発想力と論理力を身につけるための、
たのしい記号学入門。
身のまわりにあふれるイメージと文章の
“ほんとうの”意味を考えれば、
世界がクリアに見えてくる!
私たちの身のまわりには、メディアやテクノロジーの成熟によって飛躍的に複雑になったイメージ(イラスト、画像、写真…)が氾濫しています。またそこにはさまざまなコンテクスト(文脈)がおりこまれ、意図や狙いがより効果的に表現されています。
情報の受け手としてこれらを正しく読み取るために、また、デザインやプレゼンテーションの際の情報の送り手として、これらが何を表わすのかを適切に理解したうえで表現するために、必要なこと。それは、そこに隠されている「記号」を読み解くことです。
目で見てたのしいヴィジュアルを、ユニークな問題とウィットに富んだ解答で読み解くことで、イメージ・リテラシーとデザイン思考の基礎を育みます。
記号は驚くほどさまざまです。身振りや表情も記号ですし、言い間違いやスローガン、落書き、交通標識、広告、病気の症状、買い物もそうです。音楽、ボディランゲージ、イラスト、絵画、写真、詩、デザイン、建築、映画、風景式庭園、モールス信号、ファッション、食品、紋章、儀式、原始的なシンボルなどなど、これらは記号学が扱うことになるたくさんの事柄のほんの一部にすぎません。
(中略)
人間は自分たちが作り出した記号の意味をさまざまな方法を使って理解し、それらさまざまな方法こそが人々の人生を導いてゆきます。このことを正しく理解する事は、意味の起源、意味の方法、意味の構造、意味のコンテクスト、意味の経路、意味のタイプのうちのいくつかを理解することと関わってきます。しかし、記号学はただ私たちが自分に与えられていると思っている意味を受け入れるためだけにあるのではありません。反対にそれは特定の記号をとらえる際の視点を問い直し、作り直し、ときには工夫したりするためのものなのです。
──「はじめに」より
目次
はじめに
1. 記号とそれを作ること、使うこと
意味するものと意味されるもの
記号
アイコン
インデックス
シンボル
送り手
意図
メッセージ
伝達
ノイズ
受け手
目的地
フィードバック
2. 意味を作り出す方法
直喩
隠喩
換喩
提喩
皮肉
嘘
不可能なこと
描写
表象
3. 概念の構造
真実と虚偽
同一性と差異
全体と部分
主観性と客観性
見かけと現実
連続性と不連続性
意味とその指し示し方
有意義と無意味
問題と解決
4. ヴィジュアルな構造
見る人とイメージ
理想と現実
既知のものと新規なもの
中心と周縁
前景と背景
近接性と存在感
以前と以後
過去、現在、未来
速いと遅い
5. テクストの構造
読者と文章
言葉とイメージ
機能
形式
配置
強調
声の調子
間テクスト性と内テクスト性
パラテクストとパラ言語
6. 解釈にまつわる諸問題
概念とその思い浮かべ方
暗示的意味と明示的意味
ラングとパロール
組み合わせと置き換え
現われと類型
ルールに従うこと
慣例
分類法
理解と誤解
7. 意味のフレーミング
意味論的単位
ジャンル
スタイル
ステレオタイプ
制度
イデオロギー
ディスコース
神話
パラダイム
8. 物語とその作られ方
事実とフィクション
語り方
伝説
性格と人格
視点
ミステリー
緊張
ターニングポイント
決着
おわりに
参考文献
図版クレジット
訳者あとがき
プロフィール
[著]
ショーン・ホール(Sean Hall)
オックスフォード大学のベリオール・カレッジで哲学の講師を務めたのち、現在はロンドン大学ゴールドスミス・カレッジのデザイン学科副学科長。アーティストとしても活動中で、ヴィクトリア&アルバート博物館、ロイヤル・アカデミー、ロンドンのホワイトチャペル・アート・ギャラリーなどで展覧会を開催している。
[訳]
前田茂(まえだ・しげる)
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程(芸術学専攻)修了。博士(文学)。2003年より京都精華大学人文学部で美学・芸術学、映画理論などを教える。共著に『イメージ〈上〉イメージとは何か』、『イメージ〈下〉イメージと私たち』(共にナカニシヤ出版)ほか。共訳に『イメージ・リテラシー工場』(フィルムアート社)、『フィルムスタディーズ入門』(晃洋書房)ほか。