企画の立ち上げから展覧会の終わりまで、
キュレーターの仕事の全プロセスを完全網羅。
世界の大学/大学院、美術系学校のキュラトリアル・コースで推奨図書に選ばれる、今日のキュレーターのための決定的定番書、待望の翻訳!
なぜ、いま「キュレーター」の仕事がますます重要度を増しているのか?
よりよい展示企画、スムーズな展覧会運営のために、これからのキュレーターがなすべきこと、気をつけなくてはいけないことは、一体何か?
本書は、現役のキュレーターや学芸員志望の学生、拡張する現代のキュレーションを学ぶ人に向けた、キュレーターの仕事についてのすべてが詰まった実践的なハンドブックです。
最初のアイディアから企画の立て方、出品決定のプロセス、予算の立て方、オファーの仕方、アーティストとの協働や契約締結や、作品の搬入とそのケア、会場レイアウトや設営、広報物やカタログの制作、内覧会やオープンイベントの計画、インタビューを受ける時の心得や、会期直前・会期中・会期終了後にすべきことまで、キュレーターがひとつの展覧会でおこなう仕事の全行程を、12のプロセスに分けてわかりやすく整理・解説。 さらには、キュレーターとして果たすべき役割と責務、見落としがちな点やトラブル解決法も豊富に収録した、キュレーターのための「本当に使える」プラクティカルなハンドブックの決定版!
キュレーターの役割が多様になっていく今日において、基礎知識から現在の広がりまでを網羅した本書は、普遍的な価値を持ち続ける決定的な1冊となるでしょう。
著者は、テート・モダンをはじめ世界の現代美術を専門とした美術館でのキュレーターを歴任し、現在は英国政府アートコレクション専門官を務める、エイドリアン・ジョージ。
20年以上にわたりキュレーターそして教育者としてキュレーションの現場に携わってきた著者だからこそ書ける、実用的なガイドラインやアドバイスを分かりやすく概説します。
さらに、ハンス・ウルリッヒ・オブリストやニコラス・セロータ等、世界を舞台に活躍する海外の著名なキュレーターたちや、アート業界の第一線で働くさまざまな職種の専門家たちから直接ヒアリングして集めた実践的なアドバイスを要所要所にふんだんに盛り込みました。
これらは、日本だけに閉じない「世界で必要とされる」キュレーター像や、次世代型の新しい資質や、今現在求められる人材とはどういう人材かを考えるための「生きた言葉」として、必ず役立つことでしょう。
【本書の3つのポイント】
① 世界で通用する知識や情報が会得できる
② プロジェクトの「ハブ」となり、「新しい価値観の創造者・教育者・仲介者・管理者・資金調達者」という、ますます多様化する「これからのキュレーター像」を立体的に示す
③ キュレーターの仕事を1から12のプロセスに順序だて、実用的に使えるように整理。ベーシックで分かりやすい構成に加え、索引も充実させ、常に手元において使い倒せる1冊
目次
イントロダクション
キュレーターとは何か?
さまざまなキュレーターの種類
(専門領域のキュレーター、コレクション主体のキュレーター、インディペンデント・キュレーター、アーティスト兼キュレーター、部門長)
今なぜ、キュレーションが成長分野なのか
アイディアの触媒、パイプ役としてのキュレーター
著者、編集者、批評家としてのキュレーター
キュラトリアルな実践へのルート
就業体験とインターンシップ
成功への第一歩
審査員としてのキュレーター
本書は誰に向けられたものなのか?
第1章 始動する:キュレーションの第一歩
アイディアとインスピレーション
資金提供者やスポンサーの課題
展覧会の種類
アートフェア・スタンドのキュレーション
第2章 アイディアを実現させる
良いアイディアを現実の展覧会にするには
展覧会概要の文書化
展覧会のテーマを洗練させ、展示作品リストを作成する
空間プランニング
巡回の機会を探る
第3章 プロポーザル、企画の売り込み、プランニング
最初のプロポーザルの照準を合わせる
展覧会を売り込む
巡回先を確保する
プロポーザル資料/展覧会プランニング
他のキュレーター、あるいは外部キュレーターと仕事をする/外部キュレーターとして仕事をする
第4章 予算と資金調達
現実的な予算の編成
決められた予算を守る
財務的な説明責任
資金調達/スポンサーシップ/現物提供
スポンサーの特定と説得
公益信託と慈善財団
巡回契約と費用(展覧会の売買/展覧会の貸借)
第5章 契約、交渉、義務、評価
芸術文化機関、コマーシャル・ギャラリー、その他の組織との契約
評価/来場者調査
展覧会費とキュレーターが求めるべき報酬
展覧会のスケジューリング
第6章 展覧会の出版物と物品販売
展覧会カタログや書籍の出版を決める
出版チーム
冊子やパンフレットを制作する
文章の執筆依頼、編集、執筆
ピクチャー・コレクション、著作権、クレジットライン、使用許諾
グラフィックデザイン
印刷と制作を監督する
流通と販売促進
物品販売とそのデザイン
第7章 展覧会をつくる
展覧会場とその建築
商業スペース─ギャラリスト、ディーラーとしてのキュレーター
CADや縮尺模型の使用、そして空間を歩きながらの展覧会デザイン
展示空間と作品の配列
来場者は展覧会でどれくらいの時間を過ごすのか?
テクノロジーとニューメディア
ブラックボックス・スペース
展示用壁の施工
壁面の色
展示備品、家具
空間と来場者アクセス
仕切り
安全衛生
借用依頼の手紙
設備に関する報告書
アーティストや作品貸与者との交渉
アーティストにコミッションワークを依頼する
アーティストと個展に取り組む
グループ展の一員としてのアーティストと仕事をする
レジストラーとの仕事
レジストラーが知っておくべきこと
保険・補償
貸借契約と特別条件
輸送
作品が到着したら
展覧会プロセスを記録する
第8章 オープン前の数週間
解説の素材(作品ラベルとテキストパネル、リーフレットと展示ガイド)
プレスリリースを書く
内覧会の招待状
メーリングリストの維持
その他のプレオープン・イベントを計画する
プレス対応やPR会社と連携する
第9章 展示作業
作品の取り扱い
展示設営スケジュールと作品を実際に展示される場所で見ること
展示レイアウトを承認する
作品を壁面に固定する
照明
教育普及、イベントスペース、リソースエリア
ライブ・アートイベント
一般損害賠償責任保険
第10章 オープン数日前と当日
最終調整
スタッフへのブリーフィング(概要説明)
セキュリティの課題
第11章 プレスオープンと内覧会
プレス向け内覧会とインタビュー
──展覧会のスポークスマンとしてのキュレーター
内覧会を計画する
スピーチを行なう
ギャラリーツアーを行なう
第12章 展覧会会期中、そして会期後
展覧会を記録する
展覧会会期中の定期的な業務の予定を立てる
問い合わせの対応とネットワークの構築
展覧会の解体撤去と作品の返却
成功の評価と失敗から学ぶこと
あとがき キュラトリアルな実践の未来
訳者あとがき 河野晴子
NOTES
INDEX
プロフィール
[著]
エイドリアン・ジョージ(Adrian George)
英国政府アートコレクション専門官およびシニア・キュレーター。パブリック・プログラムから専門的なアートイベントまで、さまざまな教育、解説、出版プロジェクトを遂行するキュレーターチームの指揮を執る傍ら、キュレーションやコミッションワークについて広く講義を行なう。ベルギー、フィリピン、カタール、スペイン、イギリス、イエメンなどで、場所の特性を生かした作品の委託制作を数多く手がけ、香港、ダブリン、ロンドン、スコピエ(マケドニア)、ニューヨークや台北などで展覧会のキュレーションを行なう。テート・リバプール、テート・モダン(ロンドン)、ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート(ニューヨーク)においてキュラトリアルなポストを歴任している。
[訳]
河野晴子(こうの・はるこ)
国際基督教大学教養学部人文科学科卒業(美術史専攻)。ニューヨーク大学大学院ミュージアム・スタディーズ(美術館学)専攻修士課程修了。メトロポリタン美術館レジストラー課に研修生として勤務の後、帰国。企業メセナ協議会プログラム・オフィサー、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]アシスタント・キュレーター、資生堂ギャラリーキュレーター、国際交流基金アジア発共同キュレーション企画ゲスト・キュレーターを経て、長らく続けていた翻訳業に転じる。現在は、国内外の美術書、展覧会カタログの翻訳と編集に従事する。