500枚を超える場面写真と、
76の脚本抜粋が織りなす、
映画史100年を貫く映像のレトリック
カメラ位置、編集、音響の作法から、
衣装、ロケーション、色の効果まで……
映画制作者にとって、ビジュアル面を強化する上で押さえておきたい撮影、編集、音響、照明などの方法を総合的にレクチャー。実際の映画の場面写真と、その脚本抜粋が同時に引用されており、「映画的」な表現の追究が可能です。
「そもそも映画固有の表現とは何か?」という原点に立ち返れる内容は、映画関係者の決定的な指南書となることはもちろん、物語を表現するあらゆる映像クリエイターの武器となるでしょう。また、映画文法を現代的な視点から分析できるという点では、映画鑑賞の新たな視野を広げる一冊です。
本書で扱われる作品
『見知らぬ乗客』(1951、アルフレッド・ヒッチコック)、『メトロポリス』(1927、フリッツ・ラング)、『ピアノ・レッスン』(1993、ジェーン・カンピオン)、『市民ケーン』(1941、オーソン・ウェルズ)、『黙秘』(1995、テイラー・ハックフォード)、『卒業』(1967、マイク・ニコルズ)、『地獄の黙示録』(1973、フランシス・フォード・コッポラ)、『ファーゴ』(1996、ジョエル・コーエン)、『アダプテーション』(2002、スパイク・ジョーンズ)、『サイコ』(1960、アルフレッド・ヒッチコック)、『キル・ビル』(2003、クエンティン・タランティーノ)、『バートン・フィンク』(1991、ジョエル・コーエン)……など
目次
はじめに
この本の読み方
SECTION1 空間を演出する
1 対立の予感(X軸/水平) 『見知らぬ乗客』
2 軌道を外れる(Y軸/垂直) 『見知らぬ乗客』
3 下降する(XY軸/斜線) 『メトロポリス』『ピアノ・レッスン』
4 サイズの変化(Z軸/被写界深度) 『市民ケーン』
5 時間枠の分離(Z軸/3つのゾーン) 『黙秘』
6 視点の移動(Z軸/プル・フォーカス) 『卒業』
SECTION2 画面を構成する
7 注目を導く 『市民ケーン』
8 不均衡 『Disco Pigs』
9 均衡 『Disco Pigs』
10 方向感覚 『地獄の黙示録』『バートン・フィンク』
11 サイズの利用 『メトロポリス』
SECTION3 形状による暗示
12 円 『カンバセーション…盗聴…』
13 線 『ファーゴ』
14 三角形 『刑事ジョン・ブック/目撃者』
15 長方形 『捜索者』
16 有機的な形VS幾何学的な形 『刑事ジョン・ブック/目撃者』
SECTION4 編集のテクニック
17 モンタージュ(1) 『市民ケーン』
18 モンタージュ(2) 『アダプテーション』
19 アセンブリ 『サイコ』
20 ミザンセーヌ 『サイコ』
21 インターカット 『キャバレー』
22 分割画面 『キル・ビルvol.1』
23 ディゾルブ(1) 『市民ケーン』
24 ディゾルブ(2) 『バートン・フィンク』
25 スマッシュ・カット 『アメリカン・ビューティー』『サイコ』
SECTION5 時間を操作する
26 ペースの変化 『バートン・フィンク』
27 時間のコントラスト 『パルプ・フィクション』
28 時間の引き延ばし 『パルプ・フィクション』
29 スローモーション 『レイジング・ブル』
30 ファストモーション 『アメリ』『レクイエム・フォー・ドリーム』
31 フラッシュバック 『サンセット大通り』
32 フラッシュフォワード 『ラリー・フリント』
33 ストップモーション 『明日に向って撃て!』『テルマ&ルイーズ』『大人は判ってくれない』
34 視覚的な予兆 『ピアノ・レッスン』
SECTION6 音響の効果
35 現実的音響(ダイジェティック/人物) 『コールガール』
36 現実的音響(ダイジェティック/感情) 『E.T.』
37 表現的音響(ダイジェティック/外の世界) 『バートン・フィンク』
38 超現実的音響(メタ・ダイジェティック/心の中の世界) 『バートン・フィンク』
SECTION7 音楽の可能性
39 ナレーターとしての歌詞 『地獄の黙示録』
40 シンボルとしての音楽 『ショーシャンクの空に』
41 小道具としての音楽 『愛と哀しみの果て』
SECTION8 場面転換
42 マッチング・オーディオ・セグエ 『私は殺される』『危険な情事』
43 オーディオ・ブリッジ(セリフ) 『市民ケーン』
44 オーディオ・ブリッジ(音響効果) 『バートン・フィンク』
45 ビジュアル・マッチカット(類似した画調) 『ルームメイト』
46 ビジュアル・マッチカット(パターンや色) 『市民ケーン』
47 ビジュアル・マッチカット(モーション) 『2001年宇宙の旅』
