ピックアップ

プロが選ぶオススメの演技指南書3冊(+1冊) 俳優・千葉一磨選


舞台に立ったことがある方なら、誰しも「演技が上手くなりたい」と思いますよね。そのためには、演技コーチから直接指導を受ける以外にも、指南書を読むことで、ひとりでもできるエクササイズを行ったり、演技の心構えを確認したりすることができます。書店に行けば、さまざまな著者による指南書が並んでいますが、どれを読めばよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで本ページでは、プロの俳優の方に「オススメの演技指南書」を選んでいただきました。
選者は第一線でご活躍されている俳優の千葉一磨さんです。オススメの演技指南書3冊に加え、特別に「苦悩を抱えた時に突破口を示してくれる本」1冊を紹介していただきました。


購入する

魂の演技レッスン22
輝く俳優になりなさい!
ステラ・アドラー=著
フィルムアート社

まず、一冊目に紹介するのは、20世紀を代表する演技指導者のひとり、ステラ・アドラーによる濃密な演技レッスンの内容をまとめたこちらの著作です。本書において注目していただきたい点は、はじめに演劇という営みがどれだけ大きな文化的価値を持ち、俳優にとって豊かな知性と想像力を養うことがいかに重要かを丁寧に説明する点です。このように俳優としての理想像を明らかにすることで「何のために演技者としての技術を磨くのか」という問いを忘れずに読み進めることができます。そのうえで、小道具や衣装との向き合い方、役柄に応じた身体の使い方など、具体的なトレーニング方法を豊富に取り扱っており、舞台に立つうえで行うべき準備の仕方が明確になるでしょう。


購入する

現代語訳 風姿花伝
世阿弥=著
PHP研究所

『風姿花伝』は、能楽の大成者である世阿弥が父親から受け継いだ教訓を基に書き記した芸術論の名著です。本書は「花」や「幽玄」というキーワードを用いて日本特有の美を定義したうえ、どのような演技をすればその2つの境地に近づけるかを示しています。役者の年齢に応じた演技の変化や稽古の方法、公演の良し悪しを見定めるために観客の様子を事前に観察することの重要性など、興味深い教えが豊富です。それらは能という古典芸能に特化しているものの、現代の演技や舞台芸術にも通じると、読みながら実感が湧くのではないでしょうか。風姿花伝にまつわる著作はたくさんありますが、その中で読みやすさという観点から本書が入門書として相応しいと考え、選書いたしました。


購入する

俳優の教科書
三谷一夫=著
フィルムアート社

上記の2冊を通じて西洋と東洋、それぞれの世界における舞台演劇の位置付けや表現力の鍛え方などについて知ることができます。ここで視点を変え、映画制作における俳優の在り方をテーマにした著作を三冊目として紹介します。本書では、映画の制作過程や各部署のスタッフについて詳細に説明したうえで、俳優はチームの一員としてどのような準備を行うべきかを述べられています。特に、脚本の読解力やオーディションにおける評価ポイントなどを具体的に説明しているため、実践に役立ちます。また、映画監督や芸能プロダクションのマネージャーなどをゲストに迎えたインタビューの内容が掲載されており、多角的な視点から俳優に求められる姿勢や能力について知ることができます。


購入する

「クリエイティブ」の処方箋
行き詰まったときこそ効く発想のアイデア86

ロッド・ジャドキンス=著
フィルムアート社

自分と他者を比べて落ち込んだり、実力が伸びているかどうか分からなくなったり、創作活動を行ううえで壁に衝突することは避けられません。最後に紹介する著作は演技指南書ではありませんが、そのような苦悩を抱えた時に突破口を示してくれる本です。本書は、俳優のみならず、作家や音楽家、建築家や発明家など、創造性が求められるあらゆる著名人たちの逸話を通じて、創作するうえで行き詰まった時に助けになる思考法を86の項目にまとめています。「別の誰かになろうとしない」、「事故を歓迎する」など、シンプルな格言に頷く章もあれば、意表をつかれ目から鱗がおちるような助言も見つかるはずです。視野が狭くなって良いアイデアが思いつかない時、道に迷った時にお勧めしたい一冊です。


千葉一磨(ちば・かずま)
俳優。ニチエンプロダクション所属。
Eテレ「天才てれびくんMAX」でてれび戦士として活躍後、ドラマ「めんたいぴりり」「表参道高校合唱部!」、Eテレ「しあわせ気分のフランス語」、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」などに出演。
早稲田大学基幹理工学部卒業、同大学院基幹理工学研究科修士課程修了。ものづくり技術の研究に携わる。
2025年4月、Group B presents ミュージカル「ツミとバツ」に出演する。

 

フィルムアート社から刊行された演技指南書をこちらにまとめています。
他にもさまざまな書籍がありますのでぜひご一読ください。