「私は、こうして決定的なシーンを撮った」
撮ることの困難を、監督自らが書き下ろす
映画を構成する最小単位であるショット。「最小の中に最大の創造を見る」ために、映画監督はそこに心血を注ぎます。本書では、日本映画を代表するベテラン、気鋭、新鋭の話題の監督29名が、自作の中から「決定的ショット」を選択し、製作プロセスやその背景にあるものを語ります。撮影現場での方法や独自のショット論に迫ることで、無限に広がる映像世界を照射する試みです。
【ご寄稿いただいた監督】
大林宣彦、入江悠、瀬々敬久、万田邦敏、柴田剛、安藤モモ子、諏訪敦彦、塚本晋也、真利子哲也、タナダユキ、深作健太、犬童一心、古厩智之、石田尚志、三宅隆太、岩井俊二、松江哲明、橋口亮輔、小林政広、井土紀州、高橋洋、金子遊、想田和弘、河瀬直美、山下敦弘、山本政志、冨樫森、磯村一路、SABU
目次
第1章 カメラのまなざしの先に
大林宣彦
目線のテクニックを駆使し、観客参加型の映画を作る
『この空の花 長岡花火物語』
入江悠
音楽映画の常套手段を覆す
『SR サイタマノラッパー』
瀬々敬久
一期一会のドキュメンタリー性と苦闘する
『ヘヴンズストーリー』
万田邦敏
物語の本質を変容させる女優の表情
『接吻』
柴田剛
映画ならではの視点を獲得する
『おそいひと』
安藤モモ子
偶然を必然に転換する力を
『カケラ』
諏訪敦彦
画面の「外側」に広がる世界に観客を誘い込む
『不完全なふたり』
ショットの技術論
能動的な現場のために 石渡均
第2章 何を演出し、何を演出しないか
塚本晋也
わずかな身体の動きに全精魂を込めて
『KOTOKO』
真利子哲也
言葉では説明できないことを語るために
『NINIFUNI』
タナダユキ
自分の想像さえ超えるものが見たい
『ふがいない僕は空を見た』
深作健太
つくられた笑顔、本当の笑顔
『僕たちは世界を変えることができない。』
犬童一心
映画はある細部で日和ってしまうと急にダメになる
『のぼうの城』
古厩智之
素晴らしいものをただ見つめる「真っ白な自分」で
『さよならみどりちゃん』
石田尚志
表現とは生きるという事のそのままの営為
『部屋/形態』
三宅隆太
「生と死」に正面から対峙する
『呪怨 白い老女』
ショットの歴史論
閉ざされたシステムと開かれたものへの結合 北小路隆志
第3章 偶然と必然のあわいで
岩井俊二
イメージが増殖的に物語を生む
『ヴァンパイア』
松江哲明
「映ってしまったもの」が持つ強度
『フラッシュバックメモリーズ3D』
橋口亮輔
本当の気持ちがテクニックを超える時
『渚のシンドバッド』
小林政広
苦慮の末のひらめきから奇跡のように舞い落ちる
『春との旅』
井土紀州
二つの肉体が事件として立ち上がる瞬間
『彼女について知ることのすべて』
高橋洋
何かを決めずにおくことも監督の仕事
『旧支配者のキャロル』
金子遊
大きな歴史からこぼれ落ちた個人的な記憶を甦らせる
『ベオグラード1999』
想田和弘
「ゾーン」に入り、映画の「キモ」を撮る
『演劇1/演劇2』
ショットの文化論
「ショットの映画」から「プランの映像」へ 渡邉大輔
第4章 「場」を生みだす力
河瀬直美
刹那的なものを記録する奇跡に出会うこと
『沙羅双樹』
山下敦弘
みんなのものであり、誰のものでもないショット
『天然コケッコー』
山本政志
現場を楽しむことは作り手の特権
『てなもんやコネクション』
冨樫森
初めてショットというものを撮った瞬間
『非・バランス』
磯村一路
台本上の人間を、本気で感じること
『がんばっていきまっしょい』
SABU
考え方一つで見える景色が変わる
『幸福の鐘』