ニコラ・ブリオー著『ラディカント グローバリゼーションの美学に向けて』の刊行を記念し、本書の訳者である武田宙也さんに『ラディカント』をよりよく理解するための20冊を選書&コメントしていただきました。
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『西暦一〇〇〇年 グローバリゼーションの誕生』
ヴァレリー・ハンセン=著|赤根洋子=訳
文藝春秋
価格 2,420円(本体2,200円+税)
発行年月 2021年05月
判型 四六判
ISBN 9784163913704
一般にグローバリゼーションといえば、1970年代から80年代にかけて、人やモノの流動性が世界規模でいよいよ高まった時代に対して使われることが多いが、本書は、その起源をはるかに遡った西暦1000年頃に推定し、当時世界各地でいかなる変化が起こったのかを数多くの興味深い事例とともに紹介している。
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『リキッド化する世界の文化論』
ジグムント・バウマン=著| 伊藤茂=訳
青土社
価格 2,420円(本体2,200円+税)
発行年月 2014年08月
判型 B6
ISBN 9784791768073
『リキッド・モダニティ』で知られる社会学者が、同書で提示したソリッド・モダニティ(固体的近代)からリキッド・モダニティ(液体的近代)へという時代認識を踏まえつつ、現代文化のあり方について考察した著作。
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『動いている庭 谷の庭から惑星という庭へ』
ジル・クレマン=著|山内朋樹=訳
みすず書房
価格 5,280円(本体4,800円+税)
発行年月 2015年02月
判型 A5
ISBN 9784622078593
フランスの庭師クレマンは本書において、植物の動きを中心として、そこに庭師をはじめ、昆虫や動物、来園者といったさまざまなアクターがかかわることによって形成される「動いている庭」というダイナミックなイメージを提示した。
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『ラインズ 線の文化史』
ティム・インゴルド=著|工藤晋=訳
左右社
価格 3,025円(本体2,750円+税)
発行年月 2014年06月
判型 B6
ISBN 9784865281019
インゴルドは、理性、確実性、権威、方向感覚といったものを暗示する直線を「近代性のイコン」になぞらえ、それとは別様の線の引き方を模索する。人類学的な知を動員して織りなされる、線をめぐる豊かな思索は、『ラディカント』における「形態=行程」の発想とも響きあうだろう。
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『ウォークス 歩くことの精神史』
レベッカ・ソルニット=著|東辻賢治郎=訳
左右社
価格 4,950円(本体4,500円+税)
発行年月 2017年07月
判型 四六判
ISBN 9784865281385
『災害ユートピア』や『説教したがる男たち』といった著作によって日本でも広く知られるようになった作家ソルニットが、「歩くこと」を主題に書き上げた壮大なエッセイ。多岐にわたる話題が詰め込まれており、読者の関心に応じてどのような読み方もできる一冊。
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『翻訳について』
ジョン・サリス=著|西山達也=訳
月曜社
価格 3,740円(本体3,400円+税)
発行年月 2013年12月
判型 B6
ISBN 9784865030105
現象学研究で知られるアメリカの哲学者による翻訳論。全4章からなり、各章では広義の翻訳、狭義の翻訳、無翻訳、翻訳不可能性といったテーマが扱われ、哲学史を中心にさまざまな翻訳論を渉猟しつつ多角的な考察が繰り広げられる。
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『翻訳の倫理学 彼方のものを迎える文字』
アントワーヌ・ベルマン=著|藤田省一=訳
晃洋書房
価格 3,080円(本体2,800円+税)
発行年月 2014年06月
判型 A5
ISBN 9784771025301
フランスの翻訳家にして翻訳理論家でもあったベルマンが1984年に国際哲学コレージュで行ったセミネールに基づく著作。〈他なるもの〉をすっかり同化してしまう「自民族中心主義的翻訳」に対して、〈他なるもの〉を〈他なるもの〉として受けいれる「翻訳の倫理」を説く。
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『〈エグゾティスム〉に関する試論/羈旅』
ヴィクトル・セガレン=著|木下誠=訳
現代企画室
価格 3,630円(本体3,300円+税)
発行年月 1995年01月
判型 B6
ISBN 9784773895018
セガレンは船医としてポリネシアと中国に滞在した経験をもとにして旺盛な執筆活動を行い、文化的な異質性に対する鋭敏な感性──当時としては驚くほど先進的なそれ──を反映させた「多様なるものの美学」を構想した。本書には、彼が「エグゾティスム」と呼んだこの美学の精華を見ることができる。
『ルーツ 20世紀後期の旅と翻訳』
ジェイムズ・クリフォード=著|毛利嘉孝・柴山麻妃・福住廉・有元健・島村奈生子・遠藤水城=訳
月曜社
価格 4,180円(本体3,800円+税)
発行年月 2002年03月
判型 A5
ISBN 9784901477017
移民や亡命も含む広義の「旅」に焦点を当て、この旅を文化の重要な源泉と捉えることから文化概念を問い直す諸論考を収める。タイトルにもなっているroutesは「経路」をあらわす言葉だが、本書においてはそこに「根源」を意味するrootsの意味が重ね合わされ、両者の関係性が問われる。
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『多様なるものの詩学序説』
エドゥアール・グリッサン=著|小野正嗣=訳
以文社
価格 2,640円(本体2,400円+税)
発行年月 2007年06月
判型 B6
ISBN 9784753102556
現代カリブ海文学を代表する作家が、クレオール化をテーマとして語った講演・対談集。講演・対談という形式もあり、著作ではややもすると難解な印象を与えがちなグリッサンの思想が、比較的平易なかたちで示されている。
