「癒し」の真逆を提示する映画から、世界の在り方と現代のリアルを読み取る!
癒されない、考えざるをえない、忘れることができない、
――だから、素晴らしい。
そんな視点で、現在/過去を問わず突出している作品を、ベテランから若手までピックアップ。「ひきずられる」ポイントを、内容だけではなく、技法の視点でも分析しているので、2度目、3度目でも新たな発見があるはず。映画のおそろしさ、すさまじさ、おぞましさ、おもしろさを今一度感じさせ、世界を新たな視線で見ることを促す一冊です。
目次
はじめに 村山匡一郎hikizuru-mizo.jpg
1 リアルと世界
ワン・ビン『無言歌(溝)』
ガス・ヴァン・サント『エレファント』
レオス・カラックス『メルド』
(『TOKYO!』第2部)
ハーモニー・コリン『ミスター・ロンリー』
ダーレン・アロノフスキー『レスラー』
真利子哲也『イエローキッド』
アトム・エゴヤン『アララトの聖母』
ブリュノ・デュモン『フランドル』
リュック=ピエール・ダルデンヌ、ジャン=ピエール・ダルデンヌ
『イゴールの約束』
【古典】キム・ギヨン『下女』
【古典】若松孝二『ゆけゆけ二度目の処女』
【古典】ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『ケレル』
2 想定外!hikizuru-mr-lonely.jpg
園子温『冷たい熱帯魚』
デヴィッド・クローネンバーグ
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
ヴェルナー・ヘルツォーク
『バッド・ルーテナント』
キム・ギドク『悪い男』
クロード・シャブロル
『沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇』
ウェス・アンダーソン『ライフ・アクアティック』
デヴィッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』
ウルリヒ・ザイドル『ドッグ・デイズ』
【古典】柛代辰巳 『青春の蹉跌』
【古典】サミュエル・フラー『ショック集団』
○論考1 北小路隆志
新たなる「身体の映画」の胎動 ──「身振り」の再発見に向けて
○論考2 三浦哲哉
ミズシマとランボー ──映画の快感原則の彼岸
○論考3 石坂健治
「森」と「犯罪」の東南アジア・ネオリアリズム
○論考4 杉原賢彦
ナラティヴィを布置せよ ——21世紀のゴダールのために
3 意味の意味、その先へhikizuru-shiroi-ribon.jpg
ミヒャエル・ハネケ『白いリボン』
瀬々敬久『ヘヴンズ ストーリー』
アピチャッポン・ウィーラセタクン
『ブンミおじさんの森』
タル・ベーラ『倫敦から来た男』
マノエル・デ・オリヴェイラ
『ブロンド少女は過激に美しく』
ジェームズ・グレイ『裏切り者』
黒沢清『叫』
ホン・サンス『アバンチュールはパリで』
ツァイ・ミンリャン『黒い眼のオペラ』
フランソワ・オゾン『まぼろし』
【古典】フリッツ・ラング『M』
【古典】ロバート・アルトマン『ポパイ』hikizuru-essential.jpg
4 死線から、また始まる
イエジー・スコリモフスキ
『エッセンシャル・キリング』
クリント・イーストウッド『ヒア アフター』
シルヴェスター・スタローン
『ランボー 最後の戦場』
マシュー・ヴォーン
『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』
ラース・フォン・トリアー『アンチクライスト』
ヴィターリー・カネフスキー『ひとりで生きる』
ペドロ・コスタ『コロッサル・ユース』
アレクサンドル・ソクーロフ『チェチェンへ アレクサンドラの旅』
【古典】ロベール・ブレッソン『ラルジャン』
【古典】アンドレイ・タルコフスキー『サクリファイス』
プロフィール
[著]
村山匡一郎(むらやま・きょういちろう)
1947年生まれ。日本経済新聞やキネマ旬報など新聞・映画雑誌で評論活動をする傍ら、多摩美術大学・武蔵野美術大学・イメージフォーラム研究所などで教える。主な著訳書は『映画全史・全12巻』(共訳、国書刊行会)、『映画史を学ぶクリティカル・ワーズ』(編著、フィルムアート社)、『映画は世界を記録する』(編著、森話社)など。
北小路隆志(きたこうじ・たかし)
映画批評家。京都造形芸術大学映画学科准教授、東京国立近代美術館フィルムセンター客員研究員。主な著書に『王家衛的恋愛』(INFASパブリケーションズ)、共著に『映画の政治学』(青弓社)、『ペドロ・コスタ 遠い部屋からの声』(せんだいメディアテーク)、『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)など。「朝日新聞」や「装苑」などで映画評を中心に執筆中。
三浦哲哉(みうら・てつや)
1976年生まれ。福島県出身。「キネマ旬報」「NOBODY」「ユリイカ」等に映画批評を寄稿。福島の映画上映&トークイベントImage.Fukushima実行委員長。映画批評サイトflowerwild編集委員。訳書に『ジム・ジャームッシュ インタビューズ:映画監督ジム・ジャームッシュの歴史』(東邦出版)。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コースに提出した博士論文をもとに、グリフィスからヒッチコックを経てイーストウッドに至るサスペンス表現の歴史を論じた『サスペンス映画史』を近刊予定。
石原陽一郎(いしはら・よういちろう)
1962年生まれ。フランス文学、映画批評。著書に『タッチで味わう映画の見方』、訳書に『孤高の騎士 クリント・イーストウッド』(いずれもフィルムアート社)など。
http://d.hatena.ne.jp/criticon/
石坂健治(いしざか・けんじ)
1960年生まれ。早稲田大学大学院で映画学を専攻。国際交流基金勤務を経て、2007年より東京国際映画祭アジア部門ディレクター。2011年に開学した日本映画大学教授を兼職。専門はアジア映画史、日本ドキュメンタリー映画史、芸術行政。共著に『ドキュメンタリーの海へ 記録映画作家・土本典昭との対話』(現代書館)、『思想読本9 アジア映画』(作品社)など。
杉原賢彦(すぎはら・かつひこ)
大学講師業のかたわら映画批評を書く。フィルムアート社「CineLesson」シリーズのほか、各種DVD解説を執筆。