インテリア・スタイリングの秘訣を、図解とともにわかりやすくアドバイスする『北欧式インテリア・スタイリングの法則』。家で過ごす時間が増えている今だからこそ、自分の部屋をくつろげる雰囲気で暮らしやすいインテリアにしたいあなたへ、活用できるヒントに満ちた1冊です。
日本語版の刊行にあわせて、著者のフリーダ・ラムステッドさんからコロナ禍に寄せたメッセージをいただきました。年末年始は、本書を活用して自宅の部屋づくりに取りかかってみてはいかがでしょうか。
Illustrations: Mia Olofsson
コロナにやられていませんか?
この大変な時期に「もっとくつろげる家」をつくるための7つのステップ
家にいる時間が長くなり、外に出ればソーシャルディスタンスに気を配らなければいけない。今はそんな辛い時期ですよね。でもこれは絶好の機会でもあります。インテリアに手をつけてみませんか? 以前は気づかないふりをしていた問題に取り組んでみるとか。そうすれば、家が明日からすぐに──そして今後ずっと──快適になりますよ。
1.秩序と枠組みをキープする
家の外が不確実で混乱に溢れている今、家の中はそうならないように努力しましょう。こんな時期には、「秩序と枠組み」をキープすることが特に大事。物を並べ替えたり整理をしたり、ステイホーム中に一部屋もしくは引出しひとつずつ、気軽に手をつけてみませんか。一日ごとに家が素敵になっていくのを実感できますよ。見せる収納と隠す収納の割合、収納スペースが最適な配置になっているかどうかを確認してみて。物を収納する場所を変えたほうがいいのか、収納自体を動したほうがいいのか、それとも収納を増やしたほうがいいのかなども検討してみてください。
参考:第2章「[収納は2:8]ルール」より
この本でどんなテーマを扱ってほしいか、ブログの読者に意見を募集したところ、1位に挙がったのが「収納」でした。わたし自身が非常に恩恵を受けたのが、収納エキスパートのウェイ・ルーが「2:8」と呼ぶ法則です。持ち物の80%を隠し、20%は見せる。そうすることで、家の中の視覚的ノイズを最小限に抑えられます。このアプローチでは出し入れしやすい機能的な収納が、収納問題解決の手がかりになります。収納が家の中の動線沿いにくるように戦略的に配置を。全体を把握するために、まずは図面に各部屋の収納を描きこんでみましょう。家のどこにありますか? その収納に扉はついていますか? どのように配置されていますか? 「見通し線」上には、扉のないオープン収納はなるべく避けましょう。複数の部屋の印象を損なってしまうおそれがあります。
図面に描いてみると、収納が家全体に均等に分散しているかどうか、どこに多くてどこに足りないのかが明確になります。マーカーペンを2色使って、扉のある収納とオープン収納を色分けしましょう。収納スペース自体が足りないのか、扉つき収納とオープン収納の割合が問題なのかが見えてきます。
2.仕事のスペースをつくる
仕事場というのは寝泊まりする場所ではないですよね。だから自宅勤務になった今も、仕事場で暮らすことに違和感を感じているはず。スペースを明確に分け、きっちりルーティーンを守ることが大事です。仕事時間に明確なスタートと終わりを設けましょう。家族に邪魔されないように日中も自分の寝室に閉じこもって仕事をしているとしてもね。朝はシャワーを浴び、服に着替えて、決められた時間に仕事を始め、終えましょう。終わったらパソコンや仕事のプロジェクトは片付けてしまい、目に入らないようにします。あとはプライベートな時間を楽しみましょう。
仕事中は快適に座れるようにしてください。ちょうどよい角度の椅子に、適当な高さのデスクが必要です。そこを照らすための優れた照明も。
アドバイス:あなたが右利きなら、直接光の作業用照明を左側から斜め下に向かって照らすのがおすすめです。
参考:第8章「仕事部屋」より
自宅で勉強や仕事をする人、趣味の部屋がある人は、人間工学を取り入れて、長時間座ったままでも肩や腰を痛めないようにしましょう。わたしは自分の経験から、パソコン、本、ノートが置けるサイズのデスクを選ぶようアドバイスしています。パソコンで作業するといっても、手書きでもメモをとったりするし、教科書も広げられたりしたほうがいいからです。
- テーブルトップの寸法は75×120~150㎝。それだけあればパソコンや資料が置けるし、手や腕のためのスペースも確保できます。テーブルトップの奥行は、薄型ディスプレイを置くなら少なくとも80㎝、デスクトップパソコンや厚いモニターディスプレイなら約100㎝は必要です。
- オフィスデスクの高さは通常約75㎝ですが、パソコンで作業する場合は少し低めになります。
- オフィスチェアは座面が40×50㎝、座面高が41~45㎝です。
- 一般的なオフィスチェアは、引き出したり立ち上がって横に出るために、約70㎝のスペースが必要です。回転する椅子なら約60㎝。
