アカデミー賞を獲る脚本術

リンダ・シーガー=著
菊池淳子=訳
発売日
2005年4月
本体価格
2,400円+税
判型
A5判・並製
頁数
272頁
ISBN
978-4-8459-0573-7
Cコード
C0074
刷数
4刷
備考
品切

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「優れた脚本には最高の秘密がある!」

「アメリカン・ビューティ」「ビューティフル・マインド」「羊たちの沈黙」など、90年以降の最新受賞作の発想や構成法を、アメリカきってのスクリプト・コンサルタントが指南。
拍手の嵐を呼ぶ、本格派シナリオの書き方とは!?

 2000年までに発売された脚本の入門書は、約200冊。そのほか、数千の脚本セミナーが開かれ、スクリプト・コンサルタントやストーリーアナリストたちが無数の脚本を分析してきた。これにより、脚本術は大いに進歩した。私は20年間にわたり、2000本以上の脚本の相談を受け、20カ国以上の国々で脚本について教えてきた。そしてそのたびに、脚本術という複雑な芸術を学ぼうとする脚本家たちの熱意に、感動を覚えた。

脚本術の向上に拍手を送る一方で、私の期待値はますます高まっていった。もっと斬新な脚本が見たい。これまでにないテーマやストーリーを表現するための、新しい形式を見たい。プロデューサーや映画会社の重役が、本当にすぐれた脚本を見抜き、たんに目新しい脚本と本当に斬新な脚本の違いに気づいてくれるといい。すばらしい芸術や技術を見た。大胆で風格のある脚本がもっと認められるといい。そんな希望を抱いた。
本書は、脚本の細部に関する本である。 『マグノリア』(99)や「めぐりあう時間たち』(02)のように、うっかりすると失敗作になりうる作品を見事な傑作に変えていく、そんな複雑で入り組んだ脚本の要素についての本である。 また、独創的で躍動感のある、焦点の定まったストーリーがうまく進行し、優れた俳優が刺激を受けるような脚本・ストーリー・登場人物・テーマ・スタイルがーつに融合した脚本を書くための本である。そして、観客を引き付けて感動させ、彼らの人生まで変えるような脚本を書くための本なのである。
私としては、本書はたんなる脚本術の分析書以上のものだと考えている。脚本にたいするさまざまなアプローチについて、考えてもらうための本だと思っている。だから、作品例をあげてあなた方にいろいろと質問する。あなたの脚本では使えそうか? とか、もう少し違うアプローチだったら、このテクニックもうまくいったのではないか? などと間いかける。
ある作品のテクニックを褒めることもあれば、もっといい手があったはずだと指摘することもある。洗練する余地が大いにあるとあなたが思う作品であっても、私は褒めるかもしれない。また逆に、あなたが完壁だと思うアカデミー賞受賞作品であっても、私は批判するかもしれない。評価はどうあれ、私はどの作品についても必ず考えてみることがある。それは、脚本術を向上させるために、この作品から学ぶことは何か? ということだ。
本書は、脚本の未来についての本である。だからあえて作品例を限定し、一九八〇年から現在までにアカデミー賞を受賞した作品か、またはノミネートされた作品にしぽった。古典にもすばらしい作品は多いが、脚本の未来という観点から考えると、あまり参考にはならないと思う。ただし、なかにはノミネートされなかったが、個人的にすごいと思う作品や、最適な例だと思う古典もいくつかあげた。
あなたが本書を手にしたということは、おそらくすでに脚本の入門書を読み、セミナーにも参加して、脚本も何本か書いているはずだ。もう賞を受賞している読者もいるかもしれない。だが、あなた方にはもっともっと技術を高めてもらいたい。新しい技術を身につけ、新たな可能性を模索し、他とは一線を画す、斬新な作品を生みだす術を見出してほしいのだ。
これまでに私が書いてきた本は、どれも単独で読めるものだ。しかし本書だけは、入門書で述べた知識の上に成り立つ、続編とも言うべき本である。なかでも『ハリウツド・リライティングバイブル(Making a Good Script Great』(愛育社/フィルムアンドメディア研究所刊)『Creating Unforgettable Characters』『Making a Good Writer Great』で述べたテクニックの応用編となっている〔ただし本書は、上記三書の考え方を第一、二章で入門者用にまとめている〕。なるべく重複は避けるようにしたが、応用のためには基礎の確認が必要なので、同じ要素を扱っている箇所もある。
本書を読むことで、あなたが可能性を広げてくれたらいい。新しいテーマや形式を見つけ出し、新しい技術を学び、独創的でありたいと思ってくれたらいい。そして何よりも、映画という最も若い芸術形式の一つにたいして、 ますます熱い思いを抱いてほしい。(本書「まえがき」より)

