容姿端麗なサーファー画家、海を守るエコロジスト、地元ハワイを愛するマリンアーティスト……
鮮やかな水面に乱反射する「語り」の光跡から浮かび上がる実像とは──
世界初のラッセン論、新規テキストを加えて待望の復刊!
イルカ、クジラ、うねる波、劇的なサンセット、夜空に煌めく星雲……ハワイの自然を題材にした「マリンアート」で一世を風靡したアーティスト、クリスチャン・ラッセン。バブル期の日本上陸以後、ゴッホやピカソと並ぶほどの大衆的な人気を獲得してきたが、その過熱ぶりとは裏腹に、美術界では長らく有効な分析の機会を与えられずに黙殺されてきた。
そんなラッセンを日本の「美術」をめぐる分断の象徴として捉え、日本における受容史と、その絵画表現の本質に迫った本書は、史上初のクリスチャン・ラッセン論として、刊行当時に大きな話題を集めた。
それから11年、日本社会も美術業界も大きく変容するなかで、ラッセンというアーティストは日本のアートやカルチャーの歴史上でどのように位置づけられるのか──美術批評をはじめ、社会学、都市論、精神分析など多彩なフィールドの論者に新規3名の執筆者を迎え、より多角的にラッセンの表現とその現象としてのおもしろさを照らし出す。
原田裕規=編著
【執筆者】*は増補改訂版での新規執筆者
石岡良治、上田和彦、大野左紀子、大山エンリコイサム、加島卓、河原啓子、北澤憲昭、木村絵理子*、暮沢剛巳、斎藤環、椹木野衣*、千葉雅也、土屋誠一、中ザワヒデキ、速水健朗*、星野太
メディア掲載
イベント情報
◎原田裕規×武田砂鉄 「いかにしてラッセンは“国民的画家”になったのか」 『ラッセンとは何だったのか?[増補改訂版]』刊行記念
2024/06/18 (火) 19:30 – 21:30
本屋B&B+オンライン
ご予約はこちら
https://bb240618a.peatix.com/
目次
増補改訂版に寄せて
はじめに
「ラッセン展」とは
ラッセンの歩み
第1章 ラッセンの絵画論──作品から考える
クリスチャン・ラッセンの画業と作品 原田裕規
美術史にブラックライトを当てること──クリスチャン・ラッセンのブルー 千葉雅也
ラッセンノート(再び制作し、書くために) 上田和彦
日本とラッセン──ドメスティックな制度批判のエピソード 大山エンリコイサム
[鼎談]
日本のアートと私たちのクリスチャン・ラッセン 大野左紀子×暮沢剛巳×中ザワヒデキ
第2章 ラッセンの受容史──ヤンキー論から社会学まで
「日本の美術に埋め込まれた〈ラッセン〉という外傷」展 大野左紀子
〝アウトサイダー〟としてのラッセン 斎藤環
〈見世物〉に対するまなざしの行方──ラッセンの日本的受容をめぐって 河原啓子
ラッセンという過剰さ──美術史は何を書くことができないのか 加島卓
第3章 ラッセンの文化論──サーフィンから音楽まで
クリスチャン・ラッセン、二つの世界のエッジで 石岡良治
ラッセンをイルカから観る──ジョン・C・リリィ再読のための一試論 土屋誠一
ラッセンの(事情)聴取 星野太
ケニー・Gとは何だったのか?──ラッセン的なものの理解のために 速水健朗
第4章 ラッセンの美術史──いかにして歓待するか
イルカのイコノロジー的分析は可能か 木村絵理子
マイクロプラスチックの海──海洋地獄画の系譜 椹木野衣
樹木と草原──「美術」におけるクリスチャン・ラッセンの位置を見定めるための、また、それによって従来の「美術」観を変更するための予備的考察 北澤憲昭
おわりに
クリスチャン・ラッセン略年譜
参考資料
図版出典
プロフィール
[編著]
原田 裕規(はらだ・ゆうき)
アーティスト。1989年生まれ。とるにたらないにもかかわらず、社会のなかで広く認知されている視覚文化をモチーフに作品を制作している。2019年以降は断続的にハワイに滞在。
主な個展に「やっぱり世の中で一ばんえらいのが人間のようでごいす」(日本ハワイ移民資料館、2023年)、「Unreal Ecology」(京都芸術センター、2022年)、「Waiting for」(金沢21世紀美術館、2021年)。単著に『評伝クリスチャン・ラッセン』(中央公論新社、2023年)、『とるにたらない美術』(ケンエレブックス、2023年)。Terrada Art Award 2023でファイナリストに選出。
https://www.haradayuki.com/