- ただし、キャスターつきの回転オフィスチェアは、床の上をスライドするため、それよりもスペースが必要です。普通の椅子と同じように70㎝を確保してください。
- オフィスチェアのアームレストは、上下左右に調整可能で、簡単に脇によけたり取り外したりできるものがよいでしょう。椅子に座っている人の体型に合わせられるし、デスクぎりぎりまで椅子を近づけたいときにも邪魔になりません。
- デスクの下には脚を入れるためのスペースが必要です。邪魔になるような厚い天板、書類キャビネットや幅をとる脚などは避けましょう。
3.家族全員のためのスペースを
オープンな間取りの家をスタイリングするとき、プロのインテリアデザイナーはゾーンに分けて作業をします。そのアプローチをあなたの家にも利用して、模様替えをしてみてください。家族全員が同じ屋根の下でそれぞれのニーズに対応できるような形に。みんなが一緒に家にいるようになった今、一人ひとりが自分のスペースを確保することが今まで以上に大切になっています。物理的に自分の部屋がなくても、このことを念頭に置いてみてください。全員が快適に過ごせるように、スペースをどう配分するか。家族で相談してみてください。
アドバイス:人によって周囲の環境、音、感情的な刺激への感受性が異なることを尊重してください。また、ニーズと希望はしっかり区別してください。必要な物と欲しい物は必ずしも同じではありませんから。
参考:第1章より
たとえば……
- 社交的で人と会うのが好きな人→住まいを社交のために最適化しましょう。大きなダイニングテーブルに投資して、家族の人数より多い椅子とソファのスペースを準備。そうすれば、気軽にゲストを迎えられます。
- 人と集まるよりも、自分の趣味に没頭するタイプ→それに合うようなインテリアにしましょう。どうせ使わないのに、大勢座れるソファや大きなダイニングテーブルに場所を割く必要はなし。
- ストレスを感じている人→身体を休め、リラックスできるよう、家を最適化しましょう。ぱちぱち音を立てる暖炉や、心休まる絵画を用意して、リビングを平和と安らぎの場に。本を読んだり、音楽を聴いたり、のんびりしたり──手軽にそれができる場所をつくってみて。
- 家族全員、スマートフォンばかり見ている→リビングの家具を、コミュニケーションや会話が増えるような配置にしましょう。ソファをテレビに向けるのではなく、ソファ同士を向かい合わせにしたり、ソファテーブルを囲むようにアームチェアを並べます。
- 聴覚過敏→耳から入る刺激が最小限になるようにしましょう。キッチンの換気扇や食洗機などの白物家電は音の静かな製品を選び、音響も考えて家具を配置。そうすることで、部屋の反響や足音を抑えられます。
- 視覚過敏→視覚的なノイズを最小限に抑えましょう。収納は扉が閉まるもの、こまごましたものをさっと片づけて隠せるような方法も考えて。
4.ついに……壁に絵画を飾ろう!
家の壁には何が飾ってありますか? 壁を絵や写真でスタイリングするのは、ステイホームにぴったりのプロジェクト。まだ手をつけられていなかった部屋はありませんか? ついに壁に釘を打って絵を飾るときがきたのです。え、飾るものがない? 大丈夫、自分でもつくれますよ! それもまた、すぐに実践できるクリエイティブなプロジェクトです。
参考:第6章「絵を飾ろう」より
壁にデコレーションがなければ、完璧な家とは言えません。それなのにかなり多くの人が、空っぽのままの壁を長い間そのままにしています。壁に穴を開けたくない、絵を飾って失敗したらどうしよう、と恐れているのでしょう。
重い腰を上げられるよう、ひとつアドバイスをしましょう。失敗したとしても絵を飾ってみた壁のほうが、空っぽのままの壁よりもずっといいはず! 斜めになったフレームを直すのは簡単ですが、空っぽの壁から生じる「真空」はごまかしようがありません。
5.「静物画」をつくってみよう
今は大規模なリノベーションや模様替えをするタイミングではないかもしれません。可能性もリソースも限られていますからね。でも、すでに家にあるものを使って美しい「静物画」をつくり、目をなごませることはできます。お気に入りのアイテムをまとめたコーナーはアイキャッチャーになるし、装飾としてだけでなく機能性も兼ね備えた存在です。以下に紹介するテクニックはキッチンからバスルーム、リビングからベッドルームまで、あらゆる部屋に取り入れられます。
・分散させずに集める
基本的には、分散させずに1か所に集めましょう。ひとまとめにして飾ることで目が情報を処理して秩序を感じることができます。とっておきの場所に集めるか、トレイをベースにつくります。
・奇数の法則
インテリアデザイナーが「静物画」をつくるときには、奇数で作業することが多いです。左右対称のバランスは避けて、雑貨は3、5、7、9個あしらってください。
