有史以来最も愛され、最も創作の難易度の高いジャンル、それは「アクション」──
どうすれば、これまでに生み出された膨大な数のアクション作品とは違った、独自性のある作品を生み出せるのか。クリシェを乗り越え、極上のアクション作品を生み出すための創作バイブルが待望の邦訳。
「現代のアリストテレス」ロバート・マッキーが教える「アクション」のすべて
「われわれが本書を執筆したのは、アクション作品の作り手であるあなたに向けて、この魅力あふれるジャンルにおける探求の道標を示し、気高い伝統を受け継いだ傑作を生み出すきっかけを与えるためだ」
古代ギリシャの『オデュッセイア』や『イリアス』、古代インドの『マハーバーラタ』、そして古代メソポタミアの『ギルガメシュ叙事詩』──。人類は古代から「生と死」をテーマにした物語を語り続けてきました。自己犠牲の精神を持つヒーローが自分の命をかけ、自己中心的な悪役を打倒し、不運な被害者を救い出す、これが「アクション」というジャンルの特徴です。この3,000年で「アクション」は世界で最も人気のあるストーリーテリングのジャンルとなりました。
最高の脚本家・作家が世に送り出してきた優れたアクション作品は、多くの観客・読者を魅了し、興奮を引き起こしてきました。しかし「アクション」は、その人気ゆえ、これまでに膨大な数の作品がつくられ、現在では創作が最も難しいジャンルとなっています。
本書では『ダイ・ハード』『スター・ウォーズ』シリーズ『ダークナイト』『マトリックス』『アベンジャーズ/エンドゲーム』など現代を代表するアクション作品を事例に、ジャンルを構成する「四つの要素」について解説。また、アクション作品に必須の3つの役柄(ヒーロー、悪役、被害者)や、ストーリーを構成するさまざまな出来事(契機事件からクライマックスまで)、そしてアクションにおける16のサブジャンルについても詳しく解説しています。
本書の著者のひとりロバート・マッキーは、世界で最も著名なシナリオ講師と称され、約40年にわたり世界中を飛び回り、脚本家、小説家、劇作家、詩人、ドキュメンタリー制作者、プロデューサー、監督など、多岐にわたるクリエイターの育成に尽力してきました。これまでに10万人以上が彼の講義を受講し、その中からアカデミー賞受賞者が70名(ノミネート250名)、エミー賞受賞者が200名(ノミネート1,000名)が誕生しています。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン監督や、ピクサーの脚本チームもマッキーの教えを受けたことで知られています。
また、マッキーは「物語創作のバイブル」と評される『ストーリー』『キャラクター』『ダイアローグ』から成る創作指南三部作を執筆。いずれも世界的なベストセラーとなり、多くのクリエイターに影響を与えています。
本書でマッキーは、脚本家でありライティング講師でもあるバシム・エル゠ワキルと共に「アクション」ジャンルの特徴や創作上の課題を明らかにしながら、独創性あふれる作品を作るための方法を探っています。映画脚本だけではなく、マンガ、アニメ、小説、ゲームなど「アクション」ジャンルに挑むすべてのクリエイター必読の一冊。
ザック・ペン(『レディ・プレイヤー1』脚本、『アベンジャーズ』原案)推薦!
アクション作品はその人気ゆえに、いまや創作するのが最も困難なストーリーテリングのジャンルとなり、独創性を発揮するのがきわめてむずかしい。前世紀だけ見ても、同じような作品が何万、いや何十万とページ上やスクリーン上やゲームの画面上に出現してきた。見渡すかぎり、陳腐なクリシェばかりだ。犯罪やホラーなど、作品数の多いジャンルは、すでに膨大な数のアクション作品で飽和状態にある。
どうすれば現代の作家は、これまで散々観たり読んだりしてきた物語とはまったく異なるアクション作品のシーンを、未来のファンのために生み出せるのだろうか。どうすれば古くからつづくクリシェとの闘いに勝つことができるのか。単なるよい作品ではなく、極上の作品を生み出すにはどうすればいいのか。本書は難題に光をあて、作家がうまく独創性を発揮できるよう導いていく。
––本書「はじめに」より
本書で言及される主なアクション映画
『ダイ・ハード』(1988)
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)
『ターミネーター』(1984)&『ターミネーター2』(1991)
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作(1985、1989、1990)
『メン・イン・ブラック』(1997)&『メン・イン・ブラック2』(2002)&『メン・イン・ブラック3』(2012)
『スター・ウォーズ』シリーズ(1977~)
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)
『ダークナイト』(2008)
『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)
『マトリックス』(1999)
『LOOPER/ルーパー』(2012)
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)
目次(仮)
イントロダクション
はじめに――アクション作品への愛
第1部 アクション作品の中核
1 現代のジャンル
2 アクション作品における中核の価値要素
3 アクション作品における中核の登場人物
4 アクション作品における中核の出来事
5 アクション作品における中核の感情
第2部 アクション作品の登場人物
6 アクション作品における三つ巴
7 力
第3部 アクション作品の設計
8 契機事件
9 言動の中核
10 マクガフィン
11 戦術
12 見せ場
13 ほめる台詞とけなす台詞
14 重大局面とクライマックス
15 ペースと発展性
16 深さと広さ
第4部 アクション作品のサブジャンル
17 アドベンチャー
18 エピック
19 デュエル
20 スリラー
21 混交と融合
22 ハイ・アドベンチャー
23 型と公式
原注
謝辞
訳者あとがき
プロフィール
[著]
ロバート・マッキー(Robert McKee)
1941年生まれ。世界で最も名高く、信頼されているシナリオ講師。全米のみならず、世界各地でセミナーを開催している。これまでに40年近くにわたって、数々の脚本家、小説家、劇作家、詩人、ドキュメンタリー作家、プロデューサー、演出家などを育成してきた。マッキーの指導を受けたなかからは、アカデミー賞受賞者が70人以上、アカデミー賞候補者が250人以上、エミー賞受賞者が200人以上、エミー賞候補者が1,000人以上生まれている。物語創作術三部作と呼ばれる『ストーリー』『ダイアローグ』『キャラクター』(以上、フィルムアート社)は世界各国で読まれ、クリエイターを支えている。
バシム・エル゠ワキル(Bassim El-Wakil)
10年以上にわたってロバート・マッキーとともに活動する脚本家兼ライティング講師。ライター向けのポッドキャスト『THE STORY TOOLKIT』と『THE WRITER’S JIHAD』で司会を務める。
[訳]
越前敏弥(えちぜん・としや)
1961年生まれ。文芸翻訳者。東京大学文学部国文科卒。学生時代には映像論やシナリオ技法なども学び、卒論テーマは「昭和50年代の市川崑」。おもな訳書に『ダイアローグ』『ストーリー』『キャラクター』(以上、フィルムアート社)、『オリジン』『ダ・ヴィンチ・コード』『Xの悲劇』『クリスマス・キャロル』(以上、KADOKAWA)、『大統領失踪』『解錠師』『災厄の町』(以上、早川書房)『夜の真義を』(文藝春秋)、『ロンドン・アイの謎』『真っ白な嘘』(以上、東京創元社)など。著書に『翻訳百景』(KADOKAWA)、『文芸翻訳教室』(研究社)、『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文』(ディスカヴァー)など。