悩める“アーティスト”に捧げる、
不確実な世界と向き合い、飛びたつための小さな哲学
本書は、アーティストが、自分の制作をしていく際の心がまえをコンパクトに説くやさしい哲学であり、迷った時、行き詰まって辞めたくなったときの心の助けになるような指南書です。
「この作品をつくるのは何のため?」
「これは行なう価値がある?」
「これを続けて食べていける?」
「多くの人が辞めてしまうのはなぜ?」……
誰もが覚えのある、アーティストでありつづけるかぎり襲われる、このような答えの出ない不安と共存し、飼い馴らしながら、自分の制作をやめずに続けていくための、「すべてのジャンルの〈制作者たち〉に効く常備薬」、“心の”サバイバル・ガイドなのです。
■全米で20年間読み継がれたアーティストのための手引書、待望の邦訳版!
■すべてのアーティスト/表現者/自分の道をコツコツと進む人、必読の書。
目次
はじめに
第1部
1. 問題の本質はどこにあるのか?
・いくつかの前提について
2. アートと不安について考えてみる
・見通す力はいつも実行する力を上まわる。
・想像力は邪魔をする。
・材料は働きかけるとリアルに反応する。
・不確実性は本質的に不可避である。
3. 自分自身に関する不安について
・作品を制作するふりはできない。
・才能は必ずしも必要ない。
・完璧は麻痺状態を招く。
・消滅してしまうという恐怖が新たな地平を生む。
・魔法は捕らえどころがない。
・期待はすべてを空想へと導く。
4. 他者に関する不安について
・理解されたいという欲求にはリスクがある。
・承認が求めているのはあなたではない。
・同意を求めると恐ろしいことになる。
5. 自分の制作を見つけるために
・規範とは形式と感情が結び付いた家庭のような場所。
第2部
6. 外部の世界について
・日常の問題はアーティストを振り回す。
・共通の基盤に新しい貢献を加える。
・アートの世界にも問題点がある。
・競争は自分のなかにある。
・アートシステムを操縦するときには注意がいる。
7. 大学の世界について
・教員には問題があります。
・学生にも問題があります。
・役立つのは自叙伝である。
8. 概念の世界について
・アイディアは技術より優る。
・工芸は完璧を目指す。
・新しい制作物をどう受けとめるか。
・習慣は美徳でない。
・アートと科学は似て非なるものである。
・自己参照には自己表明が必要だ。
・比喩は概念的な跳躍を誘発する。
9. 人間の声について
・質問は原動力になる。
・絶え間なく重荷を牽く。
・人間の声に合わせて作品をつくろう。
訳者あとがき 野崎武夫
プロフィール
[著]
デイヴィッド・ベイルズ(David Bayles)
写真家。同時代のアンセル・アダムスやブレッド・ウェストンとともに写真を追求し、30年間にわたって美術教師を続ける。現在は引退。15年以上の時間をかけてアメリカ西部のランドスケープを撮影し、作品集『Notes on a Shared Landscape: Making Sense of the American West』(2005)として刊行。オレゴン州ユージンやペンシルバニア州モントレーで暮らす。
テッド・オーランド(Ted Orland)
写真家。若き頃チャールズ・イームズのもとでグラフィックデザイナーとして社会人のキャリアをスタート。その後はアンセル・アダムスのアシスタントを経て、現在は教えることと書くこと、そして引き続き写真を生業とする。著書に『The View From The Studio Door: How Artists Find Their Way in an Uncertain World』(2006)など。カルフォルニア州サンタ・クルス在住。www.tedorland.com
[訳]
野崎武夫(のざき・たけお)
上智大学文学部哲学科卒業。美術出版社に勤務の後フリーランス。おもに『美術手帖』『インターコミュニケーション』『エスクァイア日本版』の編集、および『store』(光琳社出版)、『Luca』(エスクァイアマガジンジャパン)の創刊業務を担当。訳書に『アート+トラベル』(メディアファクトリー)を刊行予定。明治学院大学非常講師。