アートNPOこえとことばとこころの部屋=通称「ココルーム」の15年の歩みと、釜ヶ崎芸術大学
詩のエネルギーが巷を変えていく!
暮らしをアートで解放するこれまでになかった運動、
そのいろいろから生まれたこれまでになかった本。
———谷川俊太郎(詩人)『釜ヶ崎で表現の場をつくる喫茶店、ココルーム』はすばらしいできばえの本になりましたね。表紙の入口から中に入って、読みすすめていくと、この本自体が、ココルームでコーヒーを飲みながら本のページをめくっているなつかしい場所のような造りになっている、と感じました。
———栗原彬(政治社会学者)
2003年、大阪市との恊働事業として「新世界」で生まれた「NPO法人こえとことばとこころの部屋」、通称ココルームによる活動記録と、その精神性、社会への提案を伝える1冊。
釜ヶ崎(日本最大のドヤ街、日雇い労働者の寄せ場)で、「カフェ運営」の形をとって、アートやメディアなどを軸に、ホームレスの詩人やピアニストのマネジメントを行ったり、若者の就労支援をしたり、野宿のことを考える夜回りや高齢者のアパート管理、やがて直面する孤独死に向き合うなど、ジャンルを越境しながら活動してきた。行政とともに粘り強く文化政策に関わり、多様な人々の「出会い」と「出会い直し」の場づくりを仕掛け続け、そのなかから生まれた「釜ヶ崎芸術大学」は2014年に横浜トリエンナーレ出場を果たす。2016年春からは、新事業・ゲストハウス運営が始まった。
日本の「ソーシャルデザイン」のなかでも先駆的なココルームの活動は、アートやデザイン、場づくりなどジャンルを越えて多くの研究者やアーティスト、クリエイターの注目を集め続けている。
本書では、公共、福祉、多文化・多世代共生、地域社会、消費の社会、貧困と格差など、現代の多様な問題と事柄に、「釜ヶ崎」で孤軍奮闘してきた時代から、国内外問わず支援者を獲得し、広がってきた今に至る約15年の歩みを振り返り、関係者たちの証言でまとめた。
場をつくるすべての人にとって、ヒントが詰まっているのはもちろん、表現・創作活動をする人に心強く寄り添い、また、これからの社会デザインを研究する際の最重要資料として、必読の1冊。
谷川俊太郎/鷲田清一/森村泰昌×著者との対談3本、栗原彬の特別講演を収録。
釜ヶ崎で生まれた谷川俊太郎作「路上」も掲載。
西川勝、坂上香、岸井大輔、猪瀬浩平、倉田めば、松本裕文、アサダワタル、山田創平、劔樹人、岩橋由莉、 鈴木一郎太、甲斐賢治、横山千秋、山田實、他、ココルームスタッフや関係者らによる寄稿。
ここにしかない「野生知」を生む場の実践と、釜ヶ崎の美学
「私たちの生活や価値が経済の仕組みに回収され、消費者としてしか生きられない場所にいたくはない。面倒ごとがなく、無駄や非効率なもの、醜いものを排して、安全安心な場所、を本当につくれるのか」
「これまで、生きることは表現だ、仕事は表現だ、と大きい事を言ってきたことが恥ずかしかった。表現を担保するとは、お互いの存在を認め、大切にしている場をつくれているかを問われているということなのだ。表現することが大事なのではなくて、表現できる場をつくれているか、その場の一人として、他者として生きているか、と。」(本文p.55より)
ーーー上田假奈代
メディア掲載
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中日新聞(12/16)にて著者の上田假奈代さんが、ココルームや本書とともにご紹介されました!
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兵庫県立神戸生活創造センターのwebページにてご紹介されました!
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月刊 地方自治職員研修 10月号にて紹介されました!
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朝日新聞 関西スクエア(2016.8&9 No.184)にて紹介されました!
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信濃毎日新聞(7/17号)の読書欄にて紹介されました!
