・シャガール、ミロは、ブルーが多いほど高額に?
・ゴッホは自殺したからこそ、価値が高まった?
・アーティストの「狂気」は市場に影響を及ぼす?
世界最古の国際競売会社サザビーズでディレクターを務めるフィリップ・フックが、長年の経験をもとに作品の様式からオークションの裏側まで、美術に関するさまざまなトピックを解説!
ガーディアンズ、サンデー・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ、スペクテーターなど各紙誌で「Books of the Year」を受賞!
美術作品を見たときにこのような疑問を抱いたことはありませんか?
「この作品はいくらだろう?」
「あと五年か十年たつと、どのぐらいの価値になるだろう?」
「うちの壁にかかっているのを見たら、みんなは私のことをどう思うだろう?」
美術市場で35年以上にわたって仕事をしてきたフィリップ・フックが、誰もが気になる(けれど大っぴらには聞けない)「美」と「お金」に関する疑問をわかりやすく解説してくれます。
本書は「アーティストと彼らの秘密」「主題と様式」「ウォールパワー」「来歴」「市場模様」という5つのパートで構成されており、それぞれのセクションで、買い手が美術品に対して最終的に支払う金額の決め手となる要因を、著者の主観的な視点で分析しています。
「ときに滑稽で、ときに暴露的で、またときに刺激的で、さらには素晴らしくもあれば不条理」な美術の世界。
その裏側に潜む「美」と「お金」についての物語を楽しんでください。
「A to Zの形式で、美術教育のすべてがこの350ページの中に凝縮されている。皮肉っぽくて、ドライで、とても魅惑的だ」
—— 『ガーディアン』「劣悪でクレイジーで狂気に満ちたコンテンポラリーアートの世界は、どうしたら描けるのだろうか。サザビーズのシニア・ディレクターであるフック氏は、35年の自身の経験を、形式張らない回顧録に落とし込んだ。彼は、ユーモアと博識と小粋さをもって、美の経済を動かすものについて暴いている」
—— 『フィナンシャル・タイムズ』「美術界について知っていたほうがいいかもしれないあらゆること――贋作や修復のことから盗難事件まで。あるいは小さな赤いタッチがあるだけで、絵画の価値はずっと高くなること。シャガールなら、誰もが青い絵をほしがること。しかめっ面よりも笑顔のほうがずっといいこと……アートをめぐる興味深い知識のすべてがここに。」
—— 『リテラリー・レヴュー』「教養にあふれ、ウイットに富み、明敏であるうえに世慣れてもいて、しかもユーモアのセンスも完璧な先生から、待望久しい愉快な個人授業を受けているかのようだ。」
—— 『スペクテーター』
◎世界で最も有名で馴染み深い作品を生み出したアーティスト
ダ・ヴィンチ/ムンク/ミケランジェロ/ロダン/ボッティチェリ/ゴッホ/ドラクロワ/ウォーホル ほか
◎市場で人気の高いアーティスト
セザンヌ/ダリ/ドガ/ゴーギャン/ジャコメッティ/クリムト/マグリット/マネ/マティス/ミロ/モディリアーニ/モネ/ピカソ/ルノワール/ロダン/ロートレック/ブランクーシ ほか
◎そこそこのアーティスト
ビュフェ/カシニョール/ドーソン/カトラン/エッツァルト/フリント/ヴェトリアーノ/キンケード ほか
◎精神的苦悩が評価価値につながるアーティスト
ジェリコー/ロスコ/エゴン・シーレ/ムンク/ゴッホ/キルヒナー/ポロック ほか
【本書まえがきより】
人が美術館や展覧会場で美術作品の前に立ったとき、自らに問いかける最初の二つの質問はだいたい決まっている。一つ目は「この作品を好きだろうか?」であり、二つ目は「作者は誰だろう?」だ。オークションの競売室や画廊で作品の前に立たったときにも、まずはこの同じ二つの問いかけをするだろう。だが、次には別の問いが続くことになる。それもいくらか高尚さに欠ける問いだ。たとえば「いくらだろう?」とか、「あと五年か十年たつと、どのぐらいの価値になるだろう?」、さらには「うちの壁にかかっているのを見たら、みんなは私のことをどう思うだろう?」といった問いである。
本書は、こうした問いに対する答えにどう到達できるか、そしてまた美術品の資産的な価値が、どのようなプロセスでもたらされるのかを紹介する手引き書だ。私自身は、美術市場で三十五年以上にわたって仕事をしてきた。最初はオークションハウスのクリスティーズで、次に画商として働き、そして近年は再びオークションハウスのサザビーズに勤務している。この職歴が、私が美術界に関するこの本を執筆したことの言い訳になるだろう。これは、アートとお金をめぐる後ろめたい、だがなおも魅惑的な関係について、扇情的なディテールにまで立ち入って探索する本なのだ。◎自殺や早世したアーティストの作品は、価値が高まる!?
