アメリカ映画教育界のベストセラーテキスト、遂に日本上陸!
画面の細部から映画表現の神髄を掘り起こし、批評・鑑賞・実製作すべてに役立つ全集、第1弾!
見ることは、創ることだ!
画面の細部から映画表現の神髄を掘り起こし、批評・鑑賞・実製作すべてに役立つ〈シネマの例文〉全集、第1弾! 500点以上の写真・図版を駆使し、創造的な読解をめざして映像技法・話法に注目した簡潔明快な解説。アメリカ映画教育界のベストセラーテキスト、遂に日本上陸!
真の発見への旅は、新しい風景を探し求めることではなく、新しい見方を持つことにある。
~マルセル・プルースト『小説家と美術批評家』より著者のことば
シネマ・リテラシー(映画の技法や話法を理解するための知識)を教えることは重要である。しかしそれはアメリカにおいては長いこと見過ごされてきた。大学レベルだけでのことではない。『テレビ・ビデオ年鑑』によると、アメリカの平均的家庭では一日に7時間もテレビを見ているという。それほど多くの時間、動く映像を見ているのに、私たちは、ほとんどの場合、絶え間なく送られてくる音や映像を批判することなく、ひたすら受け身で見ている。私たちは、それらの映像や音が私たちにどんな影響を与えているのかを意識することもなく、また、それらが私たちの価値観の形成にいかに関わっているのかということを考えもしない。本書は、このようなテレビや映画が私たちにどのように働きかけ、それらの情報がどのように私たちに吸収されていくのかというメカニズムを理解するのに役立つだろう。また、彼らの使う言語システムの複雑なネットワークなどの仕組みを理解することで、賢い視聴者になることができるであろう。
この第9版では、前の版の原則を維持しながら、すべての章をリアリズムとフォーマリズムという二分法を念頭におきながら構成した。各章は、様々な言語システムと、フィルムメーカーたちが意味を伝達するために使う多様なテクニックを切り離して独立させている。当然、それぞれの章は網羅的であるというわけではなく、単に出発点にすぎない。狭義な意味での映画の諸相(映像と動き)から、広義な意味での抽象的で包括的なもの(イデオロギーや理論)へと発展していく構成になっている。また、各章が必ずしもきっちりと相互に関連しあっているわけでもない。従って、どの章から読まれてもかまわない。そうした構成のルーズさのために重複している箇所があるかもしれないが、最小限にとどめる努力はしたつもりなので大目に見ていただきたい。専門用語は初出の箇所に太字で示されており、用語解説で説明されている。
各章はこの分野での研究発展の最新成果を反映するよう更新されている。また最新映画から写真と解説を多く取り入れた。
第2巻、最後の章「総合分析:市民ケーン(Citizen Kane)」は前章までの主要概念を一つの作品に応用して見せたものだ。学生が学期末レポートとして書くときのモデルになるだろう。ビデオやDVDは、一つの場面を何度でも繰り返し見ることができるので、映画分析をより精密で体系的にする道を開いてくれた。私のクラスでは、学生たちになるべく3分以内の一場面を選んで、本書の各章に従って、その構成要素のすべてを分析することを求めることにしている。もちろん、学期末レポートに本書に示した『市民ケーン』ほどの詳細な分析を求めることは無理かもしれないが、同じ手法をとることは可能であろう。仮に各章を異なる順序で読んだとしても、学期末レポートは各章にそった形で再構成することができるだろう。たとえば、多くの人は物語やテーマを分析することから始め、その後に映画の形式や技術論に進みたがるものだが、それでも最終的には本書の構成に従った形に簡単に対応しうるだろう。『市民ケーン』は、視覚メディアが示しうる技術的な可能性のすべてを含み込んでいる映画である。また映画史上においても、もっとも賞賛すべき映画のひとつであり、学生にも人気が高い。その意味で分析モデルを示す映画としては理想の選択であると確信する。
本書中の写真は、多くが宣伝用に一般公開されたスティル写真を使用している。35ミリのスティルカメラで撮られた写真は画質が良いからである。映画中から抽出してフレームを拡大操作した映像は、スクリーン上で見る映像と比べると画質が荒く、細部を検討するのが難しいからだ。『七人の侍』の一連の写真(第2巻収録)や『戦艦ポチョムキン』の編集されたシークエンスの場合のように、シークエンスとしての正確さが必要な場合には、実際の映画自体から抽出し拡大したものを使用したが、多くは技術的に解像度の高い一般公開用宣伝写真を用いた。
目次
1.フォトグラフィ:
リアリズムとフォーマリズム/ショット/アングル/明と暗/カラー/レンズ、フィルター、生フィルム、オプティカル、ゲージ/シネマトグラフィ
2.ミザンセヌ:
フレーム/構図とデザイン/視線を支配する空間/空間論的配置/オープン・フォームとクローズド・フォーム/ミザンセヌ分析における15の要素
3.動き:
動き/移動するカメラ/動きの機械的操作
4.編集:
コンティニュイティ/グリフィスと古典的編集/ソビエト・モンタージュと伝統的フォーマリスト/アンドレ・バザンとリアリズムの伝統/ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』:絵コンテ版
5.音:
歴史的背景/音響効果/音楽/ミュージカルとオペラ/話し言葉
6.演技:
舞台演技と映画演技/アメリカのスターシステム/演技のスタイル/キャスティング