目次
はじめに
[対談1] 谷川俊太郎×上田假奈代 「釜ヶ崎と詩」
第1章 ココルームに始まる
この時代のこの場所に生まれ育ってしまうこと
「普通の人が表現すること」をつくる
「私にこだわらなくてもいい」
ココルームと「こころのたね」の誕生
となりまち・釜ヶ崎との出会い
安さんに「表現の原点」を教わる
釜ヶ崎と日本、外と内、内と内をつなぐ
喫茶店の外に出る
不確実な未来に漕ぎ出す
第2章 ココルームは問い、問われる Q&A16
Q1 何かやりたいけど何をやったらいいかわかりません。(西川勝)
Q2 決断するときに心がけていることは何ですか?(坂上香)
Q3 自分が幸せなことが一番重要ですか?(岸井大輔)
Q4 友達とよべる人はどんな人ですか?(夛田雄一)
Q5 話が通じない人と分かりあう必要はありますか?(猪瀬浩平)
Q6 絶望している人にしてあげられることは何ですか?(倉田めば)
Q7 多少無理をしても、やりたい仕事につくべきですか?(松本裕文)
Q8 どんな仕事でも自己表現になりますか?(アサダワタル)
Q9 どんなときでもルールは守るべきですか?(山田創平)
Q10 ボランティアは自分に余裕があってするものですか?(劔樹人)
Q11 ことばにすること、聴くこと、話すこと、読むこと、見ることのコツはありますか?(岩橋由莉)
Q12 何から始めればいいですか?(鈴木一郎太)
Q13 仲間はどうすれば見つかりますか?(甲斐賢治)
Q14 場を持つことは大切ですか?(横山千秋)
Q15 結局、何も変えられないのではないですか?(山田實)
Q16 どうして働くのですか?(金友祐人、植田裕子、茂木秀之)
[特別講演録] 自治:自分のなかの他者を動かす 栗原彬
第3章 ココルーム、「釜ヶ崎芸術大学」を始める
釜ヶ崎芸術大学、開校(植田裕子)
釜ヶ崎芸術大学 講座紹介
[対談2] 鷲田清一(哲学者)×上田假奈代「釜ヶ崎芸術大学での『学び』」
[対談3] 森村泰昌(美術家)×上田假奈代「冷めた熱狂」
おわりに
協力者一覧
巻末資料
釜ヶ崎用語集
釜ヶ崎とココルームにまつわる年表
ココルームと釜ヶ崎周辺MAP・あいりん(釜ヶ崎)データ
プロフィール
[著]
上田假奈代(うえだ・かなよ)
詩人・詩業家。NPO法人こえとことばとこころの部屋(ココルーム)代表。
1969年奈良県吉野生まれ。3 歳より詩作、17歳から朗読を始める。1992年から詩のワークショップを手がける。2001年「詩業家宣言」を行い、さまざまなワークショップメソッドを開発し、全国で活動。2003年新世界フェスティバルゲートで、ココルームをたちあげ「表現と自律と仕事と社会」をテーマに社会と表現のかかわりをさぐる。2008年から西成区通称・釜ヶ崎で「インフォショップ・カフェ ココルーム」を開き、喫茶店のふりをし、2009年向かいに「カマン!メディアセンター」開設。「ヨコハマトリエンナーレ 2014」に釜ヶ崎芸術大学として参加。2016年春移転し「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」を開く。詩写真集『うた』(WALL)、『こころのたねとして~記憶と社会をつなぐアートプロジェクト』(ココルーム文庫)、朗読CD『詠唱! 日本国憲法』、『あなたの上にも同じ空が』ほか。初の長編映画『釜ヶ崎オ!ペラ~恃まず、恃む、釜ヶ崎』を製作中。大阪市立大学都市研究プラザ研究員。2012年度朝日21関西スクエア賞。2014年度文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞。
www.cocoroom.org www.cocoyadoya.org www.kanayo-net.com