近年のある伝記では——簡単に納得できるものではないが——ゴッホの自殺は本当になされたわけではなかった、という推測が述べられている。ゴッホは草原に出かけ、うさぎを撃っていた若者の過失で殺されたというのだ。
この説はアーティストとしての彼の名声をいくらか減ずるものだ。苦悩に満ちた彼の絵のこれまで認められてきた価値を有効にとどめるためには、我々としては彼に自ら命を奪ってもらう必要があるのだ
——Part1「アーティストと彼らの秘密」『自殺』より◎美術品は、必ずしも他の金融市場と同様の動きを見せるわけではない。
株式が下がるとき、美術品が上がることもある。リーマン・ショック後、世界的な金融危機を迎えた2009年の悲惨な経済状況のなかで、優れた美術品に対する需要は、実際のところは強くなった。人々が、銀行に預けるより、唯一無比の価値ある品物に金を投じることに利点を見たためだった。
——Part5「市場模様」『お金』より◎購入の動機となる4つの要素
人間は、さまざまな動機で美術品を買うというのは真実だ。ある人々にとっては、「投資」と「ステータス」がパイの大部分を占める。別の人々にとっては、「精神的な恩恵」と「知的・美的な喜び」が、「投資」「ステータス」を大幅に上回る。買い手が2人いたとして、両者がまったく同じ割合をもつことはない。だが、それが誰であっても、この4つの要素のすべてが購入動機となっている。
——Part5「市場模様」『ステータス・シンボルとしての美術品』より◎価値評価が高い作品とは。
モディリアーニの主題の人気のトップは、疑いなく裸婦像である。彼女たちが横たわっているか起きているか、どちらが市場にとってより望ましいかは、議論の余地がある点だ。着衣の肖像については、確実に縦の方が好ましい。しなやかで首が長いほど、より良い。市場としては概して、彼が早い時期に自死同然に亡くなったことに感謝している。もしもっと長く生きていたら、優柔不断で繰り返しの多い画家になっていたかもしれないからだ。
——Part2「主題と様式」『美術市場で人気の高いアーティストたち』より
メディア掲載
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『美術手帖』2017年12月号 特集
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THE NIKKEI MAGAZINE STYLE Ai vol.62「山崎まどか 今週読んだ2冊 ノンフィクション&小説」
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『日本経済新聞』 <書評>2017/2/19
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『沖縄タイムス』ほか <書評>2017/2/18付 評者:暮沢剛巳
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『読売新聞』 <書評>2017/2/27
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『朝日新聞』 <書評>2017/3/5
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『月刊アートコレクション』 <書評>2017年3月号
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『日経ビジネス』 <書評>2017年5月1日
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ダ・ヴィンチニュース
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『しんぶん赤旗』 <書評>2017年8月27日 評者:森下泰輔
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『週刊エコノミスト』
目次
はじめに
Part1:アーティストと彼らの秘密
ボヘミアニズム/ブランディング/ブリューゲル/生みの苦しみ/ドガ/日記の著者としてのアーティスト/女性アーティスト/フィクションの世界のアーティストたち/ジェリコー/有名なイメージ/イズム(○○主義)/投獄されたアーティストたち/狂気/そこそこのアーティスト/モデルとミューズ/居住区——アーティスト街とコロニー/パロディ/自殺
Part2:主題と様式
抽象美術/怒りと不安/動物/陳腐/カラヴァッジオ/枢機卿/コンセプチュアル・アート/エロティシズム/エキゾティシズム/風俗画(ジャンル)/歴史と聖書/印象主義/美術市場で人気が高いアーティスト/革新/室内画/風景画/ナラティブ・アート/ヌード/肖像画/鉄道/雨/スポーツ/静物画/シュルレアリスム/戦争(一九一四-一九一八)
Part3:ウォールパワー
真筆/色彩/エモーショナル・インパクト/贋作/仕上げ/額装/天才/自然への忠誠/調子の悪い日/修復/サイズ
Part4:来歴
頽廃/失われた絵画/返還/窃盗
Part5:市場模様
アンティーク・ロードショー/美術品を買う/絵のカタログをつくる/クリスティーズとサザビーズ/コレクター/画商/新興市場/展覧会/専門家/フェア/サッカー/用語集/文化遺産/投資/運/お金/美術館/美術を模倣する自然/税制
あとがき
プロフィール
[著]
フィリップ・フック(Philip Hook)
オークション会社サザビーズのディレクター。また、絵画部門のシニア・スペシャリストを務める。35年にわたり美術界の仕事に従事し、その間、オークション会社クリスティーズのディレクターを務め、さらに画商としても国際的に活躍した。著書には、世界各国での印象派の受容の歴史を分析した『印象派はこうして世界を征服した』(白水社)など、美術市場に精通した立場から美術史を論じた書籍のほか、推理小説『灰の中の名画』(ハヤカワ文庫NV)など、5冊の小説がある。また英国BBCの人気テレビ番組「アンティーク・ロードショー」では、1978年から2003年まで、レギュラーで鑑定人役を務めた。
[訳]
中山ゆかり(なかやま・ゆかり)
翻訳家。慶應義塾大学法学部卒業。英国イースト・アングリア大学にて、美術・建築史学科大学院ディプロマを取得。訳書に、フィリップ・フック『印象派はこうして世界を征服した』、フローラ・フレイザー『ナポレオンの妹』、レニー・ソールズベリー/アリー・スジョ『偽りの来歴 20世紀最大の絵画詐欺事件』、サンディ・ネアン『美術品はなぜ盗まれるのか ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い』(以上、白水社)、デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(共訳、岩波書店)、『ロダン 天才のかたち』(共訳、白水社)など。