目次

1 リアルな物語をうまく語るには
ドラマの直線型構成/ストーリーを語る形式/旅のストーリー/描写のストーリー/反復型構成/平行型構成/らせん型構成/謎解き型構成/逆流型構成

2 映画的なストーリーをうまく語るには
循環型構成/ループ型構成/映画的な時間の使い方/実験的な試みを成功させる

3 ストーリーを前進させ続けよ
ストーリーの流れをはっきりさせ、統一感のある脚本をつくる/シークエンスをつくる/シーンのつなぎにアクションとリアクションの関係をつくる/リアクションを遅らせる/似たものを使ってシーンをつなぐ/対比によって勢いをつける/カットの間にある情報を読みとる/音楽や言葉遊びでつながりをつくる/つなぎがうまくいかないのは?/ストーリーやまとめる糸をつくる

4 名シーンをつくるには?
設定のシーン/説明のシーン/きっかけのシーン/ラブシーン/直面のシーン/清算のシーン/解決のシーン/気づきのシーン/決断のシーン/行動のシーン/反応シーン/気づきー決断ー行動のシーン/フラッシュバック/枠組みのシーン/啓示のシーン/悟りのシーン/熟考のシーン/魔法と神秘のシーン/人目を引き付けるシーン/モンタージュ

5 ひねりと転換、「秘密」と「嘘」の使い方
転換の定義/ひねりをつくる/秘密と嘘をすっぱ抜く

6 何についての映画なのか?
偉大な脚本家とはなにか?/アイデンティティという永遠のテーマ/動きのあるテ-マ/テーマはどのように表現されるか?/観客層にあったテーマ/テーマに関連した問題を見つける/ストーリーの要点をまとめるテーマ

7 語るより映像で見せる
背景としての映像/映画全体に現れる映像/対照的な映像/映像のメタファーをつくる/体系的映像/映像が浮かぶように書く

8 登場人物には見た目以上の魅力がいる
だれ?/なに?/どのように?/なぜ?/根底にある価値観/登場人物のいろいろな側面を同時に機能させる/願望がうまく描ききれないとき

9 登場人物は変化し、成長しているか?
なにが変化するのか?/どのように変化が起きるのか/変化するのはだれか?/変化の流れを構成する/一シーンで変化を遂げる/変化できない登場人物/潜在的な変化を見逃してしまう場合/なぜ登場人物の変化は珍しく、それを起こすのがむずかしいのか?

10 効果的なセリフをつくる
力強いセリフ/セリフのリズム/セリフの多面性

11 映画的スタイルを確立する
視点/登場人物を通してスタイルをつくる/ストーリーと登場人物を使ってスタイルをつくる/映像を使ってスタイルをつくる/ジャンルをつかってスタイルをつくる/複数のジャンルの組み合わせてスタイルをつくる

12 観客たちのどよめきを求めて
観客の知的レベル/観客を見下したような姿勢/ターゲットとなる観客を知る/観客を教育する/観客の焦点をあわせる/観客を変化させる/では、どうしたらいいのか?/感覚を使って書く/観客とのつながり/観客が理解できるようにする/ストーリーの力