ピックアップ

気になる映画本 2024年11月刊行

フィルムアート社の中の人が2024年11月に刊行された映画関連書籍の中から気になる映画本3冊をピックアップして紹介します(毎月上旬更新予定)。
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◎バックナンバー
2024年|10月9月8月7月|6月|5月4月


スクリーンのなかの障害
わかりあうことが隠すもの
塙幸枝=著
フィルムアート社

映画はどのように障害を描いてきたのか――

歴史、物語のパターン、再現による同一化、当事者性⋯⋯様々な角度から映画と障害のつながりを解きほぐす。

ろう者の子どもを主人公にした『コーダ あいのうた』がアカデミー賞で作品賞含む3部門に輝くほか、『ドライブ・マイ・カー』『ケイコ 目を澄ませて』『LOVE LIFE』と日本の気鋭の若手監督たちが次々と障害者が登場する作品を手がけている現在。「感動ポルノ」や「共生」といった言葉で単純化することなく、障害の描かれ方、何よりも見つめ方を考え直すべきなのではないか?

「スクリーンのなかで障害がいかに描かれてきたのか、また、より今日的な映画作品のなかで障害がいかに描かれるようになったのか」を論じる本書では、サイレント時代から現代まで「映画における障害者イメージの変遷」をたどり、「スクリーンのなかの障害」の歴史が通時的につづられる。そして、その「障害者イメージの変遷」の土台となる「社会における障害観の変化」がどのように起こったのかを「障害学」の基礎とともに提示していく。

また、歴史をつづるだけでなく、コミュニケーション、障害の再現、当事者性という切り口のもと映画と障害のつながりを捉え直していく。障害を扱う多くの映画がコミュニケーション、「不全」から「達成」へと進行する物語を描いているのはどうしてか? 視覚的・聴覚的な描写によって再現された障害に同一化する際、何かが隠蔽されていないか? 障害者の役は障害当事者しか演じてはいけないのか?といったアクチュアルなテーマが、近年の障害を描いた作品をもとに論じられる。

『レインマン』『フォレスト・ガンプ/一期一会』『アイ・アム・サム』といった名作として語られる作品から、『ワンダー 君は太陽』『最強のふたり』『コーダ あいのうた』などの近年話題となった作品まで、多くの観客を得てきた作品を新しい視点で読み直すきっかけにもなる本書。われわれ観客はどのように障害を見つめていくべきか、思考と議論のための新しい出発点。
出版社HPより)


女の子が死にたくなる前に見ておくべきサバイバルのためのガールズ洋画100選
北村紗衣=著
書肆侃侃房

「もうダメかも……」を「楽しく生きよう!」に変える、映画の力でサバイブするための100選

あのヒロインみたいになれたらいいな、私と同じだな、私とは違うけどステキだな……。映画を見ることで、女性であること、少数派であること、自分自身でいることの楽しさに気づける。
もっと楽しく生きる準備をするために、あなたを待っている映画がきっとある。

クラシックな名作から近年の話題作まで、労働問題、恋愛とセックス、フェミニズム、クィア、人種、民族など、多様な視点から厳選した100本の映画ガイド
出版社HPより)


ゴダール、ジャン゠リュック
四方田犬彦=著
白水社

「わたしはいつも、独りで書いてきた。独りでゴダールの映画を観てきたのだ」。ヌーヴェル・ヴァーグ時代から最晩年の作品まで、半世紀にわたる批評・エッセイを集大成した、「哀悼的想起」の書。

著者は14歳で初めて『気狂いピエロ』を観て、「画面に引っ張られているうちに、突然すべてが終わってしまった」という。本書はそれから遺作『シナリオ』に至るまで、自称「ゴダール馬鹿」の軌跡を網羅した。
以下、著者のマニフェストだ。「わたしのゴダール論は、過去のいかなる書物とも違っている。とりわけゴダールの同時代人であったブニュエルやパゾリーニ、大島渚についての書物とは、似ても似つかないものである。それはおそらく、喪の作業と呼ぶのにふさわしいものとなるのだろう。歴史は『未完結なもの(幸福)を完結したものに、完結したもの(苦悩)を未完結なものに変えることができる』と、ベンヤミンは『パッサージュ論』のなかで書いた。歴史とは『哀悼的想起』Eingedenkenなのだ。わたしは、すでに完結したと信じられてきたゴダールを、未完結な存在へと強引に引き戻すために書き続けなければならない」。
出版社HPより)


その他の気になる映画本

小津安二郎発言クロニクル 1903~1963』小津安二郎=著(三四郎書館)
人が集まる,文化が集まる!まちの個性派映画館』美木麻穂・宮﨑希沙=著(パイインターナショナル)
映画周遊 消えた女性/ロボットの肖像/ハムレット』岩本憲児=著(論創社)
巨匠が撮った高峰秀子』斎藤明美=著(KADOKAWA)
映像の発見 アヴァンギャルドとドキュメンタリー』松本俊夫=著(筑摩書房)
小林旭回顧録 マイトガイは死なず』小林旭=著(文藝春秋)
ドイツ文学と映画』山本佳樹・市川明・香月恵里(三修社)