カオスの神、園子温

ダリオ・トマージ/フランコ・ピコッロ=編
丸山圭子=訳
発売日
2012年9月27日
本体価格
2,300円+税
判型
A5判・並製
頁数
256頁
ISBN
978-4-8459-1203-2
Cコード
C0074
備考
品切

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憂鬱と絶望の間、不気味なユーモアと暗い悲劇、
黒くて<悪い>世界から、「希望」へ……

ヴェネツィア、トリノで絶賛したイタリア評論家陣による園子温批評が待望の邦訳!
デビューから最新作『希望の国』までのレビューと論考、本人へのインタビューも収録。
「<憎しみ>はあらゆる感情の中でもっとも<愛>を含んでいる。
憎しみは愛の源泉で、愛の始まりだ。僕は<憎む>人間だ」
機能不全の人間関係、愛情とコミュニケーションの喪失、アイデンティティの崩壊……。現代社会の深淵のきわを見つめる園映画は、どこから生まれるのか?
大島、寺山といった日本人監督のほか、パゾリーニ、ファスビンダーなど世界の巨匠との比較考察を基に、グローバルな映画史の観点から読み解いていく。<世界>の園子温が見えてくる、初の本格批評集。

目次

【序文】
ロード オブ カオス/カオスの主
マーク・シリング
【評論】
ロマンチシズムの犯罪者
エマヌエラ・マルティーニ
俺は園だけど…
ダリオ・トマージ
「じゃあ、動きをくわえたら?」園子温へのインタビュー
マッテオ・ボスカロル編
幸せな家族って、何ですか?
クラウディア・ベルトレ
「私はコイケ。ドラッグと宗教を売ってます。」カルト、宗教シンボル、そして解放の動き
マッテオ・ボスカロル
第三の視線ー退廃、逸脱、恐怖の感覚ー
ルカ・カルデリーニ
【作品レビュー】
LOVE SONG
俺は園子温だ!!

男の花道
決戦!女子寮対男子寮
自転車吐息
部屋
桂子ですけど
男痕
うつしみ
自殺サークル
HAZARD/ハザード
夢の中へ
奇妙なサーカス
紀子の食卓
気球クラブ、その後
エクステ
愛のむきだし
ちゃんと伝える
冷たい熱帯魚
恋の罪
ヒミズ
希望の国
掲載作品DVD情報
フィルモグラフィー
著者紹介

プロフィール

[著者]
マーク・シリング(Mark SCHILLING)
米オハイオ州、ザネスヴィル出身。1989年よりジャパンタイムズ紙で日本映画の評論を執筆。日本映画、日本のカルチャー、日本社会についての評論は、アジア・ウォールストリート・ジャーナルやUSA TODAY、Interview、The Japan Quarterly誌、キネマ旬報、タイムマガジン日本版、ニューズウィーク、ヴォーグ、プレミアなど数多くの媒体で掲載されている。
著書に「The Encyclopedia of Japanese Pop Culture」、「Contemporary Japanese Film」、「The Yakuza Movie Book ─ A Guide to Japanese Gangster Films」などがある。
1999年からは、イタリア・ウディネ・ファーイースト映画祭のプログラムアドバイザーを務め、2005年には同映画祭において日活アクション/ジャンル映画の16ミリフィルムを集めたレトロスペクティブを特集し、欧米初の特集上映となった。また2010年には新東宝スタジオ制作の作品15本を集め、レトロスペクティブを実施している欧米一、日本映画に精通するジャーナリスト。

ダリオ・トマージ(Dario TOMASI)
トリノ大学准教授、映画評論家。レッジオ・エミリア・アジア映画祭のコンサルタントを務める。『青春残酷物語:ジャパニーズ・ニューウェーブをマルコ・ミューラーと語る(仮題)』(未邦訳、1990)、『小津安二郎』(未邦訳、1996)『溝口健二』(未邦訳、1998)など、日本映画に関する著作多数。