48 ビジュアル・マッチカット(アイデア1) 『レクイエム・フォー・ドリーム』
49 ビジュアル・マッチカット(アイデア2) 『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』
50 長いマッチ・ディゾルブ(時代転換) 『タイタニック』
51 混乱をうながすマッチカット 『バウンド』
SECTION9 カメラ・レンズ
52 広角レンズ(1) 『市民ケーン』
53 広角レンズ(2) 『ピアノ・レッスン』
54 望遠レンズ 『卒業』
55 魚眼レンズ 『レクイエム・フォー・ドリーム』
56 シーン中のプロップレンズ 『市民ケーン』
57 物体を通した撮影 『ダンス・ウィズ・ウルブズ』
SECTION10 カメラの位置
58 クローズアップ 『ピアノ・レッスン』
59 超クローズアップ 『キル・ビルvol.1』
60 ツーショット 『ピアノ・レッスン』
61 肩越しショット 『チャイナタウン』『ピアノ・レッスン』
62 ポイント・オブ・ビュー(1) 『ハロウィン』
63 ポイント・オブ・ビュー(2) 『JAWS/ジョーズ』
64 ハイアングル 『市民ケーン』
65 ローアングル 『E.T.』
66 ハイロー・コンビネーション 『サイコ』
SECTION11 カメラの移動
67 固定ショット 『コールガール』
68 パン 『ダンス・ウィズ・ウルブス』
69 ティルト・アップ 『レオン』
70 ティルト・ダウン 『ファーゴ』
71 回転 『バウンド』『地獄の黙示録』
72 トラッキング・ショット 『危険な情事』
73 円状移動 『レザボア・ドッグス』
74 「寄り」から「引き」へ 『ファーゴ』
75 クレーン 『黒い罠』
76 手持ち(1) 『黒い罠』
77 手持ち(2) 『パルプ・フィクション』
78 ステディカム 『グッドフェローズ』
79 空撮 『ピアノ・レッスン』
SECTION12 照明の技法
80 レンブラント・ライティング 『地獄の黙示録』
81 TVライティング 『ナチュラル・ボーン・キラーズ』
82 キャンドルライト 『アメリカン・ビューティー』
83 モチベーテッド・ライティング 『危険な情事』
84 アンモチベーテッド・ライティング 『レオン』
85 動く光 『E.T.』
SECTION13 色の効能
86 登場人物のコード化 『三人の女』
SECTION14 小道具の活用
87 登場人物の表現(1) 『バートン・フィンク』
88 登場人物の表現(2) 『レイジング・ブル』
89 意味が変化する小道具 『バウンド』
90 小道具を使った対比 『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』
SECTION15 衣装による表現
91 役柄を表現する衣装 『エド・ウッド』
92 意味が変化する衣装 『愛と哀しみの果て』
93 衣装を使った対比 『バウンド』
SECTION16 場所の利用
94 人物像の定義 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』
95 異なる要素の統合 『スウィート ヒアアフター』
96 テーマとしての場所 『ブルーベルベッド』
97 場所の移動 『デッドマン』
SECTION17 自然を活用する
98 気候 『シックス・センス』
99 季節と時間経過 『アメリ』
100 自然現象 『黙秘』
訳者あとがき
本書で実例として使用された映画作品
引用脚本のクレジットについて/参考資料
プロフィール
[著]
ジェニファー・ヴァン・シル(Jennifer Van Sijll)
ジェニファー・ヴァン・シルはサンフランシスコ州立大学で脚本を教えている。南カリフォルニア大学の映画テレビ学部で学び、美術学士号を修得。ユニバーサル・ピクチャーズの脚本アナリスト、インディペンデントのプロデューサー、映画やテレビ番組のコンサルタントなど様々な肩書きを持つ。1994年にパナヴィジョン・ニュー・フィルムメイカー賞を受賞。1995年にはその優秀な授業が評価され、サンノゼ州立大学の名誉ジリアンド・チェアに選ばれている。
[訳]
吉田俊太郎(よしだ・しゅんたろう)
翻訳家。現在は英国と日本を頻繁に行き来しながら映画や広告を中心に翻訳活動をしている。主な訳書として『映画の瞬き』『マッケンドリックが教える映画の本当の作り方』『ジェームズ・キャメロン』『マスターショット100』『マスターショット2』(フィルムアート社)、『知的会話のための英語』(ベレ出版)、『映画もまた編集である』(みすず書房)などがある。