ファッションは、どこから生まれるのか?
人はなぜ“装う”のか?
ファッションのルーツをたどる旅へ——
シルクロードの中心、東西文化の合流地点である中央アジア。
遊牧民(ノマド)たちの民族衣装がいざなう、
ファッション・クリエーションの原点と可能性。
創造力の源泉と21世紀のデザインのかたちを探る1冊。
中央アジアの独特の文化がファブリックの中に息づき表現されているのを目の当たりにしたとき、私は、彼らの作り出した衣装やテキスタイルの持っている懐の深い力強さ、高度で繊細なテクニック、豊かな感性とクリエーション能力に深く魅了されました。布一枚に込められ、託されたさまざまな思い、精神性、愛情が見えるにつけ、布を身に着けるということの本質的な意味合いも見えてきます。
(中略)
また、そこには「クリエーションとは一体何なのか?」というファッションビジネスに関わるうえで必要不可欠な問いに対する答えの一つがあるように思われます。
──(第3章「テキスタイルのルーツと隠されたメッセージ」より抜粋)
目次
はじめに
──遊牧の民のあしあとをたどって
1…………テキスタイルデザインという仕事
ファッションデザインはテキスタイルから始まる
華やかなファッション産業のものづくりの現場
情報収集力と分析力を活かす企画のしかた
世界のファッショントレンドが組み立てられるしくみ
色のトレンド/糸のトレンド/見本市での調査と買い付け
見本市で経験したこと
テキスタイル・クリエーター八箇条
厳しい日本のものづくりの中で
すぐれたテキスタイルデザイナーとは
2…………なぜ、テキスタイルが大切なのか
「人は生まれた時から死ぬ時まで布とともにある」
テキスタイルにみる“おしゃれ”の原点
素材の大切さ、ものを生み出す力
素材・スタイル・時代性の切っても切れない関係
服装と、生きる力と人間力
これからのテキスタイル・クリエーション
新しい取り組み、新しい可能性
世界が示す日本のテキスタイルへの評価
“ものづくり”という日本の活路
3…………テキスタイルのルーツと隠されたメッセージ
ファッションの源泉、テキスタイルの源泉
中央アジアの歴史をたずねて
テキスタイルの意匠表現のルーツ
中央アジアの代表的な配色とモチーフ
山岳地帯の少数民族の代表的な配色とモチーフ
インドの代表的な配色とモチーフ
色に込められた意味
1 階級/2 年齢/3 職業・職位/4 民族、部族、家族
文様に込められた意味
縞模様・ストライプ/ドット・水玉模様/丸のモチーフ/植物のモチーフ/動物のモチーフ
加工テクニックの表現
艶加工/刺繍/キルティング/イカット
4…………西洋と東洋の合流地点で花開いたファッション
中央アジアの歴史と背景
遊牧民文化をたどる旅へ
ファッションアイコンとしての遊牧民衣装と装飾品
東洋の織物と西洋のプリントを合体させたデザイン
着こなしと重ね着
アクセサリーと装飾の意味
女性用1 ヘッドドレス/女性用2 イヤリング/女性用3 ブレスレット/女性用4 帽子
男性用1 大刀・小刀/男性用2 ベルト/男性用3 帽子/男性用4 ブーツ/男性用5 髭/男女共通 パンツ
必須アイテムとしての馬と駱駝
乗馬文化としての側面/馬の装飾/駱駝の装飾
5…………生活の中に息づく中央アジアのテキスタイル
生活を「布」で彩ってきた遊牧の民たち
遊牧民たちの住居の飾りかた
現代に受け継がれるスザーニ
世界でも類を見ない精巧な手仕事・掛け布
ヴァリエーション豊かなテキスタイルのアイテム
遊牧生活で大活躍するキリム絨毯
テキスタイルに込められた意味
生活に根付くテキスタイルの多様な素材
6…………中央アジアで出会ったファッションのクリエーション
中央アジアの装飾文化にいざなわれて
フランス・グランがもたらしたヒントとチャンス
ウズベキスタン滞在記
歴史を学び、秘められたメッセージに耳をすます
あとがきにかえて
参考文献
プロフィール
[著]
宮本享子(みやもと・たかこ)
武蔵野美術大学短期大学芸能デザイン専攻科卒業。テキスタイルコンバーター(セルマー株式会社)に23年間勤務し、企画室長として、海外企画提携や広報宣伝、展示会企画運営などに携わる。エスモードジャポン東京校テキスタイル・テクノロジーコーディネーター、東京造形大学非常勤講師。