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『文化の場所 ポストコロニアリズムの位相 新装版』
ホミ・K.バーバ=著|本橋哲也・正木恒夫・外岡尚美・阪元留美=訳
法政大学出版局
価格 5,830円(本体5,300円+税)
発行年月 2012年09月
判型 B6
ISBN 9784588099595
植民地を舞台として、さまざまな意味で自他の境界がゆらぐ瞬間に注意深く目をこらした論考群を収める。バーバにとっての「文化の場所」とは、あくまでこういったゆらぎをもたらす「中間地帯」にこそ存するものである。
『クレオールの想像力 ネグリチュードから群島的思考へ』
立花英裕=著
水声社
価格 6,600円(本体6,000円+税)
発行年月 2020年03月
判型 A5
ISBN 9784801004818
2018年に行われた国際シンポジウムから生まれた論文集。思想、文学、芸術文化、日本とのかかわりなど多面的な角度からクレオールについて考察した論考を収め、巻末には充実した文献目録、年表、小事典も付されている。クレオール研究において長く参照されるべき記念碑的著作。
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『アフリカの同時代美術 複数の「かたり」の共存は可能か』
川口幸也=著
明石書店
価格 4,620円(本体4,200円+税)
発行年月 2011年02月
判型 A5
ISBN 9784750333403
アフリカの部族美術は、19世紀後半から「プリミティヴ・アート」として西洋で注目を集めるようになった一方で、20世紀に当地で花開いたモダンアートは、西洋の美術史からは長らく無視されてきた。本書は、このアフリカの同時代美術をめぐる状況の推移を詳細にたどる。
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『ラテンアメリカ越境する美術』
岡田裕成=著
筑摩書房
価格 2,970円(本体2,700円+税)
発行年月 2014年09月
判型 B6
ISBN 9784480873774
西洋による植民地化からしばらくたつと、ラテンアメリカでは「単純にヨーロッパ的でも先住民的でもない、「植民地的」なもの」が形成されてゆく。本書はこの「植民地的」美術の実相を、絵画や彫刻のみならず建築や装飾も含めて広く俎上に載せることにより立体的に描き出している。
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『日本画とは何だったのか 近代日本画史論』
古田亮=著
KADOKAWA
価格 2,640円(本体2,400円+税)
発行年月 2018年01月
判型 B6
ISBN 9784047036253
「日本画とは何か?」という素朴でありながら答えるのが難しい問いに対して著者は、「クレオール絵画」という観点から応答する。近代日本画とは、伝統日本絵画が西洋絵画の受容によってクレオール化した絵画である、という前提に立ち、近代日本画の歴史を描き直そうとする意欲作。
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『ベトナム近代美術史 フランス支配下の半世紀』
二村淳子=著
原書房
価格 5,500円(本体5,000円+税)
発行年月 2021年07月
判型 A5
ISBN 9784562058457
フランス統治下のベトナム近代美術をテーマとして、宗主国から持ち込まれた「美術」概念がいかに現地において換骨奪胎され、新たな様式としての「ベトナム美術」成立に至ったのかを、ベトナム美術の誕生、発展、そして画家たちの多様な実践という三つの観点から綿密に明らかにした労作。
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『解放された観客 新装版』
ジャック・ランシエール=著|梶田裕=訳
法政大学出版局
価格 3,080円(本体2,800円+税)
発行年月 2018年05月
判型 B6
ISBN 9784588140501
ブリオーとの関係からは、「関係性の美学」への批判を含む「政治的芸術のパラドックス」がしばしば取り上げられる本書だが、表題作の「解放された観客」で焦点化される「翻訳」概念は『ラディカント』のキーワードにもなっており、両者を比較してみるのも興味深いだろう。
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『ソーシャリー・エンゲイジド・アート入門 アートが社会と深く関わるための10のポイント』
パブロ・エルゲラ=著|アート&ソサイエティ研究センター=訳
フィルムアート社
価格 2,200円(本体2,000円+税)
発行年月 2015年03月
判型 B6
ISBN 9784845914500
リレーショナル・アート以降の非物質な実践に依拠する芸術形態のなかでも、より「社会関与」への志向を強めたそれを「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」と呼ぶ。本書は、自身もアーティストである著者が、このソーシャリー・エンゲイジド・アートを10の観点から理論化した入門書。
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『人工地獄 現代アートと観客の政治学』
クレア・ビショップ=著|大森俊克=訳
フィルムアート社
価格 4,620円(本体4,200円+税)
発行年月 2016年05月
判型 A5
ISBN 9784845915750
2006年発表の「敵対と関係性の美学」で「関係性の美学」を鋭く批判したビショップが、20世紀の美術史を「参加」という観点から総括した大著。ソーシャリー・エイゲイジド・アート以降の芸術と社会の関係を歴史的視座から捉え直すうえで必読の文献。
『美学のプラクティス』
星野太=著
水声社
価格 2,750円(本体2,500円+税)
発行年月 2021年12月
判型 四六判
ISBN 9784801006157
リレーショナル・アートとソーシャリー・エンゲイジド・アートの違いについて「社会的転回」と「パフォーマンス的転回」から整理した論考や、ブリオーとランシエールの論争から出発して両者の美学の異同を論じた論考は、2000年以降の「関係性の美学」受容を考えるうえでも示唆に富む。