21世紀のデザインは、つくり手とユーザーの対話から生まれる。
人と社会を「インクルーシブ(包み込む)」するための、新しいデザイン理論。
「インクルーシブデザイン」とは、対話から本当に大切なことを発見するためのプロセスです。
社会のメインストリーム(主流)にはない、エクストリーム(極端)な部分に目を向けることにより、従来のデザインでは見落としていたアイデアや可能性を明確にすることが「インクルーシブデザイン」の特徴です。そして、エクストリームから生まれたデザインを、メインストリームに新たなイノベーションとして提供する。その役割を「インクルーシブデザイン」は果たすことができます。
不特定多数のための大量生産される「デザイン」は、経済的にも環境問題的にも、既に限界を迎えています。これからは、つくり手とユーザーが一体となって問題解決力に富んだデザインを創造する時代です。包含的に社会の諸問題にアプローチするプロセス、それが「インクルーシブデザイン」なのです。
目次
Preface 障がいが問題を解決する
―インクルーシブデザインから私が何を学んだか
Chapter1 見落とされていたデザインの役割
―インクルーシブデザインはなぜ大切なのか
Chapter2 排除よりも包含を
―インクルーシブデザインはどこで始まったのか
Chapter3 社会に挑戦するプロセス
―インクルーシブデザインに向けての社会事例
Chapter4 変化とイノベーションを生み出す力
―インクルーシブデザインのビジネス事例
Chapter5 「極端なシナリオ」というアプローチ
―インクルーシブデザインの創造的事例
Chapter6 真の「民主化」するデザイン
―社会を巻き込むインクルーシブデザイン
プロフィール
[著]
ジュリア・カセム
京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab. 教授。ロイヤルカレッジ・オブ・アート、ヘレンハムリンセンター・フォー・デザイン上席研究員。マンチェスター芸術デザイン大学、東京藝術大学卒業。ニューカッスル大学より博士号を取得し、ロイヤルカレッジ・オブ・アートの特別研究員に就任。インクルーシブデザインに関する第一人者として、技術・知識の共有を目的としたワークショップを企画・運営する。現在までに様々な国籍・専門性を持つ800人以上のデザイナーとともに、21カ国でインクルーシブデザインチャレンジを主催。また、インクルーシブデザインに関する数多くの著作を世界で発表している。2010年には「Design Week」が選ぶ「デザインの世界に最も影響力を持つ50人」に選出された。2014年より現職。
[監修]
平井康之
九州大学大学院芸術工学研究院デザインストラテジー部門准教授。1961年生まれ。京都市立芸術大学卒業後、コクヨ株式会社にデザイナーとして勤務。在職中の1990〜1992年にロイヤルカレッジ・オブ・アートへ留学。マスターを取得し帰国後、アメリカのデザインコンサルタント会社IDEOに4年間勤務。九州芸術工科大学(現・九州大学)助教授を経て、2003年より現職。
[訳]
ホートン・秋穂
1975年生まれ。京都出身。上智大学外国語学部卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科修了(文化人類学専攻)。出版社勤務を経た後、広告代理店などで翻訳に従事。現在イギリス在住。株式会社エクザム運営の京都のアート情報サイト「京都で遊ぼうART」の関連企画ページにイギリスより寄稿(https://www.facebook.com/art.kyotodeasobo)。