オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

東京都現代美術館=監修
発売日
2020年5月2日
本体価格
3,200円+税
判型
B5判・並製
頁数
200頁
ISBN
978-4-8459-2000-6
Cコード
C0070
刷数
3刷
備考
品切
NADiff Online

その他のネット書店から購入

“アートを通してサステナブルな生(ライフ)を再考するために。”

日本で10年ぶりの大規模個展「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」公式図録。

氷、水、光、サステナビリティ、都市への介入──本展のための新作、日本初公開の作品を多数収録し、「エコロジーへの気づきとサステナビリティの実践への提案」をテーマに新たなオラファー・エリアソンの姿を映し出す決定的作品集。

◎哲学者ティモシー・モートンとの対話も所収(世界初テキスト化)

◎カバーは、代表作《ビューティー》と新作《クリティカルゾーンの記憶》を両面に用いた、リバーシブル仕様となります。

“エコロジーを思索する、現代のダ・ヴィンチ”オラファー・エリアソン。日本で10年ぶりの大規模個展「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」の公式図録となる本書は、本展覧会のタイトルが冠された新作《ときに川は橋となる Sometimes the river is the bridge》をはじめ、本展のために制作された多数の新作のほか、エリアソンの代名詞とも言える光や水、霧を使った代表的な作品を一堂に収録。日本語で刊行される初めての作品集であり、まさに「オラファー・エリアソン入門」に最適な1冊です。

「エコロジーとサステナビリティ」をテーマにした本展覧会には、分断され、不透明で先行きの見えない世界において、私たちがどのようにふるまい、生活をし、世界との関係性を築き直せるのかという、エリアソンのアクチュアルで真摯な眼差しが込められています。
この問題意識からなる、知覚体験を揺さぶり固定概念の枠を組み替えていく多彩な作品の豊富な図版のほか、本展キュレーターの長谷川祐子による論考と、オラファー・エリアソン・スタジオのメンバーによる「サステナビリティ」を考えるための提言、さらにエリアソンと哲学者のティモシー・モートンとの対談が収録されます。

デザイン
加藤賢策(LABORATORIES)

オラファー・エリアソン|アートの視点からすると、空間や現実を共同で創造するというアイデアは、すごくワクワクする──人々を活性化するわけですよね、一定の信頼を共有すること、その信頼を行使することを通じてね。とても美しいと思うんですよ、氷がぼくに触れてくるという事実は。あと、アーティストがアート作品の制作を、観客──「観客」と呼んでおくことにしましょう──の手にゆだねるということ、(中略)それは大事なことでもあります。アートは人々を信頼するんです。アートは、「みなさんは本当は強くて、能力があって、自分の手でできるんですよ」と言うわけです。ぼくはそういうのがもっと必要だと思います。

ティモシー・モートン|公共の空間で、ちょっと内向的になって物を言わないということが、ぼくらにはもっと必要なんですよね。アートの展示室では──どんなものでもいいのですが、とにかく何かを見つめている、聞いている、何かとインタラクションしている、そういう経験をしている瞬間には──全宇宙を征服してやろうなんて企んだりはしていないわけでしょう。

オラファー・エリアソン|(中略)ぼくは、未来というものはあるんだ、ぼくらはもう未来にいるんだ、と信じるのが好きです。本当に好きなんですね。インスピレーションをくれるから、多様性の包摂(インクルージョン)、行為、参加、共有をホスティングするものだから。
──「未来に歩いて入っていったら歓迎された──オラファー・エリアソンとティモシー・モートンの対話」より

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

感じ取ることが行動につながる──共感とその場にあるものをホストする、アートは信頼を基盤としている。それは単純な調和の空間ではない。エリアソンは、シャンタル・ムフが語る政治性の回復──正の多様性(plurality) の中から生まれる敵対性、その基盤となる「信頼(trust)」の議論に対して強い関心をもっている。その「信頼」とは何か、彼はアートを通じて検証しようとしている。
──長谷川祐子「未来を聴くアーテイスト オラファー・エリアソン」より


東京都現代美術館個展企画
「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」展 公式図録
展覧会内容詳細は以下の公式サイトをご覧ください。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/olafur-eliasson/
会期:2020年6月9日(火)−9月27日(日)


<東京都現代美術館公式サイトより引用>
オラファー・エリアソンは1990年代初めから、写真、彫刻、ドローイング、インスタレーション、デザイン、建築など多岐にわたる表現活動を展開してきました。エリアソンと自然とのかかわりは深く、光や水、霧などの自然現象を新しい知覚体験として屋内外に再現する環境的なインスタレーションは、鑑賞者に作品空間への関与をうながし、意識や身体感覚を変容させるというエリアソンの実践を端的に示しています。

日本で10年ぶりの大規模な個展となる本展のテーマは「エコロジーへの気づき」です。エリアソンは幼い頃からアイスランドの美しい自然に親しみ、長年にわたり自然環境に関心を寄せてきました。このテーマには、エリアソンの日本の自然観への共感と気候変動問題への意識が反映されています。また、展覧会名の「ときに川は橋となる」には、自然としての川が人や物事をつなぐ橋の役割を果たしていることへの気づきが内包されています。

「あなたの行動には意味がある。それに気づいてほしい」エリアソンはアートを介してエコロジーを見つめ直すことを呼びかけています。本展のための新作を含む、国内初公開となる作品の数々を通して、エリアソンは実感がわきがたいものや目に見えないものにたしかな形を与えます。それは現在を生きる私たちひとりひとりの気づきと働きかけにつながるかもしれません。アートの可能性を問うエコロジカルなエリアソンの作品世界が多彩に、おおらかに広がっていきます。

目次

[図版]
ときに川は橋となる

[テキスト]
未来に歩いて入っていったら歓迎された
──オラファー・エリアソンとティモシー・モートンの対話

14名が考えるスタジオ・オラファー・エリアソンのサステナビリティ計画

未来を聴くアーティスト オラファー・エリアソン
──エコロジーの実践としてのアート
長谷川祐子

 

[付録]
オラファー・エリアソンによる謝辞
主要日本語参考文献
略年譜
出品作品リスト

プロフィール

オラファー・エリアソン Olafur Eliasson
1967年、コペンハーゲン(デンマーク)生まれ。現在、ベルリンとコペンハーゲンを拠点に活動。アイスランドとデンマークで生まれ育ち、1989年から1995年までデンマーク王立美術アカデミーで学ぶ。1995年、ベルリンに渡り、スタジオ・オラファー・エリアソンを設立。スタジオは現在、技術者、建築家、研究者、美術史家、料理人等、100名を超えるメンバーで構成されている。2014年、建築家のセバスチャン・ベーマンと共同でスタジオ・アザー・スペーシズを設立。
光や水、霧などの自然現象を新しい知覚体験として屋内外に再現する作品を数多く手がけ、世界的に高く評価されている。テート・モダン(ロンドン)で発表した《ウェザー・プロジェクト》(2003年)やニューヨークのイースト川に人工の滝を出現させたパブリックアート・プロジェクト(2008年)等、大規模なインスタレーションで広く知られている。近年は、電力にアクセスできない地域に住む人びとに届けられる携帯式のソーラーライト「リトルサン」(エンジニアのフレデリック・オッテセンと共同開発)や、グリーンランドから溶け落ちた巨大な氷を街なかに展示することで人びとに気候変動を体感させる《アイス・ウォッチ》(地質学者のミニック・ロージングとの共同プロジェクト)といった社会的課題をめぐる取り組みにも力を注いでいる。
日本での主な個展は原美術館(2005年、東京)、金沢21世紀美術館(2009-10年、石川)がある。