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プロが選ぶオススメの演技指南書3冊 声優・星野貴紀選


舞台に立ったことがある方なら、誰しも「演技が上手くなりたい」と思いますよね。そのためには、演技コーチから直接指導を受ける以外にも、指南書を読むことで、ひとりでもできるエクササイズを行ったり、演技の心構えを確認したりすることができます。書店に行けば、さまざまな著者による指南書が並んでいますが、どれを読めばよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで本ページでは、プロの声優の方に「オススメの演技指南書」を3冊選んでいただきました。
選者は声優の星野貴紀さんです。『マン・オブ・スティール』(2013)のスーパーマン役を演じるなど、長年にわたって第一線でご活躍されてきた星野さんにオススメの演技指南書を紹介していただきました。


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俳優のためのハンドブック
明日、舞台に立つあなたに必要なこと
メリッサ・ブルーダー/リー・マイケル・コーン/マデリーン・オルネック/ナサニエル・ポラック/ロバート・プレヴィット/スコット・ジグラー =著
フィルムアート社

俳優を志す方にまず手に取っていただきたい一冊がこちらです。この本では、「俳優の仕事とは何か」「役とどう向き合えばいいのか」「何をすればよいかわからないとき、どこから始めればいいのか」といった基本的な疑問に丁寧に答えています。
演技とは、漠然としていて正解が見えにくいものです。だからこそ、はじめの一歩を具体的に示してくれる本書は、初心者にとって非常に頼りになる存在でしょう。
基礎──身体づくりや台本の読解法──は、他にも学ぶ機会があるかもしれません。しかし、どうしても退屈に感じるものですよね。本書はそうした「形ある学び」を超えて、俳優の本当の仕事──「形のないもの」に形を与えること──に焦点を当てています。俳優が人間の心の動きを具体的な表現に落とし込むためには何が必要か。その方法論を、本書は体系的に教えてくれます。この一冊が、真実の瞬間への最初の一歩を後押ししてくれることでしょう。


※恐れ入りますが、本書は在庫僅少となっております。フィルムアート社公式オンラインショップよりご購入いただけます。


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感情類語辞典[増補改訂版]

アンジェラ・アッカーマン/ベッカ・パグリッシ=著
フィルムアート社

演技において、自分の感情と役の感情を区別するのは意外と難しいものです。役の感情はシナリオを読めば理解したつもりになりがちですが、実際に演じるとなると「どう表現するか」に悩む方も多いでしょう。
本書は、そうした悩みをサポートしてくれる辞典です。引き出しにくい感情や表現を広げ、役の感情をより深く理解する手助けをしてくれます。今回の増補改訂版では、参考となる感情の数が倍近くまで増え、より細かな感情の機微を理解しやすくなっています。俳優個人が持つ感情と役の感情をすり合わせ、役の目的や感情の流れを丁寧に分析することで、外的なアクションに工夫を加えたり、再現性の高い演技への足掛かりを手に入れられる事でしょう。

ためし読み
感情のパワー


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新潮日本古典集成〈新装版〉世阿弥芸術論集
田中裕=校注
新潮社

『風姿花伝』を含む5編が収められた本書は、能楽の秘伝書でありながら、現代の俳優にも響く教訓が多く詰まっています。たとえば、役への向き合い方、身体の使い方、観客との距離感、学びの進め方、さらには芸を磨く環境の重要性や、年齢に応じた役の演じ方など、役者人生を支える指針となるテーマが丁寧に語られています。
また、曖昧な主観ではなく具体的な言葉で記されている点も、本書の大きな特長です。書かれた時代が異なるにもかかわらず、演技における普遍的な価値観が随所に散りばめられており、現代の俳優にとっても多くの学びを得られる内容となっています。
現代語訳ではないため、最初は難解に感じるかもしれませんが、注釈が充実しているので安心して読み進められます。演技を深く学びたい方や、古典の知恵に触れたい方にぜひ手に取っていただきたい一冊です。


星野貴紀(ほしの・たかのり)

声優。オフィスPAC所属。演出家であり声優でもあった故・野沢那智に師事し、野沢が設立したパフォーミング・アート・センターを卒業。その後、同養成所の講師を務め、後進の指導にあたる。野沢没後、自ら音声収録・舞台芸術研究所(VORPAL:VOice Recording Performing Arts Laboratory)を設立し、声優としての技術向上と後進育成に本格的に取り組んでいる。
代表作に、『ガン×ソード』(ヴァン)、『遊☆戯☆王5D’s』(ジャック・アトラス)、『マン・オブ・スティール』(クラーク・ケント / スーパーマン)、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズ(八神庵)、『ファイナルファンタジーXIV』(ゴルベーザ)などがある。

 

フィルムアート社から刊行された演技指南書をこちらにまとめています。
他にもさまざまな書籍がありますのでぜひご一読ください。