
マシュー・フレデリック 著/藤原恵洋 訳
四六判変形
224ページ
1900円+税
ISBN 978-4-8459-0933-9
建築を学ぶ学生、技術者、熟練した建築家、インテリアデザイナー必見! もう一度、建築デザインの基礎的な考え方を、頭を柔らかくして考えてみませんか?
たとえば建築学科の、抽象的で退屈な授業にうんざりしていませんか? 建築はもっとシンプルで、かつ複雑で高度な技術を必要とします。途方も無い諸問題をひとつひとつクリアしていくうちに、気付いたら初心を忘れてしまっていませんか?
本書は、建築デザインを思考するためにヒントとなるシンプルなイラストと、それを補足するコメントが1対1の見開きで分かりやすく書かれています。ドローイングの基礎から、対位法、空間分節の考え方など、基本的だけれどくり返し反芻しなければならない諸問題を、101の項目に絶妙にまとめています。手に取りやすく、何度も読み返したくなる造本で、建築のみならずデザインを学ぶすべての人のハードユースに耐えうる一冊です!
マシュー・フレデリック
Matthew Frederick
建築家・都市計画家。マサチューセッツ州ケンブリッジ在住。
ボストン建築学院、ウェントワース工科大学等、数多くの専門学校・大学で教鞭をとってきた。
藤原恵洋 ふじはらけいよう
1955年生まれ。建築史家。まちづくりオルガナイザー。工学博士。九州大学大学院教授。東京大学生産技術研究所研究員、元ライデン大学(オランダ)客員教授。専攻は日本近代建築史学、都市論、芸術文化環境論。建築遺産やゲニウスロキと芸術創造行為の相互作用をメタ思考で研究中。著書『上海~疾走する近代都市』(講談社現代新書)、設計作品『福岡市文学館』(福岡市)、『小島直記文学碑』(八女市)等。
最初の項目は象徴的で建築家らしい線の描き方。続いて、ゲシュタルト心理学を援用した平面と立面の造形論。それを受け最初に登場する建築家の一言がメタ思考のルイス・カーンで、そこからゲニウス・ロキ(地霊)と続きます。
続くパルティ(基本的な計画)も全体を貫く重要なキーワード。本書では二つ以上の用途が生まれるデザインの発想が良いとされていて、おおらかさが漂います。かといって、地域固有性や歴史引用に傾倒したポストモダニズムでもありません。ドローイングやレタリングの仕方はていねいに説明を重ね、建築家が他の技術者とどう違うのか、わかりやすい解説が続きます。パルティが建築デザイン上の要を果たすと宣言したところから、建築家の哲学的な態度や精神論が徐々に増えていき、メタ思考の重要性が唱えられます。一方、先達としてはルイス・サリバンや作家ガートルード・スタインの警句が持ち込まれます。
中盤には、方角理論、静的・動的なコンポジション(構成)、対位法、難易度の高い2D3D構成手法、色彩理論と続き、デザイン理論面での地固めが必要だと強調されます。そのうえでいよいよ平面計画の落としどころが紹介され、そのアイデアを身近なおばあさんにわかりやすく説明できますか、と急所をついてきます。
太陽光や照明手法にも注意が払われ、関係性がもたらす「美」のあり方、動線処理の基本と応用、建築の量塊や形の峻別カテゴライズ法、外観デザインや壁のプロポーション理論、にも歯切れよく言及しています。途中には、建築家としてのプレゼンテーションの仕方や態度が挟まれます。そして、機能主義の権化とも言えるミース・ファン・デル・ローエの有名な「レス イズ モア(少ないことは、より豊かなこと)」に真っ向から挑んだポストモダニズム建築家のロバート・ベンチューリーを対決させているのです。
建築家としてのプレゼンの態度もたいせつです。断面デザインの重要性やパースペクティブをきちんと与えることの重要性、さらには模型でスタディすることの重要性を畳み掛けて説いていきます。
いよいよ後半は難易度も高まり、ソリッド・ボイド(物―間隙)理論に基づいた平面計画や動線処理とルイス・カーンの設計術等が引き合いに出されていきます。また建築の内部空間のデザイン手法や都市の景観の中での外観デザイン、通りに面した敷地でのデザインの仕方が注意深く説明されます。こうした次元の変化に対応しながら上手にデザインの質を保ち続ける発想には建築家エリエル・サーリネンの警句が参考になります。
いよいよ最後ですが、建築全体のデザインをふりかえる視点や細かな寸法感覚への注意をうながしており、制約が大きければ大きい程創造性が高まる、とか、「危機」という漢字から「ピンチこそチャンスにほかならない」と哲学的な洞察を行なっています。良いアイデアをものにするためには、つねに何かをし続けること、何かに名前を与えること、とのアドバイスを最後まで忘れません。そのうえで最終ページは、ザハ・ハディダ女史の顔を例示しながら「建築家は遅咲きでいい」と言ってみせるのです。
フィルムアート社編集部=編/執筆者=いえつく、猪熊純、大西麻貴、木内俊克、田根剛、栃澤麻利、成瀬友梨、平瀬有人、藤原徹平
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