ホラー映画の科学

悪夢を焚きつけるもの

ニーナ・ネセス=著
五十嵐加奈子=訳
発売日
2024年7月26日
本体価格
2,500円+税
判型
四六判・並製
頁数
352頁
ISBN
978-4-8459-2304-5
Cコード
0074
刷数
2刷
装幀
戸塚泰雄(nu)
装画
南景太
原題
Nightmare Fuel: The Science of Horror Films

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ホラー映画を見るとき、私たちの脳・心・身体で何が起こっているのか?
モンスター、暴力、トラウマ、音……さまざまな切り口から、脳科学や心理学で〈恐怖〉のしくみを解き明かす
もっと眠れなくなること必至の、ホラー映画×科学の世界!

私たちはなぜ、ホラー映画という〝悪夢の燃料〟を求めるのか?
私たちの脳や身体はホラー映画の何に恐怖を感じ、どのように反応するのか?

本書では、科学コミュニケーターとして活動する著者が多彩なホラー映画を例に、人が恐怖を感じ、脅威に対処するメカニズムを紹介。脳科学・心理学・神経科学・生物学の知見から、〈恐怖〉のさまざまな側面を明らかにする。

登場する映画は、『サイコ』『エクソシスト』など古典的名作から、『ヘレディタリー/継承』『アス』『クワイエット・プレイス』など現代のヒット作まで約300本。サイコ、SF、スラッシャー、スプラッター、クリーチャー、オカルトなどのサブジャンルを縦横無尽に扱いながら、ホラー映画の歴史もおさらい。いかに映画における〈恐怖〉が作り出されてきたのか、そして私たち観客はいかにそれを受け取るのかに迫る。

各章には、ひとつの作品を掘り下げるコラムと、映画の製作者や研究者へのインタビューも収録。尽きることのないホラーの魅力を存分に楽しめること間違いなし。

[本書に登場する映画]

『スクリーム』『サイコ』『ハロウィン』『エルム街の悪夢』『13日の金曜日』『ジョーズ』『エクソシスト』『サスペリア』『暗闇にベルが鳴る』『羊たちの沈黙』『悪魔のいけにえ』『エイリアン』『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『ヘレディタリー/継承』『シャイニング』『アス』『ソウ』『リング』『仄暗い水の底から』『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』『チャイルド・プレイ』『ムカデ人間』……など300作品以上!

[本書に登場する用語やトピック]

脅威/闘争・逃走反応/PTSD/ジャンプスケア/嫌悪感/ミラーニューロン/捕食・被食関係/不気味の谷/仮面/クモ恐怖/不協和音/周波数/叫び/恐怖記憶/認知発達理論/侵入思考/スポイラー/ホラー映画と犯罪の関係/脱感作/馴化/レーティング/妊娠ホラー/拷問/マンデラ効果/血や眼球にまつわる恐怖/ホラー好きは遺伝するか/刺激追求度/カタルシス説……ほか

最高のホラー映画とは、階段を歩いたり明かりを消したりするのが不安になるような映画だ。指のあいだから覗くようにスクリーンを見て、その晩は眠れなくなるような映画だ。

ホラー映画が人に与える影響を、私は細かく分析してみたい。恐怖を作り上げる人たちは、どう科学を活用して鑑賞者を怖がらせるのか。私たちの脳や身体はどう恐怖に向き合うのか。また、論理的に考えれば、スクリーンに映し出されるのは回避すべきシナリオであって、喜んで身を晒すべきものではないのに、私たちはなぜさらなる恐怖を求めて何度も映画館に足を運ぶのだろうか。(「はじめに」より)

メディア掲載


目次

はじめに
ホラーを定義する難しさ

第一章 恐怖を感じると、脳はこうなる
脅威
ジャンプスケア
【注目作品】『キャット・ピープル』(42/ジャック・ターナー監督)
嫌悪感
映画で見る恐怖
【注目作品】『ヘレディタリー/継承』(18/アリ・アスター監督)
【インタビュー】ジェイミー・カークパトリック(映画編集者)

第二章 ホラー映画の歴史
静かな恐怖
初期のホラー映画(1890年代頃‐1920年代初頭)
全盛には至らない時期(1920年代‐30年代)
原子力の登場(1940年代‐50年代)
他人という悪魔(1960年代)
暴力的な結末(1960年代後半‐70年代)
【注目作品】『暗闇にベルが鳴る』(74/ボブ・クラーク監督)
スラッシャー、悪魔系パニック、ビデオ・ナスティ(1980年代)
ホラー映画の……低迷?(1990年代)
新たなミレニアムに向けたホラー映画(2000年代)
現在のホラー映画と今後の展望(2010年代以降)
【インタビュー】アレクサンドラ・ウェスト(映画研究者)

第三章 モンスターの作り方
【注目作品】『遊星からの物体』(82/ジョン・カーペンター監督)
捕食者としてのモンスター
【注目作品】『エイリアン』(79/リドリー・スコット監督)
人間(または人間のような)モンスター
永遠のモンスター

第四章 耳からの恐怖
【注目作品】『クワイエット・プレイス』(18/ジョン・クラシンスキー監督)
不協和音
人の可聴域ぎりぎりの音
【注目作品】『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99/ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス監督)
叫び
【インタビュー】ローネン・ランダ(映画音楽作曲家)

第五章 恐怖が付きまとう理由
【注目作品】『ジョーズ』(75/スティーヴン・スピルバーグ監督)
人はどのように恐怖を抱きはじめるのか?
【注目作品】『鮮血の美学』(72/ウェス・クレイヴン監督)
どうすれば恐怖心がなくなるか?
【インタビュー】メアリー・ベス・マッカンドリューズ(ホラー・ジャーナリスト)&テリー・メスナード(クリエイター)

第六章 暴力的メディアと暴力行為
【注目作品】『チャイルド・プレイ3』(91/ジャック・ベンダー監督)
誰か、子どもたちのことを考えてくれませんか?
感度の低下
ホラー映画はより暴力的になっているのか?

第七章 血、ゴア、ボディホラー
身体の内側からの暴力
身体の外側からの暴力
見えない場面
血みどろなほどいいのか?
【注目作品】『サスペリアPART2』(75/ダリオ・アルジェント監督)
目にまつわる恐怖
【インタビュー】ジョン・フォーセット(映画監督)

第八章 ホラーの変わらぬ魅力
万人のためのホラー
ホラー愛は遺伝するのか?
刺激欲求
カタルシス説
恐怖に寄り添う
【インタビュー】アレクサンドラ・ヘラー=ニコラス(映画評論家)

あとがき
謝辞
訳者あとがき

参考文献
作品名索引

プロフィール

[著]
ニーナ・ネセス(Nina Nesseth)
カナダのオンタリオ州サドベリーを拠点とする科学コミュニケーター、ライター。『The Science of Orphan Black(ドラマ『オーファン・ブラック 暴走遺伝子』の科学)』(ECW Press、2017年)の共著者。おもにウェブ上でホラーと科学の接点を深く掘り下げた執筆活動を行う。本書が初の単著となる。

[訳]
五十嵐加奈子(いがらし・かなこ)
翻訳家。東京外国語大学卒業。主な訳書に、ローラ・カミング『消えたベラスケス』、エドワード・ウィルソン゠リー『コロンブスの図書館』(以上、柏書房)、デボラ・ブラム『毒薬の手帖』、リー・メラー『ビハインド・ザ・ホラー』、ニール・ブラッドベリー『毒殺の化学』(以上、青土社)がある。