ゴダールの晩年の活動を共にしたニコル・ブルネーズが綴る
最も先鋭的かつ最も情熱的なゴダール論集成が待望の邦訳!!
2022年9月13日にこの世を去ったジャン゠リュック・ゴダール。晩年の作品・展示における協力者の一人であり、フランスにおける映画研究においていま最も重要な存在であるニコル・ブルネーズが、1990年代から現在までに書いたゴダールについての論考やゴダールとの仕事についてのテクスト、晩年の作品をめぐるゴダールとの共闘の記録、そしてもはやそれ自体がひとつの作品といっても過言ではないゴダールからのEメールをも収めた、最も先鋭的で情熱に満ちたゴダール論集。
ゴダールにおいては、あらゆる身振り、あらゆる実践、構想から公共空間での流通に至るまでの創造のあらゆる局面が、芸術をめぐる命題に姿を変える。「芸術」という語がここで指し示すのは、構成された原則と制定された象徴回路ではなく、表象にまつわる信仰と規則の総体──表象のパラメータと道具と形態と機能と神話──に関する批判的で、ときに暴力的な、絶え間のない探究である。ゴダールのおかげで、「芸術」は創造的不服従という前代未聞の実践の通称でありつづけている。『映画史』の作者はその点において、20世紀と21世紀にふさわしい芸術の概念を生み出した――フランシスコ・デ・ゴヤ、フリードリヒ・シラー、あるいはアルチュール・ランボーがそれぞれの時代において芸術の概念を生み出したのとまったく同様に。(本文より)
目次
序:イメージの危険を冒した理論
I:聖像崇敬、機知、実践
「入れ子状に破損した」映画──ジャン゠リュック・ゴダールとイメージをめぐるビザンティン哲学
ジャン゠リュック・ゴダール、機知、形式的創意(批評と象徴的権力の関係についての予備的な覚書)
批判的思考とその対処法──ジャン゠リュック・ゴダール、ルートヴィヒ・フォイエルバッハ、グラッキュス・バブーフ
(セミネールのための覚書)
ジャン゠リュック・ゴダール、ニューズリールとの接点(3つの短い証言)
Ⅱ:映画作品の爆発
予見の技法──『アルファヴィル』とGRAV
『シネトラクト 1968番』と『赤』──ジェラール・フロマンジェとジャン゠リュック・ゴダールの共作
[資料]『王たち』──ジャン゠リュック・ゴダールの忘れられたシネトラクト
再構築中──『パート2』
素描の力学(ディナミック)──『アマチュアのルポルタージュ(展覧会のマケット)』をめぐって
「すべての芸術がそれぞれの驚異を生み出した。統治の芸術は怪物しか生み出さなかった」(サン゠ジュスト、1793年)──『ゴダール・ソシアリスム』について
Ⅲ:JLGのために仕事をする
ジャン゠リュック・ゴダール『イメージの本』をファブリス・アラーニョ(左側)とジャン゠ポール・バタジア(右側)と一緒に見ながらすばやく書き留めたメモ
ジャン゠リュック・ゴダールから送られてきたいくつかのメッセージ
見えないもの/リテイク/ジュデックス/精神よ、そこにいる?/不平分子に味方して/情報/フォト・グラフィ/もう一回/新しいラストの編集・作業用プリント/感謝/「イメージは……/失われた小教区/おおい! おおい!/Fwd: 勝利まで?/探偵/もうすぐクリスマス!/おやすみなさい/新しい最終版DVD(NDF)/「すべての読まれたページの上に……」/「彼はいま……/同時に/あの時代に……/よく頑張った(ナイス・エフォート)……/ジルは……/……する権利を持つためには/……と談判する/君の作品をまた磨き、さらに再び磨きたまえ/昔のバカロレア試験・哲学/??????????????/デジタルは従う……/〔件名なし〕/……だろうか/こん にちは、友よ……/絵葉書の数々/ぼくらは……/大いなる感謝を……/願わくば……/ああ、人生を誤って/イポリットの3つの人生/彼は……/〔件名なし〕/穏やかな日曜日……/2020年9月28日のショートメッセージ/悲しみよこんにちは……/愛の尺度は……/メリークリスマス、君たちの……/人々は忘れているが……/なるようになれ/アリアドネは……/ニューヨークとモスクワが……/この最後の……/ヴォルスだけが考えてくれた……/フェイクニュース/おお/ボルヘスによれば……/ニコラウス・クザーヌスによれば/お好みで/ピランデッロはこう言った……
実験映画作家ジャン゠リュック・ゴダール──スイスその他で表明し、あるいは夢見た考察、理性が私たちに一般化しないようにしているところの
[資料]ジャン゠リュック・ゴダールが再読したがっていた文章――「マネ家のほうへ」(文=ジャン゠リュック・ゴダール)
「可視のものの前史」──『映画「奇妙な戦争」の予告篇(第一の撮影)』について
Ⅳ:行商する──3つの上映プログラム
多数のゴダール、1本の映画を裏返すこと
あなたのエゴに敬意を、ゴダールさん
ジャン゠リュック・ゴダールのプロ゠モーション──予告篇・CM・ミュージックビデオ・企業PR映画
エピローグ:LAST LEFT AND FAST
初出一覧
謝辞
訳者あとがき
索引