・三角構図
個々の雑貨からズームアウトして、組み合わせたときにできる外形や輪郭を見てみてください。簡単なテクニックとしては、三角形またはスパイラルを形成するように配置し、視線を導くことです(本書の「黄金比」も参考に)。
・小さいお子さんのいる方へのアドバイス
ソファテーブル上のトレイに「静物画」をつくると、子どもが起きているときは簡単にトレイごと棚の中に隠すことができます。子どもが寝たら手軽に取り出すことができますし、こうやって子どもが部屋にあるものをおもちゃにしてしまう危険性を減らせます。
参考:第6章「[静物画]をつくる」より
人の目を引いたり、実現したい雰囲気を強化するために、インテリアデザイナーはよくアイテムをグルーピングします。そんなワンシーンのことをスウェーデン語で「静物画」と呼びます。雑貨を1か所にまとめて飾ってある写真を見たことがありますよね。ディテールに富んだインテリアにまとまった印象を与えてくれるテクニックです。そんな「静物画」を美しい構図に仕上げるにはどうすればよいでしょうか。
わたしはこれまで「静物画」をいくつもじっくり観察してきて、そこには共通した構図や構成要素があることに気づきました。グルーピングするアイテム数によっては、ひとつのアイテムが複数の役割を担うこともありますが、ともかく、始める前に探してほしい材料がこちらです。
重要な材料
- 高いポイント:長いキャンドルスタンド、背丈の高い植物や切り花など
- 重いポイント:丸い花瓶や器、その他、視覚的に重いアイテム
- フォーカルポイント:あなたの「静物画」の主人公になるディテール
- 有機的なもの、不規則なもの:自然の中に存在するもの、天然素材でできたもの、陶器、工芸品など
- 水平な線:横置きにして重ねた本、小箱、平たい長方形の器など
- 垂直な線:縦長の雑貨やキャンドルスタンドなど
- 隙間を埋めるもの:小さなパーソナルアイテム。あなたの「静物画」の空間を埋め、命を吹きこむもの。美しい石や貝、子どもがつくった作品など
6.植物の世話をしよう
植物には人間の心を落ち着かせる効果があるそうです。それに、室内の空気をきれいにしてくれます。ステイホーム中は、「緑の友人」の世話をする絶好の機会です。鉢植えの植物を新しい土や大きな鉢に植え替えたり、挿し芽や根切りをしたり。いま種を蒔いておいて、暖かくなったらバルコニーに飾ったり庭に植えたりもできますね。種を蒔くことは未来を信じること──これまでになく必要とされている考え方です。
参考:第6章「植物をスタイリング」より
生きた植物はインテリアにとって重要な要素です。人工的な素材がほとんどの空間に、自然の要素を与えてくれます。部屋の用途や窓の方角に適した植物で窓辺を飾るのはもちろん、居心地のいい雰囲気をつくるためのテクニックがたくさんあります。
7.宿題をしよう
家で多くの時間を過ごしているなら、自宅の改善点を分析したり検討したりしてみましょう。二重の意味でホームワーク=宿題をするわけです。考えて、さらに考え直して、アイデアを書き留め、時間が許せばあなたの家のために明確なムードボードをつくりましょう。これをやっておけば、ステイホームが終わったときにすぐにリノベーションや模様替えを始められます。
・あなたは本当はどんなふうに生活したいですか? 今それを妨げているものはなんでしょうか。あなたの家にはどんなニーズや日常的な配慮が必要で、それはどうすれば改善できそうですか?
・各部屋にどんな雰囲気がほしいですか? どうすればそんなふうに仕上がるでしょうか。イメージしている雰囲気を高めるには? その場合のスタイリングにどんな選択肢がありますか?
・各部屋のどこにフォーカルポイントがありますか? あなたはどこにフォーカルポイントを置きたいですか? それは自然に存在するポイントでしょうか。問題のある部分から目をそらせる必要がありますか?
・好きな色は? そしてその理由は? 好きだから眺めているだけでなく、なぜ自分が特定の色に惹かれるのか考えてみましょう。ポジティブな気持ちにさせてくれる色──そこにどんな思い出や連想が浮かびますか? そういったことが貴重なインスピレーションを与えてくれます。その色をあなたの家でも活かしてみましょう。
・目の見えない人に、あなたの家のスタイリングをどう説明しますか? 香り、手触り、部屋の中を動き回るときの音。身体にどんな感触を与えてくれますか? あなたはどの部分を楽しみ、どの部分に無意識に不快感を感じていますか? これはとても面白いメンタルエクササイズで、予期しなかった方向にあなたを導いてくれるかもしれません。あなた個人が何を楽しんでいて、自分の家を心地よくするためにはどこを変えればいいのかが見えてきます。
(より具体的で詳細なメソッドについては、ぜひ本書をお読みください。)