中世、近未来、異世界……お決まりの世界観のその先へ!
不思議な力が存在する魔法の世界、ナショナリズムが支配する監視社会、コンピュータが作りあげた仮想現実の世界……寝食を忘れて没頭してしまう作品には、入念に作りこまれた世界観が大きな魅力となっています。
本書は、登録者数100万人超えの作家・YouTuberが、すぐれた伏線の張り方から、魅力的な主人公・敵役の作り方、魔法のシステムを築く方法、宗教の描き方、帝国の栄枯盛衰の見せ方まで、読者をのめり込ませるための世界観を構築する方法を徹底伝授。
例として扱われる作品は、『ハリー・ポッター』、『指輪物語』、『氷と炎の歌』、『マトリックス』、『スター・ウォーズ』といった超人気作だけでなく、『鋼の錬金術師』、『コードギアス』、『七つの大罪』などの日本作品も。古今東西のファンタジー/SF作品から楽しく学べる、実用的な物語創作論になっています。
あなたが書くストーリーに読者を没入させるためには、その人の信念を一時停止させることが大切であり、世界観の構築はその重要な一部です。これは、物語の焦点ではないかもしれないけれども、考え抜いていることが感じとれる世界へと読者を誘いこむ要素をストーリーに加えるということです。(中略)作家は、人間の社会や歴史から親近感の湧く要素を引き出して、それをリアリズムの土台に据えます。さらに、自然に生じるちがいを探求することで、ストーリーが単なるファンタジーではなく、魅力的なものになります。(本文より)
目次と項目
まえがき
第1章 プロローグについて
フック
必要性
状況説明
独特のトーン、ムード、テーマ
長さ
検討するべき事例
第2章 最初の章について
ミニ三幕構成
ストーリーの書き出し
トーン
オープニングのフック
第3章 状況説明についての考察
状況説明をどう処理するか1――視点人物
状況説明をどう処理するか2――物語のヤマ場とする
状況説明をどう処理するか3――「プールで泳ぐローマ教皇」
どのような情報を伝えるか1
どのような情報を伝えるか2――問題解決のための説明
どのような情報を伝えるか3――動機の説明
どのような情報を伝えるか4――作者が説明したいと思うこと
読者を尊重する
いつ状況説明を伝えるべきか
第4章 伏線を張る
プレシーン
異例の描写
「チェーホフの銃」
象徴、予言
異例の行動
その他の伏線の方法
物語の構造、トーン、結末
第5章 敵役の動機
価値観と規模
反映
受動的または能動的な登場人物
「いい人」な敵役
世界を救う(セーブ・ザ・ワールド)ストーリー
第6章 ヒーローと敵役の関係
構造
イデオロギー
共通点
行き過ぎた共通点
作者のビジョンを示すのに不可欠な「完全悪」の敵役
第7章 最終決戦
一次対立と二次対立
一次対立と二次対立の使い分け
最終決戦
第8章 選ばれし者
脇役
運命のクエスト
登場人物の成長と物語の構成
第9章 ハードマジックシステム
サンダースンの第一のルール
サンダースンの第二のルール
スタイル
第10章 ソフトマジックシステム
緊張感
視点
マジックシステムはいくつ持つべきか?
スタイル
第11章 マジックシステムとストーリーテリング
マジックシステムと世界観の構築
マジックシステムと物語
マジックシステムと性格描写
曲げの技についてのマジックシステムの仕組み
アバター 最後にひとこと
第12章 複数の神を登場させる
宗教的信念
さまざまな宗教的信念
多神教はどのように広まるか
宗教と文化のかかわり合い
多神教とマジックシステム
宗教と政治のかかわり合い
宗教と経済のかかわり合い
新しい神話を作り出す
宗教上の約束事と類型
人間の上に立つものか、異世界にいるものか
登場人物の人格形成
神々の存在とは
第13章 隠された魔法の世界
魔法の世界はどのようにして隠されているのか
発見への対処
社会の基本的機能
なぜ隠れつづけるのか
人口と面積
隠された世界と物語
第14章 帝国を築く
資源を求めて
安全を確保する
ナショナリズム
帝国はいかにして拡大するか――技術力の勝利
第15章 帝国を存続させる
コミュニケーション
支配
商業
帝国と変化
第16章 帝国の崩壊
現実と革命
継承争い
コミュニケーション
支配
商業
帝国崩壊の余波
第17章 小説の構想を立てる
建築家と庭師
逆方向に考えてみる
訳者あとがき
プロフィール
[著]
ティモシー・ヒクソン(Timothy Hickson)
作家・YouTuber。YouTubeチャンネル「Hello Future Me」を運営し、執筆と世界観構築に関する情報を提供している。同チャンネルのコンテンツをもとに本書および『On Writing and Worldbuilding: Volume Ⅱ』『On Writing and Worldbuilding: Volume Ⅲ』を執筆。創作術に関する書籍のほかに、短編小説集『A Catalogue for the End of Humanity』を発表している。
[訳]
佐藤弥生(さとう・やよい)
英日翻訳者。幼少期を返還前の香港で暮らす。商社などの勤務を経て、国内メーカー、在日米海軍などで20年以上技術翻訳に携わる。訳書に『映像編集の技法』『「書き出し」で釣りあげろ』『感情を引き出す小説の技巧』(以上フィルムアート社/共訳)、『ダイヤモンドを探せ』(KADOKAWA)などがある。本書では、第3章、第4章、第12章〜第17章の翻訳を担当。
茂木靖枝(もぎ・やすえ)
英日翻訳者。ロンドンで英語とコンピュータを学ぶ。金融系システム会社や翻訳会社などの勤務を経て、現在は産業翻訳から出版翻訳まで幅広く手がける。訳書に『映像編集の技法』『「書き出し」で釣りあげろ』『感情を引き出す小説の技巧』(以上フィルムアート社/共訳)、『ザ・シークレット・オブ・ジ・エイジズ』(KADOKAWA)などがある。本書では、まえがき、第1章、第2章、第5章〜第11章の翻訳を担当。