャッポン-身体、同性愛、名付け得ぬもの ──夏目深雪
Anthropology
ジェンダー
タイのジェンダーと政治社会 ──福冨渉
フィールドワーク
タイ的平衡 ──綾部真雄
探検
世界の未整理性を象徴するタイの「ピー」 ──高野秀行
幽霊
タイの幽霊 ──四方田犬彦
追憶のナブア-「プリミティブ」プロジェクトをめぐる手記 ──アピチャッポン・ウィーラセタクン (水野友美子訳)
病んだ体と政治の体-アピチャッポン・ウィーラセタクンの政治社会学 ──福島真人
ブンミおじさんの森-記憶を歴史に変える映画(抄訳) ──フィルムシック (福冨渉訳)
東北の発見-アヴァンギャルド/フォークロア ──金子遊
Cinema
音楽
『モーラム』と『プア・チーウィット』とイサーン ──相澤虎之助(空族)
映画製作
アピチャッポンとともに ──福間健二
軍事政権下におけるタイ映画の愚かな現状とその未来 ──アピチャッポン・ウィーラセタクン (木本早耶訳)
「世紀の光」へ向かう奮闘 ──チャヤーニン・ティアンピッタヤーコーン (福冨渉訳)
『世紀の光-タイランドエディション』——この国で映画が映画でなくなる時
──チャヤーニン・ティアンピッタヤーコーン (福冨渉訳)
ディジタル文化とアジア的世界観-「準‐客体」と(しての)アピチャッポン・ウィーラセタクン ──渡邉大輔
タイトル未定 ──北小路隆志
Beautiful Dreamer ──佐々木敦
虚無との接触-アピチャッポン・ウィーラセタクンの映画 ──トニー・レインズ (後藤護訳)
形式化と造化作用 ──四方田犬彦
あとがき-七番目の芸術による、六番目の大陸行き ──夏目深雪
編者・執筆者・訳者紹介
Filmography & Reviews
真昼の不思議な物体/ブリスフリー・ユアーズ/アイアンプッシーの大冒険/トロピカル・マラディ/世紀の光/ブンミおじさんの森/メコンホテル/光りの墓/短編映画作品
Reviws of Artworks
「プリミティブ」プロジェクト/PHOTOPHOBIA/さいたまトリエンナーレ
アート作品リスト
バイオグラフィー
ビブリオグラフィ
プロフィール
夏目深雪(なつめ・みゆき)
批評家、編集者。映画を中心に、演劇やダンスについて執筆。慶應義塾大学非常勤講師(アジア映画)。共編著書に『アジア映画の森 新世紀の映画地図』『アジア映画で<世界>を見る 越境する映画、グローバルな文化』(作品社)、『インド映画完全ガイド マサラムービーから新感覚インド映画へ』(世界文化社)、『国境を超える現代ヨーロッパ映画250 移民・辺境・マイノリティ』(河出書房新社)。08年から東京国際映画祭の選考業務に携わり、アジア映画の未公開作品を多く鑑賞。11年ジェローム・ベルのダンス評でF/T劇評コンペ優秀賞受賞。
金子遊(かねこ・ゆう)
映像作家、批評家。映像、文学、民族誌学を横断領域的に研究している。著書に『辺境のフォークロア』『異境の文学』。編著に『フィルムメーカーズ』『吉本隆明論集』『クリス・マルケル』『国境を超える現代ヨーロッパ250』『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』、訳書にマイケル・タウシグ著『ヴァルター・ベンヤミンの墓標』。劇場公開映画に『ベオグラード1999』『ムネオイズム』『インペリアル』がある。慶應義塾大学非常勤講師、ドキュメンタリーマガジンneoneo編集委員、山形国際ドキュメンタリー映画祭2015コーディネーターを務める。