「機械で読む」ことで何ができるのか?
デジタル・ヒューマニティーズ×日本文学研究から
生まれた驚くべき成果。
デジタル時代の文学リテラシーがこの一冊で
つかめる、最前線の研究をいち早く翻訳!
数字と文学のあいだの概念上の分断を超えて、批評理論と統計学・計量的読解を融合した新たなアプローチから、 言語やテキストにひそむ人間の認識の問題にせまり、日本文学の読み直しを通して世界文学へと接続する。
データ・サイエンスの影響をうけた北米発の〈デジタル・ヒューマニティーズ〉の手法をつまびらかにする入門書にして、文学研究に量的革命を巻きおこす挑戦の書。
デジタル情報化とAI革命が猛スピードで進行しつつある現在、人文学においてもデジタル技術を研究に用いた〈デジタル・ヒューマニティーズ〉が注目されている。文学研究における〈デジタル・ヒューマニティーズ〉は北米で独自の発展をとげ、膨大なデータをコンピュータで処理し、ジャンルや文体といった大きな対象にアプローチする手法が確立されつつある。 日本文学に対して初めて本格的にこの手法を適用した本書は、夏目漱石の文学論にさかのぼりながら日本におけるデジタル思考の文芸史を概観し、青空文庫を例にテキストのアーカイヴとサンプルの意味を分析する。さらに「私小説」というジャンルの謎や、ジェイムズ・ジョイスで広く知られる「意識の流れ」の技法と日本の近代文学の関係、そして大日本帝国の時代の日本語小説における人種の表象がどのような記述によって生み出されてきたのかを、テクノロジーを駆使して膨大なテキストを解析することで明らかにする。
数字で文学を読み解き、文学研究における数字の値打ちを吟味する、グローバル情報化時代の文学研究を実践する必読の一冊。
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日本文学者・翻訳家 カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授
マイケル・エメリック氏推薦!
明晰かつ雄弁で、主張には細心の注意が払われた『数の値打ち』は文学研究へのコンピュータ・アプローチの歴史と現況をめぐる魅力的な案内であり、ケース・スタディそれ自体も豊富かつ説得的、しばしば驚きである。この本を長年待ち望んでいたのは私ひとりではないはずだ。
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私が目指したのは、文学研究の内部にしっかりと根ざした立場からコンピュータ手法に問いかけること──そう、そうした手法と文学をめぐるアイデアとのあいだの対話の歴史を取りもどすこと。今日における学術的読みの実践をいかに補いうるか、あるいはいかに揺るがしうるかを理解すること。将来、知の構造の進化と文化資料アーカイヴの新展開によって変容するディシプリンを思い描くこと。知の思潮が変わりつつあっても、私にとってこれらが文学研究者にとって重要かつ不可欠な課題であることに変わりはない。
(「日本語版への序文」より)
メディア掲載
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kotoba 2024年秋号にて、訳者の坪野圭介さんによる寄稿が掲載されました!2024.09.06
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Synodosメールマガジン(吉良貴之さん)2023.12.18
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週刊東洋経済2024年12月9日号(評者:砂原庸介さん)2023.12.09
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ブックファースト新宿店企画「名著百選」で円城塔さんが推薦!2023.11.15
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産経新聞 2023年10月22日号で短評が掲載されました!2023.10.22
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YouTubeチャンネル #哲学の劇場で紹介されました!
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日本経済新聞 2023年10月14日号で書評が掲載されました!(評者:三中信宏さん)2023.10.14
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週刊読書人 2023年11月3日号「文学芸術」で、書評が掲載されました!(評者:山本貴光さん)2023.11.03
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週刊文春 2023年10月12日号「私の読書日記」で、書評が掲載されました!(評者:吉川浩満さん)2023.10.12
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読売新聞 2023年9月16日号 夕刊で、訳者の秋草俊一郎さんによる寄稿が掲載されました! 「日本文学 語彙データで読む」2023.09.16
目次
日本語版への序文
序章 数の不確かさ
第一章 事実と差異
第二章 アーカイヴとサンプル
第三章 ジャンルと反復
第四章 影響と判断
第五章 言説とキャラクター
エピローグ 数の差異
補遺
訳者あとがき
索引
プロフィール
[著]
ホイト・ロング(Hoyt Long)
1976年、オレゴン州ポートランド生まれ。オレゴン大学を卒業後、ミシガン大学アナーバー校で博士号を取得。近代日本文学を専門とし、現在、シカゴ大学東アジア言語文化研究科教授。シカゴ・テキスト・ラボを主宰している。著書に『平らでない地面の上──宮沢賢治と近代日本における場所づくり』(2012年、未訳)がある。
[訳]
秋草俊一郎(あきくさ・しゅんいちろう)
1979年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。現在、日本大学大学院総合社会情報研究科准教授。専門は比較文学、翻訳研究など。著書に『「世界文学」はつくられる 1827–2020』、『アメリカのナボコフ──塗りかえられた自画像』など。訳書にクルジジャノフスキイ『未来の回想』、バーキン『出身国』、アプター『翻訳地帯──新しい人文学の批評パラダイムにむけて』(共訳)、レイノルズ『翻訳──訳すことのストラテジー』、ヴェヌティ『翻訳のスキャンダル──差異の倫理に向けて』(共訳)などがある。
今井亮一(いまい・りょういち)
1987年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。現在、立正大学文学部特任講師。専門は比較文学など。著書に、『路地と世界――世界文学論から読む中上健次』、『スヌーピーのひみつ A to Z』(共著)。訳書に、ハント『英文創作教室 Writing Your Own Stories』(共訳)、モレッティ『遠読──〈世界文学システム〉への挑戦』(共訳)、アプター『翻訳地帯』(共訳)、ボール『スヌーピーがいたアメリカ──『ピーナッツ』で読みとく現代史』など。
坪野圭介(つぼの・けいすけ)
1984年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、和洋女子大学国際学部助教。専門はアメリカの文学と文化。論考に、「マクロに読む/ミクロに読む──キングの小説作法」(『kotoba』第40号)など。訳書に、アプター『翻訳地帯』(共訳)、ブラット『数字が明かす小説の秘密──スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで』、キッド『判断のデザイン』、シールズ&サレルノ『サリンジャー』(共訳)、ハイスミス『サスペンス小説の書き方』など。