フィルムアート社の中の人が2024年8月に刊行された映画関連書籍の中から気になる映画本3冊をピックアップして紹介します(毎月上旬更新予定)。
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◎バックナンバー
2024年|8月|7月|6月|5月|4月
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思い出されることを思い出されるままに
映画監督ラナ・ゴゴベリゼ自伝
ラナ・ゴゴベリゼ゠著
白水社
「女性と時代」を描いてきた映画作家の詩と真実90歳を超えてなお新作を発表し、ジョージアでもっとも重要な映画監督のひとりであり続けているラナ・ゴゴベリゼ──その彼女が自らの来し方を「思い出されるままに」綴った文学的メモワール。7歳のころ、ジョージア共産党の幹部だった父親が粛清され、母親は流刑に処せられたラナは、ひじょうに不安定な世界で幼少期を過ごした。独裁へと至った共産主義に父が深く関わっていたこと、母を失ったこと、これらはいまもなお彼女に影のようについて離れず、とりわけ後者は、映画作品の中で彼女が幾度となく立ち返るテーマとなっている。
文学を愛した少女はいかにして母と同じ映画の道へと至り、そして、父と同じく人びとの未来を想い、国家の混乱期に政治家となることを選んだのか──波乱に満ちた日々のなかで、彼女はそれでもつねに気高く、己の精神に忠実であろうとし、また、その生にはいつも詩が寄り添ってきた。ヨーロッパとソ連/ロシアの狭間で翻弄されるジョージアの20世紀が、映画作家の個人史を通して、まさに「言葉に示されたこの世の像」(パステルナーク)として立ち現われる。母ヌツァが流刑先での経験を綴った短篇小説を併録。
(出版社HPより)
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ミュージカル映画が《最高》であった頃
喜志哲雄゠著
国書刊行会
『ジャズ・シンガー』から『ラ・ラ・ランド』までーー 1960年代より本場ブロードウェイで舞台・映画を観続けてきた筋金入りの演劇研究家が〈ミュージカル映画の黄金時代〉を語りつくす。 ミュージカル映画の始祖『ジャズ・シンガー』から、フレッド・アステア、ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドの傑作の数々、そして『シカゴ』『イントゥ・ザ・ウッズ』『ラ・ラ・ランド』といったミュージカル映画の未来を担う作品まで徹底分析!
解説=若島正
(出版社HPより)
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クチから出まかせ
菊地成孔のディープリラックス映画批評
菊地成孔゠著
集英社
「映画を観て即しゃべる」
深い経験と知識に基づいた唯一無二の洞察力と、軽妙洒脱な語り口で読む者を心酔させる音楽家であり文筆家の菊地成孔が、メンズファッション誌『UOMO』(集英社)にて2012年4月号から現在まで連載中の語り下ろしシネマコラム「売れている映画は面白いのか?」。著者史上最長連載を2024年7月号までの12年間、140回分を全掲載。
“この本は、「映画批評」というよりも、「映画に対する反射的な大喜利」としての「コメント芸」として読まれるのが最適切なのではないかと思います。” (本書まえがきより)
『アベンジャーズ』『ラ・ラ・ランド』『キングスマン:ゴールデン・サークル』『オッペンハイマー』など誰もが知るハリウッドの大作から、『はちどり』『逃げた女』『別れる決心』など勢いのある韓国映画、さらには『MEMORIA メモリア』『関心領域』といった新感覚の「21世紀映画」まで、各年を彩った重要な作品に対する菊地成孔の貴重な証言を結集。著者自身が全作品を振り返り書き下ろした〈現在からの〉追加コメント「もう一度見たい度」(星1~星5)も収録。「初見で面白かった作品を、もう一度見たい、とは限らない」と著者が言うように、鑑賞直後の熱のある初出コメントと、数年たって冷静に振り返るコメントの差異にも、ぜひ注目を!
各作品には連載担当ライター相田冬二による一言解説も付くので、シネフィルはもちろん、映画を年に数本しか観ない大人まで、感想を語り合える相手を求めている、すべての大人が楽しめる一冊。
最高にクールで、最高にスリリングな、キレのあるクチから炸裂する菊地節の数々。極上の「映画の大喜利」をしゃぶりつくせ。
(出版社HPより)
その他の気になる映画本
『ウクライナ映画完全ガイド ロシア帝国時代からマイダン革命以降の現代まで』梶山祐治=著(パブリブ)
『恐るべき新世代映画監督たち 山中瑶子 奥山大史 空音央 内山拓也 インタヴュー集』荒木重光=著(K&Bパブリッシャーズ)
『山田洋次が見てきた日本』クロード・ルブラン=著(大月書店)
『ポップコーン、バター多めで』川上洋平=著(宝島社)
『誰かと日本映画の話をしてみたい』(Pヴァイン)
『泣ける映画大全』大友しゅうま=著(KADOKAWA)
『アニメオタクとビデオの文化社会学 映像視聴経験の系譜』永田大輔=著(青弓社)
『もっと日本映画を! いまを映す作品と見落とせない名作100』立花珠樹=著(言視舎)
『映画のなかの自衛隊 防衛省のメディア広報戦略』須藤遙子=著(大月書店)
『教養として知っておきたい映画の世界』コトブキツカサ=著(日本実業出版社)
『体験的女優論』鈴木敏夫=著(河出書房新社)