フランコ・ピコッロ(Franco PICOLLO)
イタリア文化基金のプログラム・マネージャーで、教育と映画評論担当。2010年、コンテンポラリーな日本映画を紹介するブログ「ソナチネ」を立ち上げ、毎年100本以上もの日本映画の評論を発表している。本ブログは公開直後より多数の購読者を擁し、イタリア国内において日本映画のリファレンスとして広く活用されている。また2011年トリノ映画祭、レッジオ・エミリア・アジア映画祭のオフィシャル・パートナーとして登録された。

クラウディア・ベルトレ(Claudia BERTOLÈ)
映画論学位を持つ弁護士で、特に日本映画を専門とする。日本映画の知識においてはイタリア人ジャーナリストからの信頼も厚い。近年は自身で映画の脚本も執筆している。

マッテオ・ボスカロル(Matteo BOSCAROL)
日本在住のイタリアの映画評論家で映画祭コンサルタント。The Philosophy of Tsukamoto Shinya(『塚本晋也の哲学(仮題)』、未邦訳)の編集者でもあり、他に大島渚、今敏、園子温、松井良彦らにまつわるエッセイを発表している。舞踏と映画に関する研究、またジル・ドゥルーズ=フェリックス・ガタリと日本との関係性についての研究が専門。現在は、日本のドキュメンタリーの歴史について執筆中。

ルカ・カルデリーニ(Luca CALDERINI)
映画学学位を持つ日本のホラー映画、ファンタ系映画のスペシャリスト。広告代理店でウェブ分析とマーケティングを担当している。現在は日本のホラー映画の歴史についての論文を執筆中である。

ジャコモ・カローリオ(Giacomo CALORIO)
フリーランスのコミック、アニメ翻訳者。日本映画の批評多数。『日本とアジアのホラー映画(仮題)』(未邦訳、2005)の著者。『堕ちていく言葉たち― 黒沢清の映画(仮題)』(未邦訳、2005)、『三船敏郎』(未邦訳、2011)の著者。溝口健二についてのエッセイの他、三池崇史のエッセイも著作に並ぶ。

エマヌエラ・マルティーニ(Emanuela MARTINI)
トリノ映画祭の副ディレクター、映画評論家。1999年より2007年までイタリアの人気映画誌「Film TV」の編集長を務める。『英語映画の歴史1930 ―1990(仮題)』(未邦訳、1991)、『ジョン・カサヴェテス』(未邦訳、2007)、『イギリスのルネッサンス(仮題)』(未邦訳、2008)、『ニコラス・レイ』(未邦訳、2008)、『ジョン・ヒューストン』(未邦訳、2010)、『ロバート・アルトマン』(未邦訳、2011)など映画と映画監督に関するエッセイ多数。

グラッツィア・パガネッリ(Grazia PAGANELLI)
トリノ国立映画博物館のプログラマー兼映画評論家。著作は以下の通り。『シュトロハイム 視線と誇張(仮題)』(未邦訳、2001)、『 風と町 アミール・ナデリの映画(仮題)』(未邦訳、2006)、『生の証明 ヴェルナー・ヘルツォークと映画(仮題)』(未邦訳、2008)など。他にカルロ・チャトリアンと共著で『マンガ・インパクト 日本アニメの世界(仮題)』(未邦訳、2010)がある。

ファビオ・ライネッリ(Fabio RAINELLI)
Neoneigaと呼ばれるイタリアの文化協会の職員で、日本映画の専門家でもある。塚本晋也、三池崇史、黒沢清らのインタビュー経験があり、著書に『スペシャル・ジャパニーズ・シネマ(仮題)』(未邦訳、2011)やダリオ・トマージ、ステファノ・ボーニらと共著の『失われた魂―三池崇史の映画(仮題)』(未邦訳、2006)がある。

[訳]
丸山圭子
ミラノ在住。イタリア旅行情報サイトJAPAN ITALY Travel On-lineの元編集長。現在はコモにあるインスブリア大学で日本語を教えながら、翻訳や執筆を手掛ける。日伊文化の交流促進がライフワーク。主な訳に『Toyota̶Il miracolo italiano̶』(原題:『トヨタイタリアの奇跡̶ 』)。