ブレイクスルーを生み出す戦略的キャメラテクニック
撮影現場で最も重要なキャメラワークの基礎を解説した『マスターショット100』と映画における会話シーンを独創的にする方法を説く『マスターショット2』に、待望の続編が登場。今回は応用編の名が示す通り、より戦略的なテクニックがテーマとなっています。説明的になりがちなシーンや、ありきたりな構図を、どうすれば刺激的に、洗練された結果にできるかを、前2作より倍増した実例図版をもとにわかりやすく詳述。
より高度な表現を習得したい映画監督やキャメラマンにとって有益なアイデアとなる本書は、アニメーション作家やテレビ制作に携わる人、そして鑑賞者にとっても革新的な視点をもたらす内容です。
【各テクニックの実例として使われた映画作品】
インセプション/A.I./X:MEN ファイナル ディシジョン/乙女の祈り/ザ・ウォーカー/メランコリア/シンドラーのリスト/スター・ウォーズ エピソード1/戦火の馬/テラビシアにかける橋/ブラック・スワン/ブレード・ランナー/レオン/ロング・エンゲージメント/キャスト・アウェイ/ゼア・ウィル・ビー・ブラッド/他
目次
はじめに
本書の使い方
CHAPTER1 ADVANCED LENSING
レンズの使い方(応用編)
1.1 遠距離から望遠レンズで狙う/ロング・レンズ・ディスタント
1.2 近距離から望遠レンズで狙う/ロング・レンズ・クロース
1.3 望遠レンズで静止した効果を狙う/ロング・レンズ・ステーショナリー
1.4 望遠レンズで動きを狙う/ロング・レンズ・イン・モーション
1.5 広角レンズで適切な距離感から狙う/ショート・レンズ・ディスタント
1.6 近距離から広角レンズで狙う/ショート・レンズ・クロース
1.7 広角レンズで静止した効果を撮る/ショート・レンズ・ステーショナリー
1.8 広角レンズで動きを狙う/ショート・レンズ・イン・モーション
1.9 標準レンズで狙う/ザ・ミディアム・レンズ
1.10 レンズで切り取る/カッティング・ザ・レンズ
CHAPTER2 ESSENTIAL MOTION
動きの必要条件を握る
2.1 セットアップはシンプルにできる/ブレンディッド・モーション
2.2 キャメラの動き/キャメラ・イン・モーション
2.3 俳優の動きがキャメラワークを促す/キャラクター・ドライブズ・キャメラ
2.4 回り込むキャメラ/リビール・ムーブズ
2.5 キャメラと一体になる/ムーブ・ウィズ・キャメラ
2.6 ストレートに迫る/ムーヴィング・ストレート・オン
2.7 キャメラを横移動にする/ムーヴィング・サイドウェイズ
2.8 1つのキャメラアングルから動く/ムーヴィング・アット・アン・アングル
2.9 デリケートに動く/ショート・ムーブズ
2.10 キャメラが弧を描く/ターンズ・アンド・カーブズ
CHAPTER3 DEPTH STAGING
舞台設定を掘り下げる
3.1 俳優が動く/キャラクター・ムーブズ
3.2 フレームを横切る/クロッシング
3.3 フレームを活かす/ムーブ・ドゥ・フレーム
3.4 主観ショットを客観ショットに切り替える/ムーヴィング・ポイント・オブ・ビュー
3.5 客観的なショット/ムーブ・トゥ・リビール
3.6 写り込みを有効に使う/ムーブ・ウィズ・リフレクション
3.7 反対方向に動く/リバースド・プッシュ
3.8 ドリーの速度を決める/ベロシティ・ドリー
CHAPTER4 EXPERT FRAMING
フレーミングのエキスパートになる
4.1 イマジナリーラインを超える/ライン・クロス
4.2 横向きのショット/ブレイク・カット
4.3 スピードの変化をつけてキャメラをパンする/パン・モーション
4.4 通り抜ける/プッシュ・スルー
4.5 斜めのアングルから撮る/リピート・アングル・プッシュ
4.6 ティルトを効果的に使う/ティルト・リビール
4.7 演技に呼応して回り込む/ロテイト・アウト
4.8 効果的にシルエットを活かす/シルエット
CHAPTER5 SYMBOLIC STAGING
象徴的に演出する
5.1 双方向へ進む/ダブル・プッシュ
5.2 登場人物に魅力を持たせる/マグネティック・キャラクターズ
5.3 愛情を表現する/インティマシー・ブレイク
5.4 ハイアングルから引っ張り込む/ハイ・ドラッグ
5.5 存在感を切り替える/パワー・エクスチェンジ
5.6 「ためらい」を撮る/インディシジョン
5.7 2キャメラで撮る/アイソレーティング・プッシュ
5.8 フィックスでグループショットを撮る/グループ・ブレイク
CHAPTER6 PRODUCTION DESIGN AND LOCATION
ロケーションと美術関係
6.1 エスタブリッシング・ショットは必要か?/アンチ・エスタブリッシュメント・ショット
6.2 ナメを活かす/ダーティー・フレーム
6.3 前景を活用する/エンリッチ・ザ・フォアグラウンド
6.4 壁の位置をぬすむ/フェイク・ウォール
6.5 越しに撮る/フレーミング・スルー
6.6 窓枠を使う/フレーミング・フォーカス
6.7 主人公の登場は鮮やかに撮る/パーソナル・リビール
6.8 写り込みのショットをエスタブリッシングに使う/リフレクション・エスタブリッシュメント
6.9 鏡を使う/リバース・リフレクション
CHAPTER7 DYNAMIC ACTION
ダイナミック・アクション
7.1 動きの方向をシフトする/アクション・シフト
7.2 そらしてから見せる/ミスディレクティッド・モーション
7.3 キャメラを振り戻す/リターン・トゥ・サブジェクト
