物語の「森」を抜けて

なぜストーリーには構造が存在するのか

ジョン・ヨーク=著
府川由美恵=訳
発売日
2025年2月14日
予価
2,500円+税
判型
四六判・並製
頁数
464頁(仮)
ISBN
978-4-8459-2127-0
Cコード
C0074
原題
INTO THE WOODS

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すべての物語を書きたい人/楽しみたい人に贈る、ストーリーテリングの「虎の巻」。
これまでの脚本術や創作術が教えてくれなかった、物語の「なぜ」を探求し、これ一冊で解き明かす。

映画、ドラマ、演劇、小説──
時代を超えて息づく面白さの法則と理由をたどる、新しいストーリーの旅へ。

なぜ子どもの書く物語は、何世紀も昔から語られてきた物語形式をくり返すのでしょうか。
なぜ私たちは過去にあった物語の再発明を続け、それでいてそれを新鮮で楽しいと感じるのでしょうか。

英国のドラマプロデューサーとして数々の人気作品の物語を仕掛けてきた著者ジョン・ヨークは、物語構造とは何かを探求する旅に出かけました。
これまで何百冊と書かれた脚本術や創作術の本を分析し、仕事をともにした脚本家全員に聞き取り調査を行い、無数の映画やドラマの物語を吟味し……やがてヨークはあらゆるストーリーテリングの真の原型にたどりつきました。それこそが、本書が教えてくれる「森への旅」です。

本書は物語構造の歴史的な展開をたどり、古今の物語理論が提唱したパターンを徹底的に解明し、その神話のベールを取り去ります。そして、五幕構成を中心とした新しい構造の考え方を提案します。
脚本術の探求はストーリーテリングの歴史的、哲学的、科学的、心理的な旅へと広がりを見せ、私たちがなぜ物語を書き、楽しむのか、その秘密に迫っていきます。

物語構造はどのように機能するのか/主人公はなぜ能動的でなければならないのか/ナレーションはいかにドラマをだいなしにするか/ドラマの最終回直前で、たくさんの登場人物が死ぬのはなぜか/なぜフィクションに出てくる警官や医者は一匹狼ばかりなのか/人物描写がいかに物語の構造そのものに不可欠なものであるか……。

「森への旅」に喩えられるロードマップを通じて、「物語とは何か」そして「人はなぜ物語るのか」を解き明かす、すべての創作者と読者のための「虎の巻」です。

本書で取り上げるおもな物語理論・脚本術の提唱者・実践者
アリストテレス(『詩学』)、テレンティウス(五つのステージ)、ラヨシュ・エグリ(ドラマティック・ライティング)、ウラジーミル・プロップ(『昔話の形態学』)、シド・フィールド(三幕構成)、デイヴィッド・マメット、ジョーゼフ・キャンベル(英雄の旅)、クリストファー・ボグラー(作家の旅)、クリストファー・ブッカー(七つの基本プロット)、フライターク(フライタークのピラミッド)、ロバート・マッキー(ストーリーテリング)、ブレイク・スナイダー(SAVE THE CATの法則)ほか

 ストーリーテリングは、人間にとって必須の関心事であり、誰にとってもほとんど呼吸と同じぐらいに大切なことだ。焚き火を囲んで神話を語った時代から、ポスト・テレビ時代の物語の急拡大まで、物語は人々の人生を支配している。それを理解しようとすることは、われわれの務めと言ってもいい。ドラクロワは、知識への恐れを簡潔にこうつっぱねている。「職人になるためにはまず学ぶことだ。学んだからといって、天才になれなくなるということはない」。どの時代の物語においても、必ず登場してくるモチーフがひとつある──人に生命力を与える秘密を隠し持った、暗い森への旅だ。その森に何がひそんでいるか、本書で見つけていこうと思う。すべての物語はここから始まる……。
(本書「はじめに」より)


目次(仮)

はじめに

第一幕 家
1 物語とは何か?
2 三幕構成
3 五幕構成
4 変化の重要性
5 人はどうやって物語を語るのか

第二幕 昼の森の入口
6 フラクタル
7 幕
8 契機事件
9 シーン
10 すべてをひとつに

第三幕 森の中
11 見せること、語ること

第四幕 夜の帰路
12 登場人物とその設定
13 登場人物と構造設計
14 登場人物の個性表現
15 会話と登場人物設定
16 説明
17 サブテキスト

第五幕 変化を経て再び家へ
18 テレビドラマと物語構造の勝利
19 シリーズドラマと連続ドラマの構造
20 シリーズドラマの変化
21 再び家へ
22 なぜ?

付録I 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』の幕構成
付録II 『ハムレット』──構造の形
付録III 『マルコヴィッチの穴』──構造の形
付録IV 戯曲『マイ・ジンク・ベッド(My Zinc Bed)』──構造の形
付録V 『ゴッドファーザー』──構造の形
付録VI 第一幕と第五幕の対称性──ほかの事例
付録VII 脚本術の権威による理論の早見表


訳者あとがき
参考文献
索引

プロフィール

[著]
ジョン・ヨーク(John Yorke)
『シェイムレス』、『スキンズ』、『ホワイト・クイーン』、『ウルフ・ホール』などの英国のドラマ番組を手がける制作会社カンパニー・ピクチャーズのマネージング・ディレクター。チャンネル4ドラマの責任者、BBCドラマ制作の統括責任者として『華麗なるペテン師たち』、『MI-5 英国機密諜報部』、『カジュアルティ』、『ホルビー・シティ』などの大ヒット作品を担当。
2005年にBBCライターズ・アカデミーを設立。ニューカッスル大学英語・英文学客員教授を務め、物語構造について幅広く講義している。

[訳]
府川由美恵(ふかわ・ゆみえ)
明星大学通信教育部教育心理コース卒。主な訳書にボグラー&マッケナ『物語の法則——強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』、サルバトーレ『アイスウィンド・サーガ』シリーズ(以上KADOKAWA)、クロン『脳が読みたくなるストーリーの書き方』、ボグラー『作家の旅 ライターズ・ジャーニー』(以上フィルムアート社)、ハーパー『探偵コナン・ドイル』(早川書房)、ハート『ウェイワードの魔女たち』(集英社)など。