7.4 ワイドレンズで押し込む/ポーズド・プッシュ
7.5 人の流れに逆らう/プッシュ・アゲインスト・フロー
7.6 円形移動にプラスアルファーをする/モーション・サークル
7.7 180度、切り返す/コンベイング・スピード
7.8 アクションで切り替える/ターン・カット
CHAPTER8 SHOOTING PERFORMANCE
芝居を撮る
8.1 シーンのふたを開ける/オープニング・ザ・シーン
8.2 ボディアクティングで見せる/ボディ・アクティング
8.3 クロースアップのコアを知る/コア・クロース・アップス
8.4 超クロースアップで描く/エクストリーム・クロース・アップス
8.5 キャメラアングルは語る/アングルド・トーク
8.6 人物紹介のわざとらしさを避ける/スライド・イントゥ・シーン
8.7 思いどおりに演じさせる/オウイング・ア・シーン
8.8 横位置から撮る/パラレル・スペース
8.9 登場人物の距離感を表す/セパレーティング・キャラクターズ
CHAPTER9 CAMERA HEIGHT
キャメラの高さ
9.1 顔の位置から撮る/ヘッド・ヘイツ
9.2 ダッチアングルで撮る/アングル・イントリュージョン
9.3 キャメラハイトの重要性を知る/アングル・ヘイツ
9.4 ローアングルから撮る/ダウン・トゥー・キャメラ
9.5 エレベーターワークで撮る/フラッティング・ザ・ショット
9.6 俯瞰から撮る/ハイ・アングル
9.7 ローポジションから望遠レンズで撮る/モーションレス・ルックアップ
9.8 顔を見切る/アンシーン・フェイス
9.9 ローアングルで回り込む/ロー・スライド
9.10 座る意味を知る/シーテッド・パワー
CHAPTER10 COMPLEX CAMERA MOVES
複雑なキャメラワーク
10.1 キャメラを回転させる/コンプレックス・スピン
10.2 俳優を動かす/アクターズ・イン・モーション
10.3 マスターショットにインサートする/カッティング・フロム・ザ・マスター
10.4 空間をカーブする/ダイアゴナル・リビール
10.5 ステディカムを使う/ロング・トラック
10.6 ドリーを使って車内のシーンを撮る/ドリー・フレーム
10.7 クロースアップまで押し込む/プッシュ・トゥ・クロースアップ
10.8 ワイドショットからクロースショットへ向かう/ワイド・トゥ・クロース
10.9 反対方向にスライドする/オポジング・スライド
10.10 グループの動きを作る/グループ・イン・モーション
CHAPTER11 THE ADVANCED DIRECTOR
監督として進歩する
11.1 背景に動きをつける/ディープ・ブロッキング
11.2 キャメラワークにはモチベーションが必要である/モチベート・ザ・キャメラ
11.3 手持ちキャメラで撮る/ディベロッピング・モーション
11.4 空間を上手に使う/メイキング・ユース・オブ・スペース
11.5 人物の配置には気をつける/ロスト・ジオグラフィ
11.6 登場人物の視点を撮る/キャラクター・ビュー
11.7 ストーリーのポイントを絞る/ストーリー・ポイント
11.8 シーンを演出する/シーン・ステージング
11.9 シーンを視覚化する/ビジュアライジング・ザ・シーン
11.10 現場で作る/クリエイティング・オン・セット
おわりに
訳者あとがき
各テクニックの実例として使われた映画作品
用語解説
著者・訳者略歴
プロフィール
[著]
クリストファー・ケンワーシー(Christopher Kenworthy)
映画監督、プロデューサー、作家。
監督した長編映画『The Sculptor』は批評家からも高い評価を受けている。著書にはベストセラーとなった『マスターショット100』や続編である『マスターショット2』(いずれもフィルムアート社刊)の他、2作の長編小説『The Winter Inside』と『The Quality of Light』などがある。近年はマスターショットシリーズの最新作として、『マスターショット e-books』のクリエーターもつとめている。イギリス生まれ。オーストラリア在住。
[訳]
石渡均(いしわたり・ひとし)
日本映画撮影監督協会員。主な作品は『上海バンスキング(特撮)』『大霊界(特撮)』『はるかノスタルジー(第二班)』『オーロラの下で(日・ソ合作第二班)』『孔雀王アシュラ伝説(日・香港合作特撮)』『こどもたちへ』『The・Hunted(日米合作・ユニバーサル映画、日本側撮影監督)』『レディース・マックス』『ゆずり葉』など。TVドラマ『坂本竜馬(特撮)』『Long・Shadows(日米合作テクニカル・スーパーバイザー)』『ウルトラマンダイナ』『杜の都恋物語 2.3』など。Vシネマ『SF3D』『ウルトラセブン』など。大型映像は『横浜博テーマ館・70mmキャメラ使用』『宮崎博メイン館・3面マルチ映像』『太陽が引き裂かれた日・ビスタビジョンキャメラ使用』その他、3D映像、コマーシャル、PVなど多数。
著作歴は『ひまわりとキャメラ・岡崎宏三一代記』(三一書房)など。訳書は『映画撮影術』『プロフェッショナル撮影技法』『フィルムスクールで学ぶ101のアイデア』(すべてフィルムアート社)など。その他専門誌に寄稿文あり。日本映画学校講師を経て、現在東京藝術大学(大学院映像研究科)非常勤講師。
なお、文芸同人誌「澪」で評論『映画監督のペルソナ・川島雄三論』を連載中です。興味のある方はホームページをご覧下さい。
文芸同人誌「澪」ホームページ http://bd-miomio